
■米半導体安が直撃、前日の全面高から一転
7月28日前場の東京株式市場は、前日の反発ムードから一転し、全面安色を強めた。日経平均は午前9時51分に前日比2709円97銭安の6万2221円22銭まで下落。前日終値の6万4931円19銭から急速に水準を切り下げた。午前10時時点でも2695円88銭安の6万2235円31銭と、下げ幅はほとんど縮まらなかった。
米国市場でAI投資の巨額化と資金負担への警戒が強まり、フィラデルフィア半導体株指数が2.2%下落した流れを引き継いだ。エヌビディアが約5%安、ASMLが8.5%安となり、東京市場でもアドバンテスト<6857>(東証プライム)、東京エレクトロン<8035>(東証プライム)、キオクシアホールディングス<285A>(東証プライム)、ソフトバンクグループ<9984>(東証プライム)など、指数寄与度の高いAI・半導体関連株に売りが集中した。
午前10時時点の日経平均に対する押し下げ寄与度は、アドバンテストが約602円、東京エレクトロンが約600円、ソフトバンクグループが約252円、キオクシアホールディングスが約234円に達した。上位4銘柄だけで日経平均を約1690円押し下げており、日経平均の下落幅がTOPIXを大きく上回る背景には、値がさ株への極端な売りの偏りがある。
■「指数調整」だけではない値下がりの広がり
もっとも、今回の下落を一部の値がさ株だけの問題とみるのも適切ではない。午前10時時点の東証プライム市場では、値上がり300銘柄に対し、値下がりは1212銘柄に達した。AI・半導体関連株が下げを主導したことは確かだが、投資家のリスク回避姿勢は市場全体に波及している。
アジア市場でも韓国株が一時8%を超えて下落し、売買を一時停止する措置が発動された。中国による半導体製造装置の国産化進展や、AIデータセンター計画に伴う巨額の資金保証を巡る報道が、半導体企業の競争力と投資回収への不安を増幅させた。今回の売りは単なる東京市場固有の動きではなく、アジアのAI関連株全体を巻き込んだ評価修正と位置付けられる。
焦点は、AI需要が伸びるかどうかだけではない。設備投資額や資金調達負担が膨らむなか、受注を利益とキャッシュフローに変え、投下資本に見合う収益を確保できるかが問われ始めた。AI相場は「需要拡大の期待を買う段階」から、「投資の採算性を見極める段階」に移りつつある。
■原油安は下支え、円安には副作用も
一方、原油価格の下落は、日本の内需企業にとって一定の支援材料となる。米国による対イラン空爆の一時停止を背景に、北海ブレント原油は前日の約9%安に続いて下落した。燃料費や輸送費の低下が続けば、空運、陸運、食品、小売りなどには採算改善への期待が生じる。寄り付き前の業種別動向でも、空運と陸運は相対的に底堅さを示していた。
円相場は歴史的な円安圏にあり、輸出企業の円換算利益を支える一方、輸入物価の上昇や為替介入への警戒を招いている。円安を一律に株高材料とみることはできず、外需企業への収益効果と、家計負担や金融引き締め圧力を強める副作用を分けて考える必要がある。
■6万2000円台の攻防、日米中銀会合が分岐点
今後の焦点は、7月28〜29日の米連邦公開市場委員会と、30〜31日の日銀金融政策決定会合である。両会合とも政策金利の据え置き予想が優勢だが、市場は政策変更の有無より、物価認識や今後の利上げ経路に関する発信を注視している。
日経平均は当面、6万2000円台を維持できるかが重要となる。前場の安値圏で下げ渋り、午後に半導体以外の業種へ買いが広がれば、急落後の自律反発につながる余地がある。反対に、6万2000円を明確に割り込み、アジア市場の下落が続けば、6万1000円台から6万円の大台を意識する展開も想定される。
今回の急落が示したのは、AI需要の終わりではなく、AIという看板だけで高い評価を得られた局面の転換である。今後は受注残、利益率、投資回収力、フリーキャッシュフロー、財務体質を備えた企業と、将来期待に株価が先行した企業との差が広がろう。
指数の下げ幅だけを見て全面的な弱気に傾く局面ではないが、急落を直ちに押し目と決めつけるのも危うい。日米金融政策と企業決算を確認しながら、利益成長を数字で示せる銘柄を選別する姿勢が求められる。AI相場は終わったのではない。「期待」から「採算」へ、評価基準が変わる局面に入ったのである。
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