
■7月26日の「一発勝負」、豊漁を追い風にスーパーから外食まで販売攻勢
2026年の「土用の丑の日」は7月26日の日曜日で、夏の丑の日は1回だけとなる。家族がそろいやすい週末と重なり、量販店、コンビニ、外食チェーンが短期集中型の販売戦を展開している。イオンやセブン―イレブンなども7月24日から26日を中心に商品受け渡し期間を設定しており、今年は例年以上に商戦のピークが鮮明になった。
最大の追い風は、ウナギの稚魚であるシラスウナギの豊漁を背景とした仕入れ価格の低下である。店頭では単純な値下げに加え、価格を据え置いたまま商品を大型化する動きも広がった。物価高で消費者の節約志向が続くなか、「年に一度のごちそう」を手の届く価格で提供できるかが、集客力を左右する局面となっている。
■イオンは特大・産地・育て方で差別化
小売り大手の販売戦略は、安さだけにとどまらない。イオン<8267>(東証プライム)は、鹿児島県産の無投薬養殖商品や特大サイズ、蒲焼と白焼の食べ比べなど、産地、サイズ、飼育方法を前面に打ち出した。愛知県三河一色産のメスウナギ「うなくい〜ん」をはじめ、うな重、寿司、ちらし寿司まで品ぞろえを広げ、ウナギを単品商材ではなく、売り場全体を動かす季節イベントに仕立てている。
セブン&アイ・ホールディングス<3382>(東証プライム)傘下のセブン―イレブンは、国産ウナギ商品を予約販売し、ネット予約と店頭受け取りを組み合わせた。対象商品の予約購入者に電子ギフトが当たる企画も実施し、客単価の向上とデジタル接点の拡大を狙う。丑の日商戦は食品販売にとどまらず、アプリや会員基盤への誘導策としての性格も強めている。
■外食は「千円前後」と話題性で需要を取り込む
外食業界では、ゼンショーホールディングス<7550>(東証プライム)、吉野家ホールディングス<9861>(東証プライム)、松屋フーズホールディングス<9887>(東証プライム)などが、専門店より手頃な価格帯でうな丼やうな重を展開している。牛肉との組み合わせや大盛り商品を用意することで、ウナギを高級品から身近な夏季メニューへと変えつつある。
回転寿司では、FOOD & LIFE COMPANIES<3563>(東証プライム)やくら寿司<2695>(東証プライム)などが、一皿商品、ミニ丼、盛り合わせを投入した。少額から試せる商品を入り口に、家族客の来店や追加注文につなげる戦略である。ウナギ単体の利益だけでなく、来店頻度や店舗全体の売上高を押し上げる集客商材としての役割が大きい。
■「安いウナギ」の裏側で養殖業者には逆風
一方、消費者にとっての値下がりが、供給側すべての利益につながるわけではない。稚魚や成魚の価格が下落しても、飼料費、電気代、物流費、人件費は高止まりしている。専門店では炭や茶葉などの原材料費も上昇しており、スーパーほど販売価格を引き下げにくい。量販店や外食チェーンが集客目的で価格を抑えるほど、養殖業者、加工業者、専門店には採算悪化の圧力がかかる。
また、シラスウナギが採捕されてから成魚として出荷されるまでには一定の期間を要する。今年の店頭価格には過去の豊漁が反映されている面が強く、今後の漁獲量や中国の供給動向によっては、再び価格が上昇する可能性もある。ニホンウナギは絶滅危惧種であり、安さだけを追求する販売競争には、資源保護という課題も伴う。
■完全養殖が「安売り競争」の次をつくる
中長期的な焦点は、天然の稚魚に依存しない完全養殖である。イオン<8267>(東証プライム)は、水産研究・教育機構が進める完全養殖技術の社会実装に協力し、山田水産が生産した完全養殖ウナギの蒲焼を数量限定で試験販売した。販売を通じて消費者の評価を集め、将来の事業化につなげる狙いがある。
現段階では通常の養殖ウナギより高価だが、資源保護、供給安定、産地の明確化という価値を持つ。価格が下がった天然由来のウナギを大量販売する今年の商戦と、割高でも持続可能性を訴える完全養殖商品の登場は、ウナギ市場が二つの方向へ動き始めたことを示している。
株式市場の視点では、今年の丑の日商戦は、小売りや外食企業の短期的な売上材料にとどまらない。調達力、商品開発力、予約・アプリ基盤、養殖技術、資源循環への対応力を競う場となっている。値下げで客を呼び込む企業、特大化や産地で付加価値を高める企業、完全養殖で将来の市場をつくる企業――。一尾のウナギを巡る販売戦は、日本の食品産業が直面する物価高と資源制約への対応力を映す縮図となっている。
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