
■政策金利1.0%から1.25%へ焦点、FOMC翌日に日銀会合――長期金利は一時3%、地銀5分割も相次ぐ
9月相場で銀行株が再び主役候補に浮上している。焦点は日銀の追加利上げと、相次ぐ株式分割・株主還元である。日銀は9月17〜18日に金融政策決定会合を開く。6月に政策金利を1.0%程度へ引き上げ、7月会合では据え置いたが、高田創審議委員は1.25%への引き上げを提案した。8月17〜24日のロイター調査ではエコノミストの57%が9月利上げを予想。9月入り後は植田和男総裁や高田委員の発言などを受けて観測が一段と強まり、4日時点で市場が織り込む0.25%幅の利上げ確率は8割前後となっている。東京都区部の8月消費者物価指数(中旬速報値)は、生鮮食品を除く総合が前年比1.8%上昇、生鮮食品とエネルギーを除く総合が同2.0%上昇し、基調的な物価圧力も意識される。
■FOMC翌日に日銀、長期金利「一時3%」で追い風と逆風
直前の9月15〜16日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。米国の9月利上げ観測も残るが、ウォラーFRB理事がインフレ鈍化を確認できれば据え置きを支持する考えを示したことで、市場の利上げ確率は5割前後へ低下した。FOMC終了翌日に日銀会合が始まるだけに、日米中銀の判断は長期金利やドル・円を通じて銀行株を大きく揺らす可能性がある。日本の10年国債利回りは9月1日に3%へ上昇し、1996年以来の水準に到達した。金利上昇は銀行にとって貸出金利の引き上げ余地や運用利回り改善の追い風となる半面、保有債券の価格下落や預金金利上昇による調達コスト増も伴う。「金利上昇=銀行株一律買い」ではなく、収益構造の違いを見極めたい局面である。
■三井住友FGは2分割・初優待、1800億円の自己株取得も終了
三井住友フィナンシャルグループ<8316>(東証プライム)は9月30日を基準日に1株を2株へ分割し、10月1日に効力が発生する。初回基準日を9月30日とする株主優待制度も導入するほか、5月に決議した上限1800億円の自己株式取得は7月末までに終了した。注意したいのは、初回優待が分割前の保有株数で判定される点だ。9月30日時点で50株を保有し、分割後に100株となっても初回優待の対象にはならない。2027年9月末以降は分割を反映して保有株式数の条件が読み替えられるため、株式分割と優待の権利条件は分けて確認する必要がある。
■大垣共立・阿波・山梨中央は5分割、地銀にも個人株主拡大の波
大垣共立銀行<8361>(東証プライム)は9月30日を基準日に1株を5株へ分割する。2027年3月末基準から、分割後200株以上500株未満で継続保有要件を満たす株主に500円相当のQUOカードを新設。500株以上では同カードに既存の「OKBの『選べる』株主優待」を加える。
阿波銀行<8388>(東証プライム)も同日基準で5分割し、2027年3月末基準から100株以上500株未満に1000円分、500株以上1000株未満に2000円分のデジタルセレクトギフトを設定する。阿波銀は7月、2027年3月期第2四半期累計の連結中間純利益予想を94億円から101億円へ上方修正した。政策保有株式を含む株式売却益の計上や、円債の入れ替えを中心とした有価証券ポートフォリオの健全化が背景である。8月に発表した配当予想の修正は5分割に伴う表示変更で、分割前換算の実質的な配当額に変更はない。
山梨中央銀行<8360>(東証プライム)も9月30日を基準日に5分割を実施し、株主優待の保有株式数基準と配当予想を分割比率に応じて変更するが、いずれも実質的な条件は変わらないとしている。地銀でも投資単位を引き下げ、個人投資家層を広げる動きが鮮明になってきた。
■9月銀行株の選別軸は「稼ぐ力+還元+分割」
銀行株の次の評価軸は、貸出金利への転嫁力、預金コスト、有価証券運用、信用コストに加え、増配や自己株買いによって利益を株主価値につなげられるかである。9月は日銀の追加利上げ観測に、株式分割や優待拡充・見直しが重なる。一方、利上げ期待を市場がすでに相当程度織り込んでいるだけに、実際の政策決定後には材料出尽くしとなる可能性にも注意が必要だ。金利上昇の恩恵だけを追う局面から、「稼ぐ力+還元+分割」を比較して銘柄を選別する局面へ、銀行株相場は移りつつある。
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