(犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に残した相場格言を定期的に紹介。)※最新の情報に修正を加えてあります

【強気と弱気を分ける投資家の判断力】
■事実は同じでも受け止め方は分かれる
相場には「事実は1つ、見方は2つ」という格言がある。これは株式市場だけでなく、社会生活にも通じる考え方である。目の前で起きた出来事そのものは、誰にとっても同じである。たとえば、野球でジャイアンツが勝てば、「ジャイアンツが勝利した」という事実は動かない。しかし、その事実をどう受け止めるかは人によって異なる。ファンは「勢いが出てきた」と見る一方、アンチの立場なら「勝ち方が悪い。むしろ次から崩れる兆しだ」と受け止めるかもしれない。事実は1つでも、解釈は強気にも弱気にも分かれるのである。
■日常にも相場にも潜む先入観
日常生活でも同じことが起きる。1つの出来事を「悪い兆候」と受け止める人もいれば、「前向きな変化」と見る人もいる。慎重な人は、まず悪い方向に考えて心の準備をする。楽観的な人は、同じ出来事の中に次の可能性を探す。どちらが正しいと一概にはいえない。大切なのは、自分がどちらの見方をしているのかを自覚することだ。相場では、この自覚がないまま売買すると、事実を見ているつもりで、実は自分の感情や先入観に振り回されることになる。
■企業発表の信頼性と投資判断
かつて株式市場では、「事実」と「真実」が必ずしも一致しないという難しさがあった。粉飾決算や有価証券報告書などの虚偽記載が問題となり、企業が発表した数字や情報をそのまま信じてよいのかという疑念が残る場面もあった。現在でも不正が完全になくなったわけではないが、監視体制や情報開示の厳格化により、企業の重要事実は以前よりも信頼して受け止めやすくなっている。
■同じ材料をどう読み解くか
したがって、現代の投資家に求められるのは、発表された事実を冷静に確認したうえで、それをどう評価するかである。決算が増益だったとしても、「成長が続く」と見る投資家もいれば、「材料出尽くし」と見る投資家もいる。下方修正が出ても、「悪材料が表面化して不透明感が後退した」と見る場合もあれば、「業績悪化が続く」と判断する場合もある。事実そのものよりも、その事実を市場がどう受け止め、今後の株価にどう織り込むかが重要となる。
■投資家の腕は解釈に表れる
強気に判断するなら、新規買いや保有継続という選択になる。弱気に判断するなら、売却や空売りを考えることになる。どちらを選ぶにしても、出発点は1つの事実である。相場で問われるのは、事実をねじ曲げることではなく、その事実から何を読み取るかという投資家自身の判断力だ。現代の株式市場では、情報の量もスピードも格段に増えている。だからこそ、「事実は1つ、解釈は2つ」という格言は、いまなお有効である。事実を素直に見つめ、そのうえで強気か弱気かを見極めることが、投資家の腕の見せ所なのである。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)
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