
■急騰相場が広げた投資家間の格差
AI・半導体関連株の急騰は、多くの投資家に「置いてけぼり」感を残した。相場に早く乗った投資家が大きな成果を得た一方、買いそびれた投資家は上昇を見送るしかなかった。投資家間の分断と格差を意識させる相場展開となっている。
一方で、この株高を単純なバブルと断じるのも早計である。2026年6月時点でAI・半導体関連株は高水準にあるものの、SOX指数の上昇はPER拡大だけでなく、EPS予想の大幅な上方修正を伴っている。AIデータセンター投資の拡大を背景に、GPU、HBM、先端パッケージなどの需要は逼迫しており、業績面が株価上昇を一定程度正当化している。
■投資単位の高さが個人投資家の参入障壁に
目をつぶって飛び付き買いをしようにも、1万円台にとどまらず、2万円台、3万円台の超値がさ株も珍しくなくなった。株価水準の高さと上昇スピードの速さが、個人投資家にとって大きな参入障壁となっている。結果として、上昇相場に参加できる投資家と、参加しにくい投資家の差が広がりやすい。
日本株では、アドバンテスト、SCREEN、KOKUSAIなど、検査、洗浄、成膜といった代替困難なニッチ領域に強みを持つ企業も多い。こうした企業はAI半導体投資の拡大を業績成長につなげており、中長期では株価上昇に利益成長が追いついている銘柄もある。問題は、個人投資家がそうした成長機会に参加しにくい投資単位になっている点にある。
■NISA拡大でも届きにくい主力値がさ株
岸田文雄内閣当時の「資産所得倍増プラン」以降、NISA(少額投資非課税制度)は拡大・強化されてきた。しかし、超値がさ化した主力銘柄の多くは、個人がNISA枠内で取得しやすい投資単位を上回っている。個人投資家の参加余地は限られ、富裕層や機関投資家中心の相場となりやすい構図が浮かび上がる。
NISAの狙いは、家計の資金を貯蓄から投資へ振り向け、個人の資産形成を後押しすることにある。ところが、成長期待の高い主力株ほど投資単位が高くなれば、制度拡充の恩恵は一部の投資家に偏りやすい。株高が広く個人に共有されなければ、資産形成支援策としての実効性も問われる。
■高水準相場に残る調整リスク
もっとも、AI・半導体関連株にはリスクも残る。株価が数年連続で上昇していることに加え、AI設備投資の過熱感、半導体特有の景気循環リスクには注意が必要である。高値圏での投資は調整局面の影響を受けやすく、期待先行の銘柄では下落リスクも大きい。
したがって、現在の相場は「高水準だが、バブルとは言い切れない」局面といえる。重要なのは、一律にAI・半導体関連として買うのではなく、業績成長、受注環境、利益率、株価水準を見極める選別投資である。成長が実体を伴う銘柄と、期待だけが先行する銘柄との差は、今後さらに広がる可能性がある。
■資産課税論にもつながる市場構造の歪み
こうした状況が長期化すれば、消費税減税の財源問題が政治課題となるなか、資産課税の強化や有価証券取引税の見直しなど、富裕層への課税強化論につながる可能性もある。株高が広く個人の資産形成に結びつかなければ、市場の成長そのものが政治的な議論の対象となりかねない。
株式市場は企業の成長資金を支える場であると同時に、家計の資産形成を支える場でもある。AI・半導体関連株の上昇が実体経済の成長を映すものであっても、その果実が一部の投資家に偏れば、市場への信頼は揺らぐ。株高の持続性だけでなく、参加機会の公平性も問われる局面に入っている。
■東証が求める投資単位引き下げ
東証も、個人投資家が参加しやすい市場環境を整える観点から、上場会社に対して望ましい投資単位を5万円以上50万円未満とするよう要請している。投資単位が50万円以上の銘柄には、引き下げに向けた検討と具体策の開示を求めている。
日経平均株価が6万円、7万円と史上最高値を追い、個別銘柄も超値がさ化するなか、投資単位を引き下げる株式分割の動きが広がっている。AI・半導体株高が企業業績に裏付けられた成長相場であるならば、次に求められるのは、その成長により多くの個人投資家が参加できる市場づくりである。
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