
■急落後の反発でも続く不安定な値動き
7月30日の東京株式市場で日経平均株価は3日ぶりに反発した。前日までの大幅下落を受け、AI・半導体関連を中心に買い戻しが先行したが、前場に大きく上昇した後は戻り売りに押され、上げ幅を縮小した。TOPIXは続落しており、指数寄与度の大きい一部銘柄が日経平均を押し上げる一方、市場全体には売り圧力が残る二極化相場となった。
日経平均は28日に2500円を超えて下落し、29日も続落した。30日は反発したものの、1日の値幅が1000円を超える不安定な相場環境に変わりはない。こうした乱高下は投資家にとって大きなリスクだが、売買注文を受ける証券会社には収益機会となる。株価の方向にかかわらず、取引が増えれば株式委託手数料や信用取引に伴う金融収益、トレーディング収益の増加につながるためだ。
■証券各社で増益相次ぐ
証券各社が公表した2027年3月期第1四半期業績では、株式市場の取引活発化を背景に、利益が前年同期を大きく上回る企業が相次いだ。アイザワ証券グループ<8708>(東証プライム)、いちよし証券<8624>(東証プライム)、水戸証券<8622>(東証プライム)、東洋証券<8614>(東証プライム)、丸八証券<8700>(名証メイン)、今村証券<7175>(東証スタンダード)などが注目され、決算速報や正式発表を受けて株価が上昇する場面もみられた。
ただし、純利益の増加率だけで評価するのは早計である。株式委託手数料の増加による本業の改善なのか、投資信託やファンドラップ、預かり資産に連動する継続収益が伸びたのか、自己売買益や保有株式の売却益が利益を押し上げたのかによって、収益の持続性は異なる。
■利益の持続力は顧客基盤が左右
証券会社は典型的な市況産業であり、四半期の大幅増益がそのまま通期まで続くとは限らない。夏場に売買が減少する「夏枯れ相場」となれば、委託手数料の伸びは鈍化する。一方、企業決算、日米金融政策、円相場、米国の通商政策などを巡って不透明感が続き、売買代金が高水準を維持すれば、第2四半期以降も追い風となる。
中長期で重要なのは、相場の活況に左右されるフロー型収益から、投資信託、ラップ口座、預かり資産などに基づくストック型収益への転換である。富裕層や法人顧客の基盤、預かり資産残高、店舗改革、営業員の生産性向上が進んでいる企業ほど、相場が落ち着いた後も利益を確保しやすい。
■次の焦点は株主還元
証券各社の多くは、市況変動の影響が大きいため通期業績予想を開示せず、年間配当予想も未定としている。このため、第1四半期の増益に続く株価材料は中間配当となる。前期並み以上の配当や増配、自社株買いが示されれば、高配当利回りや株主還元を評価する資金が流入する可能性がある。
一方、四半期利益の急増だけを根拠に高値を追うのは慎重でありたい。配当性向や純資産、自己資本規制比率に加え、一時的な売却益を除いた利益の再現性を確認する必要がある。
株安は通常、投資心理を冷やす悪材料である。しかし、活発な売買を伴う株安は証券会社の収益を押し上げる。「株安のデメリット」を「取引増加のメリット」に変える証券株は、乱高下相場で浮上する逆張りの投資テーマとなる。ただし、選別の基準は増益率の大きさではない。相場沈静化後にも利益を残せる顧客基盤と収益構造を備えているかが、投資判断の分かれ目となる。
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