
■株主総会シーズンを前にアクティビスト提案が過去最高水準
5月は決算発表ラッシュ、6月は定時株主総会ラッシュである。6月26日が株主総会の集中開催日となる。総会を前に、足元では支配権に関わる株券を巡って大量保有報告書の提出、株主提案権の行使、株主提案に対する取締役会意見の決議などが相次ぎ、マーケットもざわついてきた。それもそのはずだ。三井住友信託銀行の集計によれば、5月19日現在でアクティビスト(物言う株主)の株主提案数は50社、135議案と、連続して過去最高を更新する見通しと伝えられている。
提案議案は、定款変更、取締役の選任・解任、増配・自己株式取得などの株主還元策など多岐にわたり、物言う株主と会社側の攻防が、報道やマーケットを賑わせる場面も多く見聞されている。
■企業統治改革が物言う株主の追い風に
しかも昨今、物言う株主には強力な追い風が続いている。コーポレートガバナンス(企業統治)改革である。同改革は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向け、「稼ぐ力」を取り戻すべく、資本コストを重視し、ROE(株主資本利益率)8%を目指す経営効率化や株主との対話を促す施策を盛り込んでいる。その具体策の一環として、政策保有株の縮減やPBR(株価純資産倍率)1倍割れの解消などが求められている。
■株式持ち合いと土地本位制に支えられた日本的経営の転換点
これは「日本的経営」からの脱却でもある。日本的経営とは、株式持ち合い制度とメインバンク制、護送船団方式に守られた企業統治方式であり、金融システムも、バブル経済崩壊まで信じられていた「地価は未来永劫絶対に下がらない」とする土地神話に基づき、土地を担保とする土地本位制が中心であった。所有不動産の簿価と時価評価の差額が、経営の屋台骨を支える含み益経営である。
ところがバブル経済崩壊とともに地価が底なし沼のように急落し、保有不動産が不良債権化し、含み益が含み損に一変して、日本的経営そのものが立ち行かなくなった。企業経営も、ジャパニーズ・スタンダードからグローバル・スタンダードへの転換を急がざるを得なくなった。
■地価回復と株高で含み益が再び株主還元の原資に
ところがである。何が幸いするか分からない。底なし沼化した地価は、足元でバブル経済崩壊以前の水準に戻り、日本への不動産投資を積極化している海外投資家は、なお割安としている。上場会社のなかには、遊休資産を売却して巨額の不動産売却益を得たケースもある。また政策保有株の縮減についても、日経平均株価が前週末22日に史上最高値を更新するほどの株高のなかで、巨額の有価証券売却益を実現し、増配や自己株式取得などの株主還元策の原資にしているケースも1社や2社にとどまらない。含み損が、再び含み益に好転しつつあることになる。
江戸川柳には「売り家と唐様で書く三代目」と、先祖が爪に火を灯すようにして営々と築いた身代を、放蕩三昧の三代目が食い潰す様子を戯画化した句がある。現経営陣が「三代目」となるかどうかは、もちろん今後のコーポレートガバナンス次第であり、株主総会を前にした物言う株主の動きも、そこを突いているようにみえる。
■ハイテク株主導の相場で低PBR株にも見直し余地
日経平均株価は、前週末22日に史上最高値を更新したが、これを牽引したのはAI(人工知能)・半導体関連のハイテク株である。しかし、ことによると、このハイテク株相場の圏外に残されたPBR1倍割れのバリュー株も、コーポレートガバナンス改革の後押しで有望株として浮上する可能性があるかもしれない。この可能性のリード役となりそうな銘柄がある。UBE<4208>(東証プライム)である。
同社株は、5月20日に今2027年3月期の配当を期初の未定予想から年間160円(前期実績110円)に増配すると発表してストップ高し、その後、前週末22日には年初来高値3067円まで買い進まれ、5月12日に売り込まれた年初来安値2313.5円から短期で33%の急伸を演じた。
■DOE引き上げが示す純資産重視の配当政策
この大幅増配は、配当方針の変更に伴うもので、従来のDOE(株主資本配当率)を2.5%以上から3.5%以上に引き上げ、早期に4%以上にすると取締役会で決議したことによる。また、中期経営計画の一環として、機械事業とセメント関連事業の子会社2社の株式上場準備も開始する予定である。それにしても株主資本配当率である。配当は本来、期間利益の利益処分案として配当性向を基準としているはずだ。それをあえてDOE基準に切り換えたのである。これは同社株のみにとどまらない。
要するに、極論すれば純資産、含み益を基準にした配当政策への「右へ倣え」である。UBEの1株純資産は4500.5円に達し、PBRは前週末22日終値現在で0.66倍の評価にすぎない。このUBEをモデルにすれば、低PBR株には大幅増配や自己株式取得などの株主還元策に踏み切る銘柄が、これからも今まで以上に浮上するかもしれない。
■PBR1倍割れ銘柄に広がる「第2のUBE」期待
その観点でマーケットを振り返ると、PBR1倍割れ銘柄は数多い。前週末22日現在で日経平均株価を構成する225銘柄でさえ、UBEを含めて46銘柄がPBR1倍割れで、20%を占める。日経平均株価が最高値更新となっているにもかかわらずである。これが全市場ベースでは、1493銘柄が該当し、構成比率も39%に高まる。PBR1倍割れ銘柄は、ハイテク株人気の圏外に取り残されているからこそPBR1倍割れと不遇をかこっているが、UBEと同様に年初来安値水準から急浮上する可能性もあり、「第2のUBE」を期待してアプローチするのも一興となりそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)
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