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2026年06月24日

【特集】ナフサ代替品関連株に再評価余地、政府の安定供給策と素材転換が追い風

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■中東リスクで浮かぶ石化原料の急所

 中東情勢の緊迫化を受け、石油化学原料であるナフサの安定調達が改めて株式市場の注目テーマに浮上している。ナフサはエチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの基礎化学品につながり、包装材、自動車部材、家電、建材、医療関連、日用品まで幅広い産業を支える。ホルムズ海峡を巡る物流リスクが意識されるなか、石化関連株では原料調達力、代替原料の活用、価格転嫁力、循環型素材への展開力が評価軸になりつつある。

 ただし、今回の焦点は単なる「ナフサ不足」ではない。政府は備蓄放出、代替調達、国内精製、川下在庫の活用などを組み合わせ、日本全体として必要な供給量の確保に動いている。課題は、必要な性状・用途に合う原料や中間製品が、必要な工場や需要家に届くかどうかという「流通の目詰まり」にある。全体量を確保しながら、偏在や用途別の不足を一つずつ解消する段階に入った点が重要だ。

■政府対応は量の確保から目詰まり解消へ進化

 政府の対応は、危機管理として一定の評価に値する。中東情勢に伴う重要物資の安定供給に向けたタスクフォースを立ち上げ、関係省庁が分野横断でサプライチェーン情報を集約する体制を整えた。経済産業省は中東情勢関連対策ワンストップポータルを設け、化学品、建材、溶剤、断熱材、インキなど、ナフサ由来製品の供給状況や業界団体の情報を一覧できるようにしている。

 これにより、政策の重心は「原料を確保する」段階から、「どこで滞っているかを見える化し、必要な用途へ融通する」段階へ移っている。医療、物流、農業、建設、住宅設備など、国民生活と産業活動に直結する分野を優先し、個別の目詰まり解消に取り組む姿勢は、企業活動と市場心理の下支えになる。株式市場にとっても、政府が全体量の確保と流通の正常化を同時に進めていることは、石化関連株への過度な悲観を和らげる材料である。

■代替ナフサの4ルート、既存設備を生かす企業が有利

 ナフサ代替の第1ルートは、植物油や廃食油などを由来とするバイオナフサである。既存の石化設備に投入できる「ドロップイン型」の原料であり、マスバランス方式を使えば、従来品と同等の物性を保ちながら、環境価値を製品に付与できる。自動車、電機、包装、繊維など大口需要家が低炭素素材を求めるなか、既存設備を生かして原料転換できる企業の優位性は高い。

 第2ルートは、廃プラスチックを熱分解・油化し、再びナフサクラッカーや石油精製装置の原料として使うケミカルリサイクルである。廃プラを単に燃料化するのではなく、エチレン、プロピレン、ベンゼンなどの基礎化学品へ戻す構想で、国内資源循環とエネルギー安全保障の両面で意義がある。回収、選別、前処理、油化、認証、需要家採用までをつなげる企業群が関連銘柄の中核となる。

 第3ルートは、石油由来樹脂を用途単位で置き換えるバイオマス素材である。ナフサクラッカーそのものを代替するわけではないが、食品包装、カトラリー、フィルム、発泡体、人工芝、医薬品包装などで採用が広がれば、川下から石油由来素材の使用量を減らす効果がある。第4ルートは、米国エタンなど中東ナフサに依存しにくい原料・立地を持つ企業である。調達先分散が重視される局面では、非中東依存の生産基盤も評価対象となる。

■中核候補は三井化学、三菱ケミカル、出光興産、ENEOS

 三井化学<4183>は、バイオマスナフサと廃プラ分解油の双方をクラッカーに投入し、マスバランス方式による化学品・プラスチックの展開を進める。太陽石油との協業検討では、三井化学のクラッカーでは処理しにくい廃プラ分解油の一部を太陽石油側で処理し、ケミカルリサイクル由来のナフサやプロピレンなどを供給する構想を掲げる。既存設備を活用しながら代替原料の幅を広げる点で、ナフサ代替関連の中核銘柄といえる。

 三菱ケミカルグループ<4188>は、ENEOSと共同で使用済みプラスチックの油化ケミカルリサイクルに取り組む。ケミカルリサイクルナフサを用いてエチレン、プロピレン、ベンゼンなどの基礎化学品と誘導品を製造できる点は、総合化学大手ならではの強みである。構造改革の進捗に加え、循環型原料の商業展開が進めば、低炭素素材と資源循環の両面で評価余地が生じる。

 出光興産<5019>は、子会社のケミカルリサイクル・ジャパンが千葉県市原市で使用済みプラスチックの油化ケミカルリサイクル設備を完工し、年間2万トンの処理能力を持つ商業運転体制を整える。生産したケミカルリサイクル油を同社グループの石油精製装置や石油化学装置で原料として使う流れは、石油元売りの設備と循環型素材を結びつける取り組みである。

 ENEOSホールディングス<5020>は、エネルギー安定供給と素材の低炭素化をつなぐ存在である。三菱ケミカルとのプラスチック油化事業では、リサイクル生成油を石油精製装置やナフサクラッカーの原料として活用し、石油製品や化学品、プラスチックへ再製品化する。燃料市況の大型株であり短期の値動きは原油価格に左右されやすいが、原料網と製油所機能を持つ強みは大きい。

■成長枠はカネカ、リファインバース、TRE、守りの別枠に信越化学

 カネカ<4118>は、100%植物由来の生分解性バイオポリマー「Green Planet」を展開する。植物油などのバイオマスを原料とし、微生物発酵プロセスで生産する素材で、海水や土壌中の微生物により分解される。ナフサを直接置き換えるクラッカー型銘柄ではないが、用途単位で石油由来プラスチックを減らす川下代替素材として注目できる。

 リファインバースグループ<7375>は、廃プラスチック再資源化の小型テーマ株として位置づけられる。オフィス由来プラスチックなどを再び製品へ戻す取り組みは、ケミカルリサイクルや再生素材の社会実装と親和性が高い。流動性や収益化の進捗には注意が必要だが、廃プラを資源として扱う産業構造の変化が追い風となる。

 TREホールディングス<9247>は、廃棄物処理、資源循環、再生可能エネルギーを軸とする。ナフサ代替の直接銘柄ではないものの、廃プラの回収、選別、品質管理はケミカルリサイクルの入口であり、循環型サプライチェーンの基盤を担う。再生原料化が広がるほど、川上の資源回収インフラの重要性は高まる。

 信越化学工業<4063>は、ナフサ代替というより「非中東ナフサ依存」の守りの銘柄である。米国子会社シンテックを通じて塩ビ事業を展開し、米国での原料・生産基盤を持つ。半導体材料や塩ビ市況の影響も大きいが、調達先分散、原料立地、海外生産基盤の観点では、地政学リスクに対する耐性が意識されやすい。

■株式市場では短期思惑より供給網構築力を重視

 ナフサ代替品関連株は、中東情勢や原油・ナフサ価格の変動を手掛かりに短期物色されやすい。ただし、単なる「環境関連」や「リサイクル関連」だけでは選別は難しい。株式市場が評価するのは、実際に代替原料を集められる企業、既存設備に投入できる品質へ加工できる企業、国際認証やマスバランス管理に対応できる企業、大口需要家へ採用を広げられる企業である。

 今回のテーマの本質は、ナフサ価格の一時的な上昇ではなく、日本の石化産業が中東依存、物流リスク、脱炭素、資源循環を同時に迫られている点にある。政府が全体供給量の確保と目詰まり解消を進めることで、足元の不安は一定程度抑えられる。一方で、企業側には代替原料の確保、調達先分散、既存設備の柔軟運用、GX投資の加速が求められる。

 相場では、三井化学、三菱ケミカルグループ、出光興産、ENEOSホールディングスが中核候補となる。カネカ、リファインバースグループ、TREホールディングスは成長・循環型素材の周辺候補、信越化学工業は非中東依存の安定枠として位置づけられる。政府対応によって短期の供給不安が和らぐ一方、素材産業の構造転換はむしろ加速する可能性がある。ナフサ代替品関連株は、危機対応とGX投資が交差する中長期テーマとして再評価余地がある。

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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:00 | 特集