
■前週末のNY市場は大幅下落
前週末(6月5日)NYダウは695ドル安(1.35%低下)、ナスダックは1121ドル安(4.17%低下)の大幅安となった。25年4月3日のトランプ大統領による「相互関税」発表直後の下落幅に匹敵、あるいはそれを上回る大幅下落となっている。
事の発端は、5月非農業部門雇用者数が17万2000人増加と発表されたことによる(雇用統計・米国労働省)。市場予想は一般に10万人に届かないという想定だったから、これは驚きをもたらしている。
おまけに4月の非農業部門雇用者数は11万5000人から17万9000人に大幅上方修正された。(ちなみに5月失業率は4.3%と横ばい。平均時給は前月比0.3%、前年同期比3.4%。)
■雇用好調で「利下げ観測」は後退
株式市場は、トランプ大統領の「イラン戦争」の影響などを織り込み、雇用の好調は見込んでいなかった面がある。むしろ雇用が軟調に陥り、利下げに進む方向を観測していたということになる。
ところがイラン戦争の混迷にもかかわらず雇用は好調だった。市場の「利下げ観測」は後退、金利は据え置き、あるいは年内に利上げ実施という予測に変化している。連邦準備制度理事会(FRB)は、雇用に問題がないならインフレが唯一のターゲットになる。米連邦公開市場委員会(FOMC)内のタカ派(インフレ警戒派)が多数を占める。
ホルムズ海峡封鎖で原油高騰が継続しているのだからインフレ警戒は当然といえる動きにみえる。しかし、株式市場(トランプ大統領も待ち望んでいるのだが)は、希望している利下げが後退したと大幅な株式下落を演じている。
だが、これは株式市場にありがちな極論といった面がないとはいえない。雇用者増加の一因となっているのは、FIFAワールドカップ・サッカー開催に伴う“特需”という事情が垣間見られる。レストラン、バーなどレジャー・接客業が急増している。
本質的に雇用が強いという可能性も否定できない。ただそれなら金利云々以前に米国にとって良いファクターである。このあたりはもう少し様子を見る必要がある。
■12日にスペースXが未曽有の大型株式公開
米国株式市場では、12日にイーロン・マスク氏が率いるスペースXがナスダックに新規株式公開を控えている。スペースXはロケット・衛星・AIなどを手掛ける企業で750億ドル(12兆円)という未曽有の大型資金調達を行う予定だ。
企業価値は新規上場としては破格、1兆8000億ドル(288兆円)と2兆ドルに接近する可能性があるとされている。一部識者からは人気先行ではないかという指摘が出ているが、日本でもみずほ証券、SBI証券、楽天証券から公開前に売り出される。異様なほどの人気で抽選による奪い合いになる見込みである。
スペースX上場と5日の株式暴落がどう関連しているのかは何とも不明としかいえない。一説ではスペースXへの資金移動が始まっているという見方がないわけではない。米国株式市場は12日に向けて状況を立て直す必要があるようにみえる。
週明けの8日の日本市場は、週末のNYダウ、ナスダックの暴落を受けて波乱含みの幕開けとなる可能性が見込まれる。
暴落相場への格言では、「落ちてくるナイフはつかむな」「休むも相場」「頭と尻尾はくれてやれ」「見切り千両・損切り万両」など少なくない。いずれも見極めや運用が肝要だが、生き残りが最重要という先人の教えが詰まっている言葉である。(経済ジャーナリスト)
(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営〜クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)
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