[小倉正男の経済コラム]の記事一覧
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記事一覧 (09/29)【小倉正男の経済コラム】石破茂新総裁「石破ショック」という荒天の船出
記事一覧 (09/23)【小倉正男の経済コラム】パウエル議長「後手に回らないことにコミット」
記事一覧 (09/03)【小倉正男の経済コラム】サラダクラブ「千切りキャベツ」深掘りに踏み込む
記事一覧 (08/25)【小倉正男の経済コラム】パウエル議長「金融政策を調整する時が来た」
記事一覧 (08/13)【小倉正男の経済コラム】FRBの独立性 トランプ候補は「NO」を宣言
記事一覧 (07/23)【小倉正男の経済コラム】「確トラ」利下げと減税の“総取り”政策狙う
記事一覧 (07/08)【小倉正男の経済コラム】米国9月利下げ開始機運 円安には干天に慈雨
記事一覧 (06/25)【小倉正男の経済コラム】1ドル160円接近 追加利上げ示唆でも円安進行
記事一覧 (06/04)【小倉正男の経済コラム】「トリプル安」円安が起因となって債券安、株安
記事一覧 (05/17)【小倉正男の経済コラム】「物流の2024年問題」生産性は上がったか?
記事一覧 (05/06)【小倉正男の経済コラム】1ドル150〜160円超 令和の「経済敗戦」
記事一覧 (04/19)【小倉正男の経済コラム】中東危機“報復の連鎖”の愚、「やめろ」の警告
記事一覧 (04/11)【小倉正男の経済コラム】JBS 日本一の社員食堂をつくったクラウド企業
記事一覧 (03/24)【小倉正男の経済コラム】新工場ラッシュ「半導体ブーム」の火付け役
記事一覧 (03/20)【小倉正男の経済コラム】「東濃」の山城 岩村城「女城主」おつやの方
記事一覧 (02/23)【小倉正男の経済コラム】「シン・バブル」 株価は最高値更新、バブル期のデジャブも
記事一覧 (02/12)【小倉正男の経済コラム】バブル後最高値 マイナス金利解除後発言の度に
記事一覧 (01/13)【小倉正男の経済コラム】日銀「出口戦略」マイナス金利解除=正常化を塞ぐ壁
記事一覧 (12/23)【小倉正男の経済コラム】マイナス金利解除 FRBの利下げを見守るしかない・・・
記事一覧 (12/10)【小倉正男の経済コラム】日銀 マイナス金利解除に向かうのか?
2024年09月29日

【小倉正男の経済コラム】石破茂新総裁「石破ショック」という荒天の船出

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■「石破ショック」、一過性で終わるか

 石破茂氏が自民党新総裁となった。第1回投票では、高市早苗氏が第1位になり、石破氏は後手に回ったが、最終的に決戦投票で石破氏が勝利した。

 27日の第1回投票では高市早苗氏がトップに立ち、「女性である私が決戦投票に進んだのは歴史的瞬間」というスピーチを行った。マーケットはいち早く反応、為替は1ドル146円の円安に急激に振れ、株式も上昇した。高市氏の「いま利上げはあほ」という積極財政を好感しての動きである。マーケットは、第1回投票の勢いから高市氏が新総裁になると先読みしたわけである。

 だが、石破氏の逆転勝利とともにマーケットは急転・様変わりした。為替は1ドル142円の円高となり、日経株価先物はマイナス2000円を大きく超える大幅低下となっている。債券価格は下落し、債券利回り(金利)は上昇する兆しをみせている。

 「高市トレード」の反動なのか、週明けのマーケットは大変なことになりそうだ。石破新総裁、とりもなおさず石破新首相となるわけだが、マーケットから手荒いセレブレーションを受けることになるとみられる。

 「石破ショック」、一過性のものなのか、一過性ではすまないのか。デジャブ(既視感)のない、かつてない荒天の船出ということになる。

■岸田首相は勝負強さで勝ち残る

 石破新総裁は総裁選直後の会見で、岸田文雄首相の路線継承を強調している。

 「岸田首相が一生懸命努力してきたデフレからの脱却を確実なものにしなければならない」

 キングメーカーの最たる者は岸田首相であり、岸田首相は「生き残り」どころか、「勝ち残り」を果たした格好だ。影響力の極大化に成功したといえる。

 政治家だから変わるのは必ずしも悪いことではない。石破新総裁は「『新しい資本主義』にさらに加速度をつけていきたい」とあらためて表明している。

 総裁選の勝利者は、石破新総裁と岸田首相ということになる。岸田首相は勝負強さをみせたわけである。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 15:42 | 小倉正男の経済コラム
2024年09月23日

【小倉正男の経済コラム】パウエル議長「後手に回らないことにコミット」

■FRBは0・5%利下げを決定

kk1.jpg FRB(米連邦準備制度理事会)は、9月17〜18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で4年半ぶりに利下げに踏み切った。事前には0・25%の利下げになるという見方が多かったが、利下げ幅は予想を超えて0・5%というものだった。

 米国の政策金利は4・75〜5・0%に引き下げとなった。「我々が後手に回っているとは思っていない。後手に回らないことへのコミットメントのサインと受け止めてもらうことができる」。パウエルFRB議長は、FOMC後の会見でそう語っている。

 パウエル議長は、今回の0・5%利下げは経済のソフトランディングを確実にするためとしている。「ビハインド・ザ・カーブ」(金融政策で後手に回る)を回避するのが眼目で、利下げのタイミング、利下げ幅とも適切な決定であることを強調している。

 ただし、パウエル議長は0・5%の大幅利下げを継続するという観測、過度な期待にはしっかりと釘を刺している。「今回の決定を受けて、これが新しいペースだと誰も捉えるべきではない」。大幅利下げが継続されるという受け止めについては、そうしたことはないとはっきり否定している。

■日銀は利上げ見送り、「市場との対話」に課題を認める

 日本銀行は金融政策決定会合(9月19〜20日)で追加利上げを見送り、政策金利(0・25%)を維持すると発表している。7月末、日銀は現状の政策金利に利上げを行ったが、為替は1ドル160円内外から1ドル140円台の円高に振れ、8月の株式市場は大荒れとなり、大幅下落に見舞われている。

 植田和男総裁は、「今後とも経済・物価が見通し通りなら利上げする考えに変わりはない」としている。しかし、「すぐに利上げということにはならない」「決まったスケジュール感を持っているわけではない」と慎重な発言に終始した。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 17:47 | 小倉正男の経済コラム
2024年09月03日

【小倉正男の経済コラム】サラダクラブ「千切りキャベツ」深掘りに踏み込む

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■キャベツとは?

 この夏は酷暑で外出はしない。そんな風に決めていたが、8月下旬にサラダクラブが「サラダ白書2024」を発表するというので呼び出された。「サラダ白書2024」のミーティングでは、キャベツに焦点を当てたレクチャーが行われた。

 キャベツについては何も考えたことがなかった。食事でいえば、トンカツの付け合わせで使われるキャベツ、お好み焼きで豚肉、焼きそばなどと一緒にギュウギュウと詰めて用いられるキャベツぐらいしか思い浮かばない。

 恐慌史では産業革命期の1845年〜49年の「馬鈴薯恐慌」(ジャガイモ飢饉)という有名な事件がある。それ以前の大航海時代には胡椒がトップ商品だった。胡椒、そして胡椒貿易が大航海時代をもたらしたといわれている。だが、キャベツはそうした時代を画するものとは無縁である。

■キャベツは年間3万トン使用

 サラダクラブは1999年にキューピーと三菱商事により創業されている。新鮮な野菜を加工・袋詰めして洗わないでそのまま食卓に乗せられる「パッケージサラダ」のパイオニア企業である。

 「今年が25周年。この四半世紀にパッケージサラダは食卓に根付いてきただけではなくマーケットを拡大している。全体の市場規模は2000億円に接近している」(金子俊浩社長)。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 07:34 | 小倉正男の経済コラム
2024年08月25日

【小倉正男の経済コラム】パウエル議長「金融政策を調整する時が来た」

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■パウエル議長「金融政策を調整する時が来た」

 パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、「金融政策を調整する時が来た」と発言した。(8月23日・ワイオミング州ジャクソンホール講演)

 端的に言えば、9月に利下げに踏み込むと明言したに近い発言である。インフレを叩いてコントロールする時期は大枠で終了し、景気回復に取り組むという金融政策の転換を宣言した。

 週末のNY株式は一時490ドルを超える大幅値上がりとなった。株式市場としては待ちに待った利下げが実現する。NY株式が賑わうのは当然である。

 では日本の株式市場もというと、そういうわけにはいかない模様だ。問題は為替である。

 米国は9月利下げということで、早速のところドル安円高となっている。

 1ドル144円台という円高に転じている。少し以前までは、政府、日銀などが1ドル160円という過剰な円安を懸念していた。しかし、今度は逆に過剰な円高を懸念する局面を迎えている。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 08:50 | 小倉正男の経済コラム
2024年08月13日

【小倉正男の経済コラム】FRBの独立性 トランプ候補は「NO」を宣言

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■「大統領はFRBの政策に発言権をもつべきだ」というトランプ候補

 共和党の大統領候補トランプ前大統領が、大統領に返り咲いたらFRB(連邦準備制度理事会)の独立性に「NO」を突き付けるという発言をしている。FRBの金融政策決定に「大統領は少なくとも発言権を持つべきだと思う」と強調している。

 トランプ前大統領は、大統領に戻ったら金利を大幅に下げたい意向が強い。FRBの政策決定に大統領が介入するのは当然という考え方を隠していない。何でも自分の思い通りにやるのでは、自ら専制君主になると言っているのに等しい。

 民主党の大統領候補であるハリス副大統領は、「FRBの政策決定には決して介入しない」と表明している。「FRBは大統領から独立して決定を下すべきである」と。権力が集中するのは良いことではない。金融政策に大統領が発言する。このあたりにトランプ前大統領の危なさが露呈している。

 「もしハリ」、最近ではそう話されている。「米国第一主義」「自分第一主義」のトランプ前大統領が返り咲いたら、世界は大変なことになる。「もしハリ」どころか、「ほぼハリ」「確ハリ」に駆け上がってほしい。

■「アベノミクス」=「日本第一主義」という産業保護

 トランプ前大統領が明らかにしたFRBの政策決定に介入するという考え方は筋金入りだ。政権の下にFRBを置き、政権の意のままの金融政策にしたい。それこそ本気でそう思っている。

 金利を下げれば景気を刺激して浮揚する効果が生まれる。そのうえドル安になる作用が期待できるから国内製造業などの競争力を保持し労働者の雇用を維持できる。競争条件を自国に有利にできる。それなりに “大義名分”が成立する。国内産業・雇用を保護するという「米国第一主義」にシンクロするわけである。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 08:14 | 小倉正男の経済コラム
2024年07月23日

【小倉正男の経済コラム】「確トラ」利下げと減税の“総取り”政策狙う

■「確トラ」、最初に行うのは利下げと減税

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 「もしトラ」、「ほぼトラ」といわれていたが、いまや「確トラ」とまでいわれている。一方の民主党のほうはバイデン大統領が大統領選挙から撤退を表明。ハリス副大統領を大統領候補として支持するとしている。共和党の大統領候補トランプ前大統領はすぐさま「パリス副大統領のほうが倒しやすい」という認識を示している。

 選挙のことであり、先は何ともいえない。ただ「確トラ」ではないが、トランプ氏に勢いが加わっているのは間違いない。11月の大統領選挙でトランプ氏が大統領に返り咲いたら、何が起こるのか。おそらくトランプ氏が最初に手を付けるのは金利(利下げ)と減税とみられる。

 インフレが鈍化傾向に転じていることから、市場では9月に利下げが行われるという見方が強まっている。だがトランプ氏は、大統領選挙前の9月利下げには当初から反対している。利下げによる景気刺激効果は、現職のバイデン大統領に有利に働くという思惑からの反対だった。しかし、いまやバイデン大統領は候補を降り、「確トラ」の状況だ。だがそれでも9月利下げには反対の立場は変わらない。

■利下げと減税=トランプ氏は“良いこと総取り”を狙う

 トランプ氏としたら、11月に大統領に返り咲いたら、あらためて利下げと減税を押し出したい。利下げと減税で景気を好転させ、バイデン大統領時代の経済(景気)とは画然と違うことを印象付けたい。いわば、“良いこと総取り”政策にほかならない。「確トラ」への状況変化でトランプ氏はそう読んでいるとみられる。

 日本との関連でいえば、トランプ氏はドルが円に対して高い、すなわち「ドル高円安」について問題視してきている。ドル高は米国製造業には「アンフェア」と捉えている。米国が利下げを行えば、「ドル安円高」に働くファクターになる。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 07:36 | 小倉正男の経済コラム
2024年07月08日

【小倉正男の経済コラム】米国9月利下げ開始機運 円安には干天に慈雨

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■円安=前週は160円台から161円台に加速

 「円安」が継続している。前週は1ドル160円台から161円台にジワリと加速をみせている。週末の米国雇用統計では雇用者数、賃金の伸び率がやや鈍化、失業率が4・1%に上昇した。「9月利下げ開始の確率が高まった」という観測からナスダック、S&P500が過去最高値を更新した。長期金利(10年物国債金利)が低下し、1ドル160円台後半まで「円安」が緩和されている。

 だが、1ドル160円台〜161円台は、これまでの趨勢では「超円安」ゾーンにほかならない。日本政府・財務省の市場介入が意識されたが、いまのところ市場介入は手控えられている。

 この金融当局の為替市場介入については、米国のイエレン財務長官は、4月末に日本を名指しこそしていないものの「介入は稀であることを願う」と発言。5月にも「介入は稀であるべきで、介入は決して日常的に用いられる手段でない」と釘を刺している。米国は「市場主義」を貫いている。

■市場介入しても円安には効果は限定的

 日本のほうは「社会主義」というか、「人為主義」だ。「(通貨が)過度な変動があった場合にはあらゆるオプションを排除せず適切な行動をとる」(鈴木財務大臣・神田財務官)と再三再四繰り返している。「市場介入は躊躇しない」というわけだが、市場に逆らってうまくいったという話は聞いたことがない。

 市場介入は、いわば市場は投機など過剰に動くものであり、人為で市場を正すという「反市場主義」という立場である。組織の中では正当なことであるに違いない。ただ、民間企業などの感覚からすれば、「ムリ・ムダ・ムラ」の範疇に入る。市場介入は円安に対して牽制効果しかない。しかもその牽制効果も長続きはしない。効果は限定的で「仕事をやっています」みたいな結果になりかねない。

 今回はまだ分からないが、いまのところ市場介入が行われていないのは良かったのではないかと思われる。結局のところ市場は見透かしているわけだから、市場のことは市場に任せるしかない。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 14:15 | 小倉正男の経済コラム
2024年06月25日

【小倉正男の経済コラム】1ドル160円接近 追加利上げ示唆でも円安進行

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■1ドル160円台突入の円安から政府・日銀が会談

 「円安」(ドル高)が再進行している。根底には米国経済の底堅さ、もっといえば強さがある。裏からいえば日本経済の弱さも反映している。現状は1ドル159円77銭、1ドル160円台突入寸前だ。4月下旬以来のドル買い・円売りの状況になっている。

 その4月だが、日本銀行・植田和男総裁は円安の進行について「基調的な物価上昇率にいまのところ大きな影響はない」と発言している(4月26日記者会見)。同時に円安が基調的な物価上昇に影響があるなら「金融政策の判断材料になる」という認識も表明した。しかし、これが円安を牽制するにはハト派寄り発言と受け止められた。直後の4月末には1ドル160円台に突入している。

 5月7日植田総裁は岸田文雄首相と会談。「(最近の円安については)日銀の政策運営上十分に注視していくことを確認させていただいた」。植田総裁は会談で為替(円安)について話があったことを認め、「政府と日銀が密接に連携を図り、政策運営に努めていく点を確認した」。その後、財務省は4月26日〜5月29日に9・8兆円規模のドル売り・円買いの市場介入を行ったと公表している。

■「市場介入は稀であるべき」(イエレン財務長官)が米国の立場

 この財務省の為替市場介入については、米国に根回しが奏功した、あるいは黙認による了解の示唆を得たといったことはなかった模様だ。イエレン財務長官は、4月末に日本を名指しはしていないものの「介入は稀であることを願う」と発言。5月後半にも「介入は稀であるべきで、介入は決して日常的に用いられる手段でない」と改めて釘を刺している。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 07:41 | 小倉正男の経済コラム
2024年06月04日

【小倉正男の経済コラム】「トリプル安」円安が起因となって債券安、株安

■「円安になれば原価が下がる」

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 1〜2年前のことだが、ある輸出型製造業経営者に「円安」について聞いたことがある。「円安になれば、会社にとってビジネス、業績では得ですか」といった質問をした。

 普通はそうした素朴な質問はしない。話の流れで具体的にどういうメリットがあるのか、あらためて尋ねてみた。

 「円安になれば原価が下がりますからね」

 経験則なのか、ぽつりと答えてくれた。

 この25年3月期決算でも、輸出型製造業は1ドル140円、あるいは1ドル145円の想定レートを打ち出している企業が少なくない。現状は1ドル156〜157円台にある。それどころか1ドル160円に再接近している。現状は「円安」だが、輸出型製造業サイドは反対に「円高」を想定している。

 「25年3月期は円高を想定している。前期は円安で為替差益が大幅に出たが、25年3月期は円高でむしろ為替差損が出ると想定している」

 当方はそんな風、つまり「円高」になるようにはまったく思えないのだが、輸出型製造業サイドは極端な「円高」見通しを語っている。現状の「円安」がそのまま継続すれば、前期同様に為替差益が生み出される。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 07:45 | 小倉正男の経済コラム
2024年05月17日

【小倉正男の経済コラム】「物流の2024年問題」生産性は上がったか?

■小物商品ではダンボール箱物流が消滅

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 「物流の2024年問題」、この4月1日からドラックドライバーの時間外労働が年間960時間に制限されている。ずいぶん以前から取り沙汰されていた“働き方改革”だが、長い猶予期間を経てようやく実行されたことになる。

 トラック物流というと、荷台にはダンボールの箱がずっと重なっているのが通常だ。ダンボール箱がトラック物流の主役の座を担っている。何しろダンボールは丈夫である。モノも詰め込める。

 ところが、ここにきてEコマース用小物商品の物流では紙製「包装材」、あるいは紙製「包装袋」というものが、ダンボール箱に取って代わる動きを顕在化させている。丈夫さに特徴があるクラフト紙を使用した包装袋なのだが、急速にダンボールに代替している。

 紙製包装袋というものは以前から存在する商品であることは間違いない。しかし、この“オールドルーキー”が突然という格好でもてはやされている。当惑してしまうというか、不思議なこともあるものである。

■「空気」を運ぶ部分をカットする

 しかし、物流・包装業界に聞いたら納得の話だった。

 「ダンボール箱とクラフト紙製包装袋との競合はコストの問題ではない。トラックの積載効率から小型商品の物流では紙製包装袋のほうがフィットしている。物流の2024年問題から急激な変化が起こっている。紙製包装袋自体は目新しいものではないが、新需要を取り込んでいる」

 小型商品では、ダンボール箱に詰め込むと隙間ができる。ダンボール、紙などの緩衝材などを入れて隙間を埋めている。しかし、それではトラック物流では「空気」を運ぶ部分が大きくなる。紙製包装袋では、小型商品を詰め込んで緩衝材は入れるが、「空気」を運ぶ部分を少なくできる。

 つまり、小物商品のトラック物流では紙製包装袋のほうが積載効率を上げられる。「空気」を運ぶ部分をカットし、運べる数量を増やせる。その結果、ドラックドライバーの残業を減らすというわけである。逆にいえば、トラック物流は「空気」の部分を運んでいて長い残業に明け暮れしてきたことになる。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 07:54 | 小倉正男の経済コラム
2024年05月06日

【小倉正男の経済コラム】1ドル150〜160円超 令和の「経済敗戦」

■4月雇用は予想を下回り、長期金利低下しNY株価は上昇

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 米国労働省が発表した4月雇用統計だが、景気の現状を反映するといわれる非農業部門雇用者数は17万5000人増加となり、予想雇用者数24万人を大きく下回る結果となった。前月は30万3000人増(改定値31万5000人増)の雇用者数だった。さすがに雇用者増はやや鈍化となった格好である。

 失業率は3・9%(予想3・8%)と前月の3・8%から悪化している。平均時給は0・2%(予想0・3%)で前月の0・3%を下回った。労働需給の過熱感はやや低下の兆しがみえる。ただし、4月単月ベースの推移であり、今後のトレンドを指し示すかどうかは何ともいえない。

 「9月には利下げが行われる」(市場筋)といった金利低下期待がにわかにぶり返したが、この傾向が5月、6月と継続しなければ利下げのスケジュールは見込めない。現状では利下げ期待は掛け声というか、少し気が早いということになる。

 だが、久々の“景気鈍化”を示す指数に市場は反応している。米国国債10年物利回りは4・50%に大幅低下している。円は一時1ドル160円台に突入したが、巨額の為替介入で1ドル153円台となっていた。4月雇用統計発表で一時151円台になり、その後も152円台と円高に転じている。前週末のNY株式市場は450ドル高、ナスダックは315ドル高と大幅上昇している。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 08:22 | 小倉正男の経済コラム
2024年04月19日

【小倉正男の経済コラム】中東危機“報復の連鎖”の愚、「やめろ」の警告

■“報復の連鎖”の罠を回避できるか

kk1.jpg 4月1日イスラエルの戦闘機がシリア・ダマスカスのイラン領事部を空爆した。イラン革命防衛隊は、この爆撃で将官7名が死亡したと発表している。領事部はイラン大使館の隣にあり、ピンポイントで攻撃されている。

 イランは14日にミサイル、ドローンを大量動員してイスラエルを攻撃した。イラン領事部爆撃に対する報復である。ただし、イスラエルに本気で深刻な打撃を与える意図はなかったとみられる。そのうえイラン軍統合参謀本部議長は、「この攻撃により作戦は終了したと考える」と語っている。

 これは意外な対応だった。いわば大人の対応というか、自制を効かせた限定的な攻撃にとどめたようにみえる。居丈高な表明も抑制している。この攻撃中に米国はイランから「作戦はこれで終了、さらなる攻撃はない」という示唆を受け取ったといわれる。米国はイランがイスラエルとの激突回避に相当に腐心しているという感触を得た模様だ。

 問題は右派戦時内閣のネタニヤフ首相のイスラエルがどう対応するかだ。最悪のケースでは“報復の連鎖”になりかねない。報復の応酬から、地獄の淵を覗くような事態に至る愚は回避しなければならない。

 バイデン大統領はイランに対してもそうだったが、イスラエルに自制を求めている。「イスラエル国民の74%はイランへの反撃は同盟国(米国)の信頼を損なわれるようなら反対」(ヘブライ大学世論調査)。「イスラエル国民は米国との関係を不安定なものにしてまでイランに攻撃するのは反対」と報道されている。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 07:50 | 小倉正男の経済コラム
2024年04月11日

【小倉正男の経済コラム】JBS 日本一の社員食堂をつくったクラウド企業

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 企業はなぜ上場するのか。案外、経営者にとって需要な問である。以前は「社会的信用」を挙げる経営者が多かった。「社会的信用」をテコに企業をさらに成長させる。上場はあくまで通過点ということになる。

 ある創業経営者は上場時に「(正直にいうと)盆栽のため」と語っている。ちなみにその経営者は、日本一の盆栽コレクター(当時)で盆栽美術館を創設した人物だった。盆栽のために上場を果たした。盆栽のために自社の事業を大きく拡大する。それはそれで経営者の思いであり、事業発展のエンジンとなっていればよい。

■マイクロソフト「アジュール」最上位パートナー

 そんなことを考えたのは、『なぜ最先端のクラウド企業は、日本一の社員食堂をつくったのか』(日刊現代発行・講談社発売)という新刊本に触発されてのものだ。

 そのクラウド企業とは、日本ビジネスシステムズ(以下JBS・証券コード5036)。2022年8月に東証スタンダードに上場を果たしている。いわば新進気鋭なのだが、この24年9月期業績計画は売り上げ1268億円(前期比12・4%増)、営業利益51億円(同21・6%増)。売り上げ・収益規模はかなりのものである。ROE(自己資本利益率)16・0%、収益を稼ぐ力も高い。

 牧田幸弘社長は、1979年日本アイ・ビー・エムに入社し、トップセールスとして活躍。1990年JBSを創業した。JBSがたったの33年でここまで急成長を遂げたのは、クラウドインテグレーターの先駆企業だったことが大きい。JBSが創業した1990年あたりからシステムインテグレーションへの需要が高まり、その幸運に恵まれた。いまではマイクロソフト「アジュール」最上位パートナー企業の認定を受けている。最高品質のソリューションを提供できるパートナーとして存在感を示している。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 14:32 | 小倉正男の経済コラム
2024年03月24日

【小倉正男の経済コラム】新工場ラッシュ「半導体ブーム」の火付け役

■「日経半導体株指数」スタート

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 3月25日から「日経半導体株指数」の集計・公表がスタートする。東証に上場している半導体・半導体製造装置・電子部品など半導体部材の有力企業30銘柄の値動きを示す指数になる。

 米国では「SOX指数」(フィラデルフィア半導体株指数)が使われている。米国上場の主要半導体関連企業30銘柄を集計した指数である。「日経半導体株指数」は「SOX指数」の日本版ということになる。

 いまの日経平均株価を牽引しているのは半導体関連であり、指数=データが開示される意味は小さくない。データと情報は異なるという見方もあるが、データは即情報といえる面も否定できない。データ、情報をどう読み込むか、どう活用するかはそれぞれ個人に任される。データ、情報は多いほうが良いのは言うまでもない。

■中国に続いて米国、日本、欧州が半導体に巨額補助金

 「半導体ブーム」、世界が半導体新工場・研究所など設備投資に動き出している。米国は2022年8月にCHIPS法(CHIPS及び科学法)を成立させた。バイデン大統領は、インテルの先端半導体新工場を支援するために195億ドル(2兆9000億円超)という巨額補助金投入を明らかにしている。

 マイクロン・テクノロジー、ファウンドリー世界最大手・TSMC(台湾積体電路製造)なども新設備投資に補助金を獲得できる見込みとなっている。「先端半導体製造が40年ぶりに米国で復活できる」(バイデン大統領)という目論見が進行している。米国のみならず欧州でも23年に「CHIPS法」が制定された。欧州での半導体製造シェア増大に取り組むとしている。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 18:05 | 小倉正男の経済コラム
2024年03月20日

【小倉正男の経済コラム】「東濃」の山城 岩村城「女城主」おつやの方

■「東濃」は岩村城など山城のメッカ

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 中津川市、恵那市は岐阜県の「東濃」という地域にあたる。名古屋から中央本線で行ける。岐阜県の多くの人も中津川、恵那に行くには名古屋で乗り換えて、この路線を使っている。アクセスは案外なことに利便性がある。

 私が中津川、恵那に伺ったのは3度目だ。相当以前だが恵那山トンネル工事取材で、建設用トロッコで切羽の最先端まで行ったことがある。その次は“デフレに強い経済”ということで、2000年代前半に大変なブームだった「名古屋経済」の企業取材だ。そして今回は「東濃」の山城巡り――。「東濃」は岩村城、苗木城など山城のメッカ、全国でも山城でトップランクの人気を持つ地域である。

 観光経済では、岐阜県は全国で実績上位の存在である。何しろインバウンドを含めて絶大な人気を誇る高山市、白川郷、下呂温泉という「飛騨」を抱えている。

 それに比べると「東濃」は地味な存在であり、飛騨に圧倒的に差をつけられているのが現状だ。しかし、「岐阜」「中濃」「西濃」に比べると観光客を呼び込んでいる。山城もそうだが、城下町、宿場町など観光資源が手垢つかずに現存している。

 そのうえ先をにらむと「ゲームチェンジャー」といえば大げさだが、「東濃」の観光経済を劇的に変えるファクターがある。現在工事中のリニア新幹線だ。リニア新幹線は、「東濃」の山城の直下を通過する。東京から中津川、恵那までの時間は40分。「東濃」の観光経済を大きく変える可能性がある。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 07:33 | 小倉正男の経済コラム
2024年02月23日

【小倉正男の経済コラム】「シン・バブル」 株価は最高値更新、バブル期のデジャブも

■日経平均は過去最高値を一気に更新

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 2月22日、日経平均株価は史上最高値を更新した。日経平均は取引時間中に3万9156円に上昇し、終値は3万9098円となった。過去の最高値は1989年12月29日の終値3万8915円――。34年前のあのバブル真っ最中の出来事である。

 世のなか思いも寄らぬことが少なくないが、バブル期の最高値を一気に追い抜いている。きっかけは21日(日本時間22日早朝)の米国半導体大手エヌビディアの決算発表である。いまの日経平均は半導体関連企業がけん引している。エヌビディアの市場予想を上回る凄まじい好決算が日経平均に火をつけた格好である。

 「こんな景色を見るとは・・・」「株価は何故上がっているのか」「やはりバブルなのだろうか」――。
 1980年代後半の不動産バブル、そしてバブル崩壊後の「失われた30年」を生きてきた友人たちからは、様々な感慨が上がっている。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 06:39 | 小倉正男の経済コラム
2024年02月12日

【小倉正男の経済コラム】バブル後最高値 マイナス金利解除後発言の度に

■マイナス金利解除後発言で円安、株高

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 日銀がマイナス金利解除を発言するごとに円安、株高となっている。マイナス金利解除は、一応利上げだから円高、株安になるのが自然だが、市場はその逆に動いている。

 日銀・植田和男総裁は、「(マイナス金利解除後の金融政策について)緩和的な金融環境が当面続く可能性が高い」と発言している(2月9日・衆院予算委員会)。その前日の8日には内田真一副総裁が、「(マイナス金利解除後に)どんどん利上げしていくようなパス(経路)は考えにくく、緩和的な金融環境を維持していく」。

 マイナス金利解除の地ならしのつもりなのだろうが、利上げはするが大した利上げではないという趣旨を語っている。マイナス金利(政策金利マイナス0・1%)をゼロ金利にするが、その後は金融緩和を継続して様子を見るというのである。

 日銀総裁、副総裁の発言後、円は1ドル=149円台になり、株価はバブル崩壊後の高値更新圏を維持している。為替、株価、いわば市場は日銀のマイナス金利解除=利上げをほとんど完璧に見透かしている。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 20:31 | 小倉正男の経済コラム
2024年01月13日

【小倉正男の経済コラム】日銀「出口戦略」マイナス金利解除=正常化を塞ぐ壁

■植田総裁のマイナス金利解除(利上げ)への意向は強い

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 1月22日〜23日の日銀・金融政策決定会合は、マイナス金利解除(利上げ)に向かうには重要な日程になる。政策金利をマイナス0・1%からゼロ(0%)にするにしても、利上げには周到な地ならしを行うというのが通例である。

 仮に4月にマイナス金利解除を行うとすれば、1月金融政策決定会合を起点に何らかの地ならしの号砲を撃ち鳴らす可能性が高まる。利上げのスケジュールとしては、地ならしの時期に入ることになる。

 植田和男総裁は、“チャレンジング発言”もあったが、事後に「一般的な仕事に対する姿勢」を語ったものだと発言している。マイナス金利解除の示唆、利上げの地ならしを意図した発言ではないという釈明である。ただし、“チャレンジング発言”を素直に受け取れば、植田総裁がマイナス金利解除に取り組む意向・意思は強いとみられる。

■「金融政策決定会合」マイナス金利解除の議論

 昨年12月の日銀・金融政策決定会合でもマイナス金利解除の議論が行われている。
 「マイナス金利やイールドカーブ・コントロールの枠組み解除を検討するためには、賃金と物価の好循環を確認し、これをベースに、2%の目標の持続的・安定的な実現が見通せるようになる必要がある」

 新年の賃金上昇(賃上げ)動向を「見極めてから判断しても遅くはない」という意見である。これが多数派とみられる。植田和男総裁もこの立ち位置を表明している。賃上げ動向が見えるのは4月、マイナス金利解除はおそらくこの時期がターニングポイントになる。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 09:37 | 小倉正男の経済コラム
2023年12月23日

【小倉正男の経済コラム】マイナス金利解除 FRBの利下げを見守るしかない・・・

■金融政策決定会合は従来政策を維持

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 日銀の金融政策決定会合(12月18〜19日)は、従来の金融政策を何も変更しないという確認で終了した。

 事前に植田和男総裁の「チャレンジング発言」があり、「マイナス金利」など政策に変化が出る可能性が取り沙汰されていた。この発言で為替、株式、国債などの市場は乱高下、市場は何らかの変化が起こると“動揺”をみせていた。

 植田総裁は国会(参院財政金融委員会)で金融政策の所見についてこう発言している。
 「チャレンジングな状況が続いておりますが、年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になると思っている」(12月7日)。

 この発言は、日銀がマイナス金利の早期解除に転換したかという思惑を呼んだ。仮に利上げとなれば、日本としては17年ぶりである。アベノミクス以降は、利下げしか行っていない。日銀にとっては大きな政策転換にほかならない。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 07:52 | 小倉正男の経済コラム
2023年12月10日

【小倉正男の経済コラム】日銀 マイナス金利解除に向かうのか?

■11月雇用は堅調、利下げ時期はやや後退

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 米国の農業分野以外の雇用者は、11月19万9000人の増加となった。事前予想は18万人強であり、それを上回ったことになる。ただし、想定圏内の上振れという見方が一般的である。

 失業率は3・7%(前月3・9%)と小幅改善になっている。平均時給は前月比0・4%(前月0・2%、前年同月比4・0%)、こちらも前月比で小幅だが上昇している。労働需給の逼迫、インフレの一因となっている人手不足、賃金アップはピーク時に比べると緩和されている。だが、雇用は堅調を維持している格好だ。

 米国の景気(経済)は地力の強さをみせている。利上げは収束し、むしろ利下げの時期が議論されている。景気後退が顕著になれば利下げ時期が早まる。新年の景気下振れを懸念する見方は少なくないが、雇用を見る限りでは景気は急低下とはなっていない。

 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、利下げ時期の議論について「時期尚早」と牽制している。利上げが終了したとすれば、利下げが騒がれるのは仕方ない。だが、米国景気の堅調から利下げ時期は新年の半ばあたりにやや後退といわれている。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 17:25 | 小倉正男の経済コラム