
■想定時価総額280兆円の巨額IPO、議決権の8割超を維持し支配権継続へ
スペースXは、6月12日に米ナスダック市場に上場する予定である。今回の新規株式公開(IPO)に伴い、創業者兼最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏の保有資産は、世界初となる1兆ドル規模、日本円で約160兆円に達する可能性がある。同社の想定IPO評価額は1兆7500億ドル(約280兆円)に上り、調達額は750億ドル(約12兆円)規模とされる。上場後もマスク氏は議決権の8割超を握る見通しで、強い支配力を維持したまま、前例のない巨額資産を保有する可能性が高まっている。
■衛星通信が牽引する巨大経営
同社は単なるロケット開発企業にとどまらず、衛星通信事業「スターリンク」と人工知能(AI)インフラ投資を成長の両輪とする複合型テクノロジー企業に変貌しつつある。2026年1〜3月期の売上高は46億9000万ドルに達し、前年同期から拡大した。一方、同期の営業損失は19億4000万ドルにのぼり、赤字幅は拡大している。黒字化を達成しているのはスターリンク部門が中心で、同部門は営業利益11億9000万ドルを計上したが、AI関連を含む巨額投資が全体の利益面を圧迫している。
■巨額投資に伴う財務リスク
成長の裏側では、多額のキャッシュアウトが課題となっている。同四半期の設備投資額は101億ドル規模に達し、その大半がAI関連投資に振り向けられた。目論見書では、今後の大型投資や買収に伴う株式希薄化リスクも示されている。市場の想定評価額1兆7500億ドルに対し、米調査会社モーニングスターは適正評価額を7800億ドルと見積もっており、現在の市場予測には将来成長への期待が大きく織り込まれている。上場後の初値形成では、過熱感が意識されやすい。
■日本の個人投資家にも参加機会
今回のIPOは、通常の大型上場に比べて個人投資家への配分を重視しており、最大30%が個人向けに割り当てられる可能性がある。対象は米国をはじめ、日本や欧州などにも広がる。日本国内ではSBI証券を通じて購入申込が可能で、申込期間は6月5日から11日午前10時59分までとなっている。ただし、決済は外貨建てで、割当数量には限りがある。さらに、段階的なロックアップやマスク氏に権限が集中するガバナンス構造など、投資判断にあたっては成長期待とリスクを冷静に見極める必要がある。
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