■中国のバブル崩壊とアメリカの利上げ
中国・上海株式市場の暴落は収まったのだろうか。底を打ったということで東京市場も回復に転じたが、さほどというかあまりに信頼は置けないのではないか。
当の中国は、上海株式市場の暴落をもたらしたのは、アメリカが9月に利上げを目論んでいるためだとしている。原因はアメリカにあり、中国はその被害者だというわけである。
利上げ=インフレ退治ということでドル高になれば、ドルペッグをしているため元の通貨価値も実質的に上昇する。それは困る、中国がやりたいのはデフレ退治だと、人民元の切り下げを実施したのだということになる。その元の切り下げが、上海の株式市場に飛び火した。
皮肉なことに上海株式市場が落ち着くと、アメリカの利上げが頭を持ち上げる。「世界はアメリカの利上げに対応できる」、と。
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(08/30)【小倉正男の経済羅針盤】中国バブル崩壊とアメリカ利上げの行方
(08/24)【小倉正男の経済羅針盤】世界経済デフレ化=白馬の騎士は不在
(08/15)【小倉正男の経済羅針盤】『談話』は終わった、経済に戻れ
(07/10)【小倉正男の経済羅針盤】「リキャップCB」、問われるのは本質的なROE改善
(06/24)【小倉正男の経済羅針盤】初代・諸戸清六は情報で生き残った
(06/04)【小倉正男の経済羅針盤】「コーポレートガバナンス・コード」は持続的な経済成長のテコ
(05/27)【小倉正男の経済羅針盤】ROE――手のひらを返し走り出した日本企業
(05/06)【小倉正男の経済羅針盤】「ギリシャ・デフォルト」の不確実性
(04/21)【小倉正男の経済羅針盤】経済成長の終焉――中国の米国債売却の背景に「バブル崩壊」
(04/14)【小倉正男の経済羅針盤】ユーロ圏=再生には「辛抱強さ」が必要、どこかと違ってギリシャは大人の「ネゴシエートル」
(04/02)【小倉正男の経済羅針盤】アメリカの利上げと日本経済
(03/28)【小倉正男の経済羅針盤】そらぞらしさが漂う統一地方選挙
(03/17)【小倉正男の経済羅針盤】世界経済を覆うデフレと「出口戦略」
(02/23)【小倉正男の経済羅針盤】GDP底入れ=賃上げが景気の行方を決定
(02/01)【小倉正男の経済羅針盤】Jリートの新傾向&外人買い動向
(01/26)【小倉正男の経済羅針盤】「統合通貨ユーロ」というジレンマ
(01/15)【小倉正男の経済羅針盤】原油価格低落とニッポンの行方
(12/25)【小倉正男の経済羅針盤】サプライズ感が乏しい「地方創生」戦略
(12/13)【小倉正男の経済羅針盤】原油価格急落=「デフレの時代」に突入か
(11/02)【小倉正男の経済羅針盤】崩壊しないから怖い中国のバブル
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(03/28)【小倉正男の経済羅針盤】そらぞらしさが漂う統一地方選挙
(03/17)【小倉正男の経済羅針盤】世界経済を覆うデフレと「出口戦略」
(02/23)【小倉正男の経済羅針盤】GDP底入れ=賃上げが景気の行方を決定
(02/01)【小倉正男の経済羅針盤】Jリートの新傾向&外人買い動向
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(12/13)【小倉正男の経済羅針盤】原油価格急落=「デフレの時代」に突入か
(11/02)【小倉正男の経済羅針盤】崩壊しないから怖い中国のバブル
2015年08月30日
【小倉正男の経済羅針盤】中国バブル崩壊とアメリカ利上げの行方
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 15:54
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2015年08月24日
【小倉正男の経済羅針盤】世界経済デフレ化=白馬の騎士は不在
■共産党独裁化で歴史上初の「恐慌」
夏も終わりである。まだ暑いが、盛りは過ぎた。
中国も誰もがわかっていることだがとりあえず終わった。不動産・建設、そして株式もブーム終焉にほかならない。中国発の「恐慌」であり、これは共産党独裁化での歴史上初の「恐慌」ということになる。
中国の巨大な需要にくっついていた、あるいは依存していたといったらよいのか、そうした諸国は大変である。ロシア、韓国、南米諸国、アジア諸国など・・・。韓国など右往左往しただけであり沈没状態に陥ることになる。
中国は、リーマンショックの世界経済危機時に、国内インフラ投資など巨大な需要で世界経済を下支える役割を果たした。いわば、世界経済の「白馬の騎士」として大きな貢献を演じたわけである。中国はいま「恐慌」に直面しているが、これは中国経済が、ある意味「一丁前」になったことを意味する。
中国に依存してきた、あるいは依存しようとしてきた諸国が多いことでも、中国経済が「一丁前」であることがわかる。日本も輸出・輸入に加えて「インバウンド」ということで爆買い需要などに依存してきた。
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夏も終わりである。まだ暑いが、盛りは過ぎた。
中国も誰もがわかっていることだがとりあえず終わった。不動産・建設、そして株式もブーム終焉にほかならない。中国発の「恐慌」であり、これは共産党独裁化での歴史上初の「恐慌」ということになる。
中国の巨大な需要にくっついていた、あるいは依存していたといったらよいのか、そうした諸国は大変である。ロシア、韓国、南米諸国、アジア諸国など・・・。韓国など右往左往しただけであり沈没状態に陥ることになる。
中国は、リーマンショックの世界経済危機時に、国内インフラ投資など巨大な需要で世界経済を下支える役割を果たした。いわば、世界経済の「白馬の騎士」として大きな貢献を演じたわけである。中国はいま「恐慌」に直面しているが、これは中国経済が、ある意味「一丁前」になったことを意味する。
中国に依存してきた、あるいは依存しようとしてきた諸国が多いことでも、中国経済が「一丁前」であることがわかる。日本も輸出・輸入に加えて「インバウンド」ということで爆買い需要などに依存してきた。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:06
| 小倉正男の経済コラム
2015年08月15日
【小倉正男の経済羅針盤】『談話』は終わった、経済に戻れ
■「談話」=「戦前」「戦後」の呪縛との格闘
なんでもそうだが、批評や批判はたやすいものだが、行うのは大変なことである。
安倍晋三総理だが、政治家なのだから政治に走ることになる。経済をやっているぶんには大きな異論は抱えない。しかし、「戦前」、「戦後」を相手にして政治に走れば、これは大変なことになる。
私個人のことで恐縮だが戦後教育で育ってきたのだから、映画でも小説でも「戦前」の否定から入っている。「戦後」は大枠それで時が流れてきた。無垢というか粗雑ともいえる「戦前」賛美にはついていけない面がある。
だが、安倍総理ともなれば、「戦後70年談話」だ、その背景にある「歴史認識」だ、ということで心身を酷く痛めかねないことになる。
10年ごとに「談話」を出すこと自体が、「戦前」、「戦後」の呪縛のようなものだ。その「談話」を出すというのだから、「戦前」、「戦後」をずしりと背負ってしまうことになる。
総理としては、それが嫌なのに「談話」という呪縛と格闘せざるをえない・・・。
■「政治」で支持率を落したが、「経済」では結果を出した
「アベノミクス」つまり安倍総理の経済については、それこそ様々な批評、批判はあるだろうが、トータルとしては結果を出したといえるのではないか。
とくに、「スチュワードシップ・コード」「コーポレートガバナンス・コード」といったマーケット改革を行ったことは何よりも大きい。
この二つのコード(取り決め)は、デファクトな改革だが、後戻りのできないものだ。これにより日本資本主義は「変革期」に入ったというべきである。
安倍総理の後継者ははたして誰か――。影が薄いどころか、ほとんど影が見えない。「政治」では支持率を落しているが、経済では支持率をさほど落していないのではないか。
むしろ企業人の多くが、安倍総理なき日本経済を心配しているのが現状といえるに違いない。
■安倍総理の後継は影すら見えない・・・
後継などつくるものではなく、自然に生まれてくるものだろうが、現状はその影すらない。それもやや恐ろしい話だが、現実でしかない。
「談話」はもう終わった。「戦前」「戦後」もこのへんでよいではないか――。
「スチュワードシップ・コード」、「コーポレートガバナンス・コード」などマーケット改革で、大局的にはアベノミクスはその使命を果たした、と見ることもできないではない。
しかし、時代はまだ求めているといってよいように見える。
「談話」は終わったが、日本経済の改革の仕上げは、まだまだこれからでしかない。
後継の影が見えない以上は、時代や国民がもういいよ、というまで経済=デフレ脱却に取り組むべきではないか。
(経済ジャーナリスト。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数。東洋経済新報社で編集局記者・編集者、金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。)
なんでもそうだが、批評や批判はたやすいものだが、行うのは大変なことである。
安倍晋三総理だが、政治家なのだから政治に走ることになる。経済をやっているぶんには大きな異論は抱えない。しかし、「戦前」、「戦後」を相手にして政治に走れば、これは大変なことになる。
私個人のことで恐縮だが戦後教育で育ってきたのだから、映画でも小説でも「戦前」の否定から入っている。「戦後」は大枠それで時が流れてきた。無垢というか粗雑ともいえる「戦前」賛美にはついていけない面がある。
だが、安倍総理ともなれば、「戦後70年談話」だ、その背景にある「歴史認識」だ、ということで心身を酷く痛めかねないことになる。
10年ごとに「談話」を出すこと自体が、「戦前」、「戦後」の呪縛のようなものだ。その「談話」を出すというのだから、「戦前」、「戦後」をずしりと背負ってしまうことになる。
総理としては、それが嫌なのに「談話」という呪縛と格闘せざるをえない・・・。
■「政治」で支持率を落したが、「経済」では結果を出した
「アベノミクス」つまり安倍総理の経済については、それこそ様々な批評、批判はあるだろうが、トータルとしては結果を出したといえるのではないか。
とくに、「スチュワードシップ・コード」「コーポレートガバナンス・コード」といったマーケット改革を行ったことは何よりも大きい。
この二つのコード(取り決め)は、デファクトな改革だが、後戻りのできないものだ。これにより日本資本主義は「変革期」に入ったというべきである。
安倍総理の後継者ははたして誰か――。影が薄いどころか、ほとんど影が見えない。「政治」では支持率を落しているが、経済では支持率をさほど落していないのではないか。
むしろ企業人の多くが、安倍総理なき日本経済を心配しているのが現状といえるに違いない。
■安倍総理の後継は影すら見えない・・・
後継などつくるものではなく、自然に生まれてくるものだろうが、現状はその影すらない。それもやや恐ろしい話だが、現実でしかない。
「談話」はもう終わった。「戦前」「戦後」もこのへんでよいではないか――。
「スチュワードシップ・コード」、「コーポレートガバナンス・コード」などマーケット改革で、大局的にはアベノミクスはその使命を果たした、と見ることもできないではない。
しかし、時代はまだ求めているといってよいように見える。
「談話」は終わったが、日本経済の改革の仕上げは、まだまだこれからでしかない。
後継の影が見えない以上は、時代や国民がもういいよ、というまで経済=デフレ脱却に取り組むべきではないか。
(経済ジャーナリスト。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数。東洋経済新報社で編集局記者・編集者、金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:57
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2015年07月10日
【小倉正男の経済羅針盤】「リキャップCB」、問われるのは本質的なROE改善
■「スチュワードシップ・コード」がもたらした変革
歴史もそれなりに築いてきたある名門企業――。アベノミクスで他社の株価が上昇するなか、その企業の株価は上がらない。
利益準備金など内部留保はタップリ、なんと利益準備金はその会社の時価総額を上回っている。
いわば、「金持ち会社」だが、設備投資、開発投資、M&A、賃上げ、自社株買い、増配などはやっていない。おカネはあるが使っていない。資本を投資していない。だから、内部留保は増えるばかり――。
日本の1部、2部の上場企業のなかには、こうした企業が少なくない。おカネはあり余って、株主資本・自己資本のみが肥大化しているから、ROE(自己資本利益率)は2〜3%と低い。
株価が安いから企業買収にさらされそうだが、株式持合いで「防御壁」があるからなんとか平穏に過ごしてきている。
しかし、ROEの低い企業の株式持合いは、急速に解消される動きが表面化しそうである。株式持合いでは、資本効率が悪い。企業にとっても、おカネを寝かして持ち合っている余裕がなくなっている。持ち合っているのでは、自社のROEが低いままで資本効率は一向に改善されない。
そのうえ生保、信託銀行といった機関投資家も、ROEが低い企業への投資は手控えるとしている。金融庁がつくった「スチュワードシップ・コード」は、ニッポン株式会社を根底から変えようとしている。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 09:35
| 小倉正男の経済コラム
2015年06月24日
【小倉正男の経済羅針盤】初代・諸戸清六は情報で生き残った
■江戸期の「旗振り通信」=大阪から桑名まで10分で情報を伝達
「旗振り通信」という通信システムをご存知だろうか。
江戸中期から明治期に使われていた大型の手旗信号である。大阪・堂島の米相場をほかの地域に伝える。ほかの地域の米相場を大阪に伝える――。
商売・ビジネスには情報が付きものである。この「旗振り通信」のスピードが凄い。大阪から京都が4分、桑名が10分、岡山が15分といったスピードで情報が伝達された。
「旗振り通信」は、米相場、つまりは相場による商売・カネ儲けで発達したものだ。おカネの盛衰、勝ち負けがかかっているのだから、スピードと同時に正確さが求められる。情報がなければ売り買いはできない。まして勝てない。
幕末には英、仏などの軍艦(黒船)が現れた時に「旗振り通信」で情報が各地に伝達されたとされている。
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「旗振り通信」という通信システムをご存知だろうか。
江戸中期から明治期に使われていた大型の手旗信号である。大阪・堂島の米相場をほかの地域に伝える。ほかの地域の米相場を大阪に伝える――。
商売・ビジネスには情報が付きものである。この「旗振り通信」のスピードが凄い。大阪から京都が4分、桑名が10分、岡山が15分といったスピードで情報が伝達された。
「旗振り通信」は、米相場、つまりは相場による商売・カネ儲けで発達したものだ。おカネの盛衰、勝ち負けがかかっているのだから、スピードと同時に正確さが求められる。情報がなければ売り買いはできない。まして勝てない。
幕末には英、仏などの軍艦(黒船)が現れた時に「旗振り通信」で情報が各地に伝達されたとされている。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 09:59
| 小倉正男の経済コラム
2015年06月04日
【小倉正男の経済羅針盤】「コーポレートガバナンス・コード」は持続的な経済成長のテコ
■「コーポレートガバナンス・コード」に秘められた狙い
「コーポレートガバナンス・コード」――この6月1日から施行されている。推進役は金融庁、東京証券取引所である。株主総会シーズンに先駆けて導入された。
おそらく、上場企業各社の株主総会で、このタームが飛び交うことになると想定される。
タームが飛び交うことはそれほど重要なことではない――。法的な拘束力はない。
だが、マーケットの「デファクト」あるいは「デファクトスタンダード」としての拘束力はある・・・。
おそらく、このデファクトな拘束力は、比重を極限まで高めることになる可能性を持っている。企業としては、無視できないどころか、拘束されることを覚悟する必要がある。
アベノミクス――、いまはあまり取りざたされることはない。だが、この「コーポレートガバナンス・コード」導入は、アベノミクスの一環とみるべきである。
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「コーポレートガバナンス・コード」――この6月1日から施行されている。推進役は金融庁、東京証券取引所である。株主総会シーズンに先駆けて導入された。
おそらく、上場企業各社の株主総会で、このタームが飛び交うことになると想定される。
タームが飛び交うことはそれほど重要なことではない――。法的な拘束力はない。
だが、マーケットの「デファクト」あるいは「デファクトスタンダード」としての拘束力はある・・・。
おそらく、このデファクトな拘束力は、比重を極限まで高めることになる可能性を持っている。企業としては、無視できないどころか、拘束されることを覚悟する必要がある。
アベノミクス――、いまはあまり取りざたされることはない。だが、この「コーポレートガバナンス・コード」導入は、アベノミクスの一環とみるべきである。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:22
| 小倉正男の経済コラム
2015年05月27日
【小倉正男の経済羅針盤】ROE――手のひらを返し走り出した日本企業
■日本企業の3社に1社がROE10%超という変化
ROE(自己資本利益率)――「リターン・オン・エクイティ」、資本効率を示す指標である。いまや、このROEが経営指標としてセンターに位置するようになっている。
かつては日本企業のROEは5%以下が一般的であり、低いROEが特徴だった。ちょっと以前まではROE5%を確保していれば、日本企業としては儲かっているほうであり、「資本効率がよい」とされてきた。
アメリカ企業などはROEが10%以上というのが当たり前であり、対照的というか、まったくベクトル(方向性)が違っていた。
日本企業サイドからは、アメリカ企業は利益を出し過ぎており、「短期的経営」に走っているという見方が流されていたものだ。
ところが、日本の一部上場企業の3社に1社がすでにROE10%を超えているというのである(2014年度・日本経済新聞)。手のひらを返し、走り出したとはこのことではないか。
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ROE(自己資本利益率)――「リターン・オン・エクイティ」、資本効率を示す指標である。いまや、このROEが経営指標としてセンターに位置するようになっている。
かつては日本企業のROEは5%以下が一般的であり、低いROEが特徴だった。ちょっと以前まではROE5%を確保していれば、日本企業としては儲かっているほうであり、「資本効率がよい」とされてきた。
アメリカ企業などはROEが10%以上というのが当たり前であり、対照的というか、まったくベクトル(方向性)が違っていた。
日本企業サイドからは、アメリカ企業は利益を出し過ぎており、「短期的経営」に走っているという見方が流されていたものだ。
ところが、日本の一部上場企業の3社に1社がすでにROE10%を超えているというのである(2014年度・日本経済新聞)。手のひらを返し、走り出したとはこのことではないか。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:23
| 小倉正男の経済コラム
2015年05月06日
【小倉正男の経済羅針盤】「ギリシャ・デフォルト」の不確実性
■ギリシャと債権団――捗らない交渉
ギリシャと国際債権団の交渉はなんとも捗っていない。ギリシャは債権団が納得する改革案の提出を果たせていない。
債権団としては、年金削減、レイオフなど労働改革を求めている。だが、ギリシャはそれを頑として拒否している。債権団は、それではギリシャへの金融支援を行えない。
ギリシャが、デフォルト(債務不履行)の一歩手前にあるのは周知のことだ。デフォルトを最後の「人質」にしての交渉だが、交渉がまとまらなければ最悪の事態となる。
ギリシャにとって、「優遇された年金」、「過剰なうえにしかも高給な公務員」といった国家体質は、受益層には既得権益そのものといって間違いない。これはギリシャとしては「国体護持」みたいなことかもしれない。
「国体護持」か、デフォルトか――。デフォルトになれば、「国体護持」もクソもないのだが・・・。ともあれ、ギリシャの危険な岐路が刻々と迫っている。
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ギリシャと国際債権団の交渉はなんとも捗っていない。ギリシャは債権団が納得する改革案の提出を果たせていない。
債権団としては、年金削減、レイオフなど労働改革を求めている。だが、ギリシャはそれを頑として拒否している。債権団は、それではギリシャへの金融支援を行えない。
ギリシャが、デフォルト(債務不履行)の一歩手前にあるのは周知のことだ。デフォルトを最後の「人質」にしての交渉だが、交渉がまとまらなければ最悪の事態となる。
ギリシャにとって、「優遇された年金」、「過剰なうえにしかも高給な公務員」といった国家体質は、受益層には既得権益そのものといって間違いない。これはギリシャとしては「国体護持」みたいなことかもしれない。
「国体護持」か、デフォルトか――。デフォルトになれば、「国体護持」もクソもないのだが・・・。ともあれ、ギリシャの危険な岐路が刻々と迫っている。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:01
| 小倉正男の経済コラム
2015年04月21日
【小倉正男の経済羅針盤】経済成長の終焉――中国の米国債売却の背景に「バブル崩壊」
■中国がアメリカ国債を減らして保有額トップの座を降りた原因とは
アメリカ国債にちょっとした異変が起こっている。
中国が、アメリカ国債では最大の買い手として君臨していたが、その座から降りた。日本が再び買い手としてトップになった。
このほどアメリカ財務省が国際資本統計で、今年2月のアメリカ国債の国別保有額を発表した。
それによると日本のアメリカ国債保有額は1兆2244億ドル、中国のそれは1兆2237億ドル――。ほんのわずかだが、日本が中国をアメリカ国債の保有額で抜いた。
メディアは、「日本が中国を追い抜いてアメリカ国債保有で世界一になった」、と報道している。メディアは、「世界一」というフレーズが付くと、無条件で見出しに使うところがある。
それはともかく識者からは、アメリカには「国際緊急経済権限法」があり、それが中国のアメリカ国債保有を縮小に向かわせているのではないか、という見方が出されている。
アメリカは、安全保障面で危機に直面したら、大統領が保有国のアメリカ国債を無効にできる――。一種の部分的な「デフォルト(債務不履行)」だが、その事態を中国が嫌って、アメリカ国債を売っているという推測である。
■中国はリーマンショックの2008年にアメリカ国債保有で「世界一」に
中国が、アメリカ国債保有額で日本を追い抜いたのは2008年のことだ。いわゆるリーマンショックが勃発した時期で、世界経済における中国のプレゼンス(存在感)が一挙に高まった時期である。
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アメリカ国債にちょっとした異変が起こっている。
中国が、アメリカ国債では最大の買い手として君臨していたが、その座から降りた。日本が再び買い手としてトップになった。
このほどアメリカ財務省が国際資本統計で、今年2月のアメリカ国債の国別保有額を発表した。
それによると日本のアメリカ国債保有額は1兆2244億ドル、中国のそれは1兆2237億ドル――。ほんのわずかだが、日本が中国をアメリカ国債の保有額で抜いた。
メディアは、「日本が中国を追い抜いてアメリカ国債保有で世界一になった」、と報道している。メディアは、「世界一」というフレーズが付くと、無条件で見出しに使うところがある。
それはともかく識者からは、アメリカには「国際緊急経済権限法」があり、それが中国のアメリカ国債保有を縮小に向かわせているのではないか、という見方が出されている。
アメリカは、安全保障面で危機に直面したら、大統領が保有国のアメリカ国債を無効にできる――。一種の部分的な「デフォルト(債務不履行)」だが、その事態を中国が嫌って、アメリカ国債を売っているという推測である。
■中国はリーマンショックの2008年にアメリカ国債保有で「世界一」に
中国が、アメリカ国債保有額で日本を追い抜いたのは2008年のことだ。いわゆるリーマンショックが勃発した時期で、世界経済における中国のプレゼンス(存在感)が一挙に高まった時期である。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 11:35
| 小倉正男の経済コラム
2015年04月14日
【小倉正男の経済羅針盤】ユーロ圏=再生には「辛抱強さ」が必要、どこかと違ってギリシャは大人の「ネゴシエートル」
ラチがあかないとはEU(欧州連合)=ユーロ圏経済におけるギリシャ問題である。ギリシャは、債務返済などが迫ると「流動性が不足している」、つまり、「ないものはない」と資金不足を逆手に取って支援を訴える。これがEUには揺さぶりになる。EUは、財政緊縮策など経済再生の筋道を示せとギリシャに要請する。
EUとしても、ギリシャを破綻させるわけにはいかない。資金を支援して、とりあえず債務返済させて「先送り」を図る。それを繰り返している。
ギリシャはどこかの国の隣国と違って、「ネゴシエートル」としてはかなり優秀な部類といえるかもしれない。よくいえば「大人」、交渉と落し所をわきまえている面もあるようだ。
ドイツに財政緊縮など構造改善策を詰め寄られると、「ナチスドイツによる損害賠償」「ロシアに接近し支援を要請」など、筋の異なる問題を持ち出したり動いてみたり・・・。
「それとこれは違う問題ではないか」、とドイツが苦虫を噛み潰しても問題をバラけさせる。しかし、収めるところは収める――、EUから離脱・脱退するなどといった破滅的な行動はとらないとみられる。
ギリシャにしてもEUにしても、いまはそれしかやり様がないというところか。
■ユーロ圏からのギリシャの「スムーズな離脱」とその現実
ドイツのガブリエル経済相など、「わが国は(ギリシャが)立ち直り、私の個人的な強い見解としてはユーロ圏にとどまるよう支援する用意がある。――だが、どうやって実現できるのか、なお私には明確ではない」と発言している。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:43
| 小倉正男の経済コラム
2015年04月02日
【小倉正男の経済羅針盤】アメリカの利上げと日本経済
■利上げ後は「金利高・為替高・株式高」に移行か
アメリカは雇用統計の発表が接近していることで株価が過敏な動きをみせている。
先月は、雇用統計が発表されると株価が300ドル超ほど低下した。雇用者数が大きく増加し、失業率が低下したからである。
雇用者数が増加し失業者が減るのは、経済にとって本来は理想的なことである。
だが、人手不足から賃金上昇などが懸念されることになる。利上げが早まるという見方が台頭する。アトランタ連銀総裁など金融筋からは「ゼロ金利政策の解除」といった声も流される。株価は神経質にそれに反応している。
雇用統計が発表されるということで株価が過敏に反応しているのだから、マーケットは実のところ雇用の実態をかなり好調と捉えているに違いない。
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アメリカは雇用統計の発表が接近していることで株価が過敏な動きをみせている。
先月は、雇用統計が発表されると株価が300ドル超ほど低下した。雇用者数が大きく増加し、失業率が低下したからである。
雇用者数が増加し失業者が減るのは、経済にとって本来は理想的なことである。
だが、人手不足から賃金上昇などが懸念されることになる。利上げが早まるという見方が台頭する。アトランタ連銀総裁など金融筋からは「ゼロ金利政策の解除」といった声も流される。株価は神経質にそれに反応している。
雇用統計が発表されるということで株価が過敏に反応しているのだから、マーケットは実のところ雇用の実態をかなり好調と捉えているに違いない。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:41
| 小倉正男の経済コラム
2015年03月28日
【小倉正男の経済羅針盤】そらぞらしさが漂う統一地方選挙
■各党スローガンのしらじらしさ
『地方こそ、成長の主役。』 『生活起点 地域起点』 『人が生きる、地方創生。』 『身を切る改革、身のある改革。』――。
なんともしらじらしい言葉が並んでいる。あるいは、そらぞらしいというべきか。これらは統一地方選挙の各党のスローガンである。
それぞれ自民党、民主党、公明党、維新の党のスローガンだ。
別に本気で政策を考えたわけではない――。広告代理店大手あたりに頼んでつくったのか。そんな感じが伝わってくるフレーズである。
スペースの関係上、「生活の党と山本太郎となかまたち」などのスローガンは割愛させてもらった。
いずれにせよ劇団(政党)がいい加減な演目でお茶を濁している。役者(知事・地方議員の各候補)も政策が無策――おおかた演技は期待できない。
これではお客(投票者)が劇場に足を運ばない。
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『地方こそ、成長の主役。』 『生活起点 地域起点』 『人が生きる、地方創生。』 『身を切る改革、身のある改革。』――。
なんともしらじらしい言葉が並んでいる。あるいは、そらぞらしいというべきか。これらは統一地方選挙の各党のスローガンである。
それぞれ自民党、民主党、公明党、維新の党のスローガンだ。
別に本気で政策を考えたわけではない――。広告代理店大手あたりに頼んでつくったのか。そんな感じが伝わってくるフレーズである。
スペースの関係上、「生活の党と山本太郎となかまたち」などのスローガンは割愛させてもらった。
いずれにせよ劇団(政党)がいい加減な演目でお茶を濁している。役者(知事・地方議員の各候補)も政策が無策――おおかた演技は期待できない。
これではお客(投票者)が劇場に足を運ばない。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 19:50
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2015年03月17日
【小倉正男の経済羅針盤】世界経済を覆うデフレと「出口戦略」
■薄氷の上に立つ世界経済
いま世界は束の間の平和といったところか。あるいは平和といっても、薄氷の上のそれといえるかもしれない。
EU(欧州連合)は、ギリシャ財政危機をとりあえず回避するため4ヶ月の金融支援継続を行うことになった。
ただし、ギリシャの財政緊縮化を厳格に求めるドイツなどと、そのスピードを緩めてくれというギリシャとの根本的な対立が解決していない。
ギリシャとしては、財政緊縮化をいたずらに続けるだけでは「デフレ地獄」から抜け出せない――。EUの根底で、危機の火種は依然としてくすぶっている。
中国は、不動産・住宅バブルの崩壊が表面化――。高成長経済の軌道を描き続けるのは困難になっている。経済の高成長が止まれば、「シャドーバンキング」などの破綻が懸念されることになりかねない。
日本は日本で、デフレをいまだ脱しきれていない。
アベノミクスによって2度の金融量的質的緩和がなされた。円安、そして2014年9月までの1バーレル=110ドルといった原油価格高騰、と「インフレ誘発要因」の揃い踏みとなった。だが、それでも「デフレ克服」にはいたらず、インフレの気配はほとんど見えない。
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いま世界は束の間の平和といったところか。あるいは平和といっても、薄氷の上のそれといえるかもしれない。
EU(欧州連合)は、ギリシャ財政危機をとりあえず回避するため4ヶ月の金融支援継続を行うことになった。
ただし、ギリシャの財政緊縮化を厳格に求めるドイツなどと、そのスピードを緩めてくれというギリシャとの根本的な対立が解決していない。
ギリシャとしては、財政緊縮化をいたずらに続けるだけでは「デフレ地獄」から抜け出せない――。EUの根底で、危機の火種は依然としてくすぶっている。
中国は、不動産・住宅バブルの崩壊が表面化――。高成長経済の軌道を描き続けるのは困難になっている。経済の高成長が止まれば、「シャドーバンキング」などの破綻が懸念されることになりかねない。
日本は日本で、デフレをいまだ脱しきれていない。
アベノミクスによって2度の金融量的質的緩和がなされた。円安、そして2014年9月までの1バーレル=110ドルといった原油価格高騰、と「インフレ誘発要因」の揃い踏みとなった。だが、それでも「デフレ克服」にはいたらず、インフレの気配はほとんど見えない。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 11:13
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2015年02月23日
【小倉正男の経済羅針盤】GDP底入れ=賃上げが景気の行方を決定
■個人消費0.3%増、消費税再増税は見送って正解
2014年10〜12月のGDP(国内総生産)速報値は、実質で前期比0.6%増(年率で2.2%増)。2014年4月の消費税増税後では初めてのプラス成長、3四半期ぶりプラス成長転換である。
年率2.2%増の成長率は、市場予測を下回ったものだった。ただ、まがりなりにも消費税増税の影響を克服して景気の「底入れ」を確認した格好である。
だが、力強さはないな――、というのが率直な印象だ。
昨年末、消費税10%への再増税を見送った判断は正解だったのではないか。
もっとも「力強さ」を求めるのは無理があるかもしれない。
GDPの58%を占める個人消費は0.3%増、前期の2014年7〜9月の0.3%増と同様の成長率である。電車のなかで見ていても、かなりの年齢層の人たちを含めて大半がスマホ、タブレットPCなどを使っている――。この「通信費」だけでも大変な消費である。
人々が消費をしていないわけではない。増税々にもかかわらず、ほしいモノ・サービスはなんとか限界までおカネを使っている。
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2014年10〜12月のGDP(国内総生産)速報値は、実質で前期比0.6%増(年率で2.2%増)。2014年4月の消費税増税後では初めてのプラス成長、3四半期ぶりプラス成長転換である。
年率2.2%増の成長率は、市場予測を下回ったものだった。ただ、まがりなりにも消費税増税の影響を克服して景気の「底入れ」を確認した格好である。
だが、力強さはないな――、というのが率直な印象だ。
昨年末、消費税10%への再増税を見送った判断は正解だったのではないか。
もっとも「力強さ」を求めるのは無理があるかもしれない。
GDPの58%を占める個人消費は0.3%増、前期の2014年7〜9月の0.3%増と同様の成長率である。電車のなかで見ていても、かなりの年齢層の人たちを含めて大半がスマホ、タブレットPCなどを使っている――。この「通信費」だけでも大変な消費である。
人々が消費をしていないわけではない。増税々にもかかわらず、ほしいモノ・サービスはなんとか限界までおカネを使っている。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:10
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2015年02月01日
【小倉正男の経済羅針盤】Jリートの新傾向&外人買い動向
■「外人買い」がJリートの市場認知度を高めた
この半年のことなのだが、Jリート(上場不動産投資信託)が存在感を高めている。
昨年の今頃、つまりたった1年前は――、Jリートは配当(分配金)=利回りは高い。だが、株式としての価格の上昇・下落はあまりないといったジャンルの銘柄群だった――。法人・機関投資家が買いの主力を形成し、ポートフォリオとして投資をしているといった面が強かった。
だが、この半年で様相はかなり違っている。
Jリート銘柄は上昇を続け、人気銘柄群になっている。Jリートは、マーケットの認知を得た格好に変わっている――。
「日銀バズーカ」(金融量的質的緩和)第一弾が発表されたのが2013年4月、外人はJリートを大量に買っている。個人、法人・機関投資家は売りに廻った。
しかし、外人はその後には、Jリートの売り手に廻った。法人・機関投資家が買い手になるという構造になっていた。
ところが外人はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資金運用改革の兆しが見えた2014年央にはJリートの買い手に方向転換。Jリートの上昇第一波を牽引した――。
2014年10月末の「日銀バズーカ」第二弾でも外人は買いに走った。個人は最大の売り手になり、法人・機関投資家も売りに廻った。これが上昇第二波――。
Jリートが、市場で認知され、Jリート銘柄が値を上昇させ人気化したのはついこの半年――。ファクターとしては、「外人買い」にほかならない。
■人気化=株価上昇で現状のJリート利回りは低下しているが・・・
さて今年のJリートの動向はどうだろうか。
Jリートの専門ポータルサイト(ジャパンリートドットコム)を運営するジャパンリートの東間大・代表取締役は、「今年のJリートは多様化が進む」としている。
判定はきわめて難しい。だが、ごく一般論でいうと、Jリートの現状は、人気化しやや買われ過ぎているというのが大方の見方だ。人気化の結果、株価が上昇して、利回りは現状3%台を割り込んでいるところが少なくない。(昨年のいま頃は、人気薄で利回りは3%超だった)
利回り3%が絶対的な「基準」とはいえないにしても、一般的にはひとつの「指標」である。オフィスビル関連のJリート有力人気銘柄、すなわち日本ビルファンド投資法人、ジャパンリアルエステイト投資法人、森ヒルズリート投資法人などが軒並みに利回り2・5〜2・8%内外になっている。
Jリート各社としても、東京都心部の優良オフィスビルは限定されており、なかなか買えない状況になっている。東京都心部から離れて首都圏、地方の有力オフィスビルを買う傾向が出てきている――。
Jリート各社でみても、オフィスビル稼働率は高水準だが、賃料(平均値)は地方オフィスビルの増加など低下してきている。
ジャパンリートの東間大・代表取締役は、「Jリートでは、オフィスビルの購入が地方へという流れが始まっている。またオフィスビル、住居関連だけではなく、新たにヘルスケア、エネルギー、ホテルなどにJリート銘柄群が広がる見込みだ。今年の新規上場は7社内外の予想。全体として多様化の流れが出る――」と語っている。
■原油安によるデフレ懸念と3度目の「日銀バズーカ」期待の綱引き
今年は、為替は円安として、原油価格は昨年のピークから安値ゾーンに急低下――。原油低落から、貿易収支、経常収支などは最悪だった昨年からは改善・底入れする見込みだ。
ただし、原油低落は、デフレ懸念を生む。だが、そのデフレ懸念から日銀バズーカ、すなわち第三弾目の金融量的質的緩和が行われるという可能性もないとはいいきれない。年初から大荒れに見舞われている市場からはその要望が強まるばかりである。
「デフレ克服から3度目の金融量的質的緩和がもし実施されることになれば、外人はまた買い手に廻るのではないか、とみてよいと推測している」(東間代表)。ともあれ、Jリートの先行きだがなかなか読みきれない――。
東間代表としては、直近のJリートの人気化傾向もあって、自社サイトを活用して個人投資家層の拡大・啓蒙を目指して、質の高い情報を配信していく方針だ。
Jリートを組み入れた「上場投資信託」(ETF)銘柄情報を配信、あるいはJリートに関連するキュレーションサービス(ネット情報の収集・提供)、あるいは独自の情報コンテンツ提供などを開始する。
先が見えない今はまさに「不確実性」の時代、情報が質量両面で足りないことだけは確かである――。
(経済ジャーナリスト。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数)
この半年のことなのだが、Jリート(上場不動産投資信託)が存在感を高めている。
昨年の今頃、つまりたった1年前は――、Jリートは配当(分配金)=利回りは高い。だが、株式としての価格の上昇・下落はあまりないといったジャンルの銘柄群だった――。法人・機関投資家が買いの主力を形成し、ポートフォリオとして投資をしているといった面が強かった。
だが、この半年で様相はかなり違っている。
Jリート銘柄は上昇を続け、人気銘柄群になっている。Jリートは、マーケットの認知を得た格好に変わっている――。
「日銀バズーカ」(金融量的質的緩和)第一弾が発表されたのが2013年4月、外人はJリートを大量に買っている。個人、法人・機関投資家は売りに廻った。
しかし、外人はその後には、Jリートの売り手に廻った。法人・機関投資家が買い手になるという構造になっていた。
ところが外人はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資金運用改革の兆しが見えた2014年央にはJリートの買い手に方向転換。Jリートの上昇第一波を牽引した――。
2014年10月末の「日銀バズーカ」第二弾でも外人は買いに走った。個人は最大の売り手になり、法人・機関投資家も売りに廻った。これが上昇第二波――。
Jリートが、市場で認知され、Jリート銘柄が値を上昇させ人気化したのはついこの半年――。ファクターとしては、「外人買い」にほかならない。
■人気化=株価上昇で現状のJリート利回りは低下しているが・・・
さて今年のJリートの動向はどうだろうか。
Jリートの専門ポータルサイト(ジャパンリートドットコム)を運営するジャパンリートの東間大・代表取締役は、「今年のJリートは多様化が進む」としている。
判定はきわめて難しい。だが、ごく一般論でいうと、Jリートの現状は、人気化しやや買われ過ぎているというのが大方の見方だ。人気化の結果、株価が上昇して、利回りは現状3%台を割り込んでいるところが少なくない。(昨年のいま頃は、人気薄で利回りは3%超だった)
利回り3%が絶対的な「基準」とはいえないにしても、一般的にはひとつの「指標」である。オフィスビル関連のJリート有力人気銘柄、すなわち日本ビルファンド投資法人、ジャパンリアルエステイト投資法人、森ヒルズリート投資法人などが軒並みに利回り2・5〜2・8%内外になっている。
Jリート各社としても、東京都心部の優良オフィスビルは限定されており、なかなか買えない状況になっている。東京都心部から離れて首都圏、地方の有力オフィスビルを買う傾向が出てきている――。
Jリート各社でみても、オフィスビル稼働率は高水準だが、賃料(平均値)は地方オフィスビルの増加など低下してきている。
ジャパンリートの東間大・代表取締役は、「Jリートでは、オフィスビルの購入が地方へという流れが始まっている。またオフィスビル、住居関連だけではなく、新たにヘルスケア、エネルギー、ホテルなどにJリート銘柄群が広がる見込みだ。今年の新規上場は7社内外の予想。全体として多様化の流れが出る――」と語っている。
■原油安によるデフレ懸念と3度目の「日銀バズーカ」期待の綱引き
今年は、為替は円安として、原油価格は昨年のピークから安値ゾーンに急低下――。原油低落から、貿易収支、経常収支などは最悪だった昨年からは改善・底入れする見込みだ。
ただし、原油低落は、デフレ懸念を生む。だが、そのデフレ懸念から日銀バズーカ、すなわち第三弾目の金融量的質的緩和が行われるという可能性もないとはいいきれない。年初から大荒れに見舞われている市場からはその要望が強まるばかりである。
「デフレ克服から3度目の金融量的質的緩和がもし実施されることになれば、外人はまた買い手に廻るのではないか、とみてよいと推測している」(東間代表)。ともあれ、Jリートの先行きだがなかなか読みきれない――。
東間代表としては、直近のJリートの人気化傾向もあって、自社サイトを活用して個人投資家層の拡大・啓蒙を目指して、質の高い情報を配信していく方針だ。
Jリートを組み入れた「上場投資信託」(ETF)銘柄情報を配信、あるいはJリートに関連するキュレーションサービス(ネット情報の収集・提供)、あるいは独自の情報コンテンツ提供などを開始する。
先が見えない今はまさに「不確実性」の時代、情報が質量両面で足りないことだけは確かである――。
(経済ジャーナリスト。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:00
| 小倉正男の経済コラム
2015年01月26日
【小倉正男の経済羅針盤】「統合通貨ユーロ」というジレンマ
■ECBのギリシャ国債購入の決断で当面の危機を超えたが
ユーロ圏経済の危機が長引いている。
今回のギリシャ政局の混迷に端を発した危機は、ECB(ヨーロッパ中央銀行)が量的金融緩和に踏み込むことでとりあえず危機を乗り越えた。
だが、先々、ユーロ圏経済、すなわちEUがこの危機をどう克服していくのかは「不確実性」というか、見えないというしかない。
ECBの決断、すなわちECBがギリシャ国債を買い入れるということは、昨年11月あたりから予測されてきた。しかし、EU内ではドイツなどはこれに反対――。ECBとしては、追い込まれての決断、ギリシャが財政再建の公約を守る、ということを条件にギリシャ国債を購入することを決めた。
ギリシャの「構造調整」「構造改革」を進めれば、公務員・公務員給料の削減、年金の削減などで当然のことデフレが進行する。「まず財政赤字の削減を図れ」、というドイツの原理原則に沿った理論・やり方は、ギリシャ経済を極限まで低迷させた。
もともと我慢強いとはいえない(あるいは約束などについてもややアバウトといわれる)ギリシャからは悲鳴が上がる――。
しかし、デフレだから量的金融緩和を実施するでは、「構造調整」「構造改革」の手が緩められることを意味する――。ただ、原理原則にこだわるドイツも、現実に進行する事態にECBの量的金融緩和を大枠で「容認」した格好になったのではないか。
>>>記事の全文を読む
ユーロ圏経済の危機が長引いている。
今回のギリシャ政局の混迷に端を発した危機は、ECB(ヨーロッパ中央銀行)が量的金融緩和に踏み込むことでとりあえず危機を乗り越えた。
だが、先々、ユーロ圏経済、すなわちEUがこの危機をどう克服していくのかは「不確実性」というか、見えないというしかない。
ECBの決断、すなわちECBがギリシャ国債を買い入れるということは、昨年11月あたりから予測されてきた。しかし、EU内ではドイツなどはこれに反対――。ECBとしては、追い込まれての決断、ギリシャが財政再建の公約を守る、ということを条件にギリシャ国債を購入することを決めた。
ギリシャの「構造調整」「構造改革」を進めれば、公務員・公務員給料の削減、年金の削減などで当然のことデフレが進行する。「まず財政赤字の削減を図れ」、というドイツの原理原則に沿った理論・やり方は、ギリシャ経済を極限まで低迷させた。
もともと我慢強いとはいえない(あるいは約束などについてもややアバウトといわれる)ギリシャからは悲鳴が上がる――。
しかし、デフレだから量的金融緩和を実施するでは、「構造調整」「構造改革」の手が緩められることを意味する――。ただ、原理原則にこだわるドイツも、現実に進行する事態にECBの量的金融緩和を大枠で「容認」した格好になったのではないか。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:55
| 小倉正男の経済コラム
2015年01月15日
【小倉正男の経済羅針盤】原油価格低落とニッポンの行方
■原油価格は40ドル台割れ目前に低落
原油価格が下げ止らない。NY原油先物価格が、1バーレル=44ドル台に売り込まれて5年9ヶ月ぶりの安値更新となった。40ドル台割れがいまや目前である。
ロシア、イランなどが原油安の直撃を受けている。ロシア、イランなどはいずれも石油採掘原価・損益分岐点が割高で、いまの原油価格では採算が合わないとされている。大幅な赤字操業に陥っているとみられる。
それどころか、アメリカのシェールオイル開発企業に倒産が出るなど大揺れとなっている。シェールオイルも採掘原価が割高であり、原油価格低落で資金が廻らなくなっている。
シェールオイルは急成長・急拡大の咎めか、早くも「バブル崩壊」がささやかれ始めている。原油価格が下げ止まらなければ、アメリカの債券・株式など金融市場の混乱が避けられない――。ここでも原油価格低落の影響は小さいものではない。
■サウジの「ロシア潰し」「シェールオイル潰し」
サウジが、「原油の減産をしない」と表明したことから、原油価格低落に拍車がかかった。
歯止めがかからなくなりついには半値を割り込み、いまや高値の「100ドル台」から60%の値下げとなっている。
サウジとしては自国が減産しても、ロシア、シェールオイルが減産しなければシェアを下げることになる。減産はまったくやる気もないし、できないという立場だ。
それどころか、最近ではロシアやシェールオイルが減産しても、サウジは減産しないと表明している。
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原油価格が下げ止らない。NY原油先物価格が、1バーレル=44ドル台に売り込まれて5年9ヶ月ぶりの安値更新となった。40ドル台割れがいまや目前である。
ロシア、イランなどが原油安の直撃を受けている。ロシア、イランなどはいずれも石油採掘原価・損益分岐点が割高で、いまの原油価格では採算が合わないとされている。大幅な赤字操業に陥っているとみられる。
それどころか、アメリカのシェールオイル開発企業に倒産が出るなど大揺れとなっている。シェールオイルも採掘原価が割高であり、原油価格低落で資金が廻らなくなっている。
シェールオイルは急成長・急拡大の咎めか、早くも「バブル崩壊」がささやかれ始めている。原油価格が下げ止まらなければ、アメリカの債券・株式など金融市場の混乱が避けられない――。ここでも原油価格低落の影響は小さいものではない。
■サウジの「ロシア潰し」「シェールオイル潰し」
サウジが、「原油の減産をしない」と表明したことから、原油価格低落に拍車がかかった。
歯止めがかからなくなりついには半値を割り込み、いまや高値の「100ドル台」から60%の値下げとなっている。
サウジとしては自国が減産しても、ロシア、シェールオイルが減産しなければシェアを下げることになる。減産はまったくやる気もないし、できないという立場だ。
それどころか、最近ではロシアやシェールオイルが減産しても、サウジは減産しないと表明している。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 11:47
| 小倉正男の経済コラム
2014年12月25日
【小倉正男の経済羅針盤】サプライズ感が乏しい「地方創生」戦略
■「地方創生」の本気の度合いは?
「地方創生」――安倍晋三総理は、どうやら本気のようだ。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を重点政策として推進するとしている。
東京都を中核とした首都圏にばかり人口が集中し、地方は「自治体消滅」の危機にあるといわれている。
首都圏が繁栄していても、首都圏以外の地方を見渡すと閑散としてシャッターが下りた商店街といった街ばかりでは、地方消滅の「いびつな国」といわれても仕方がない。
安全保障からみても、地震や災害のクライシス・マネジメントからみても、首都圏への一極集中は脆弱性を極大化するのみだ。
「どうやら本気のようだ」としたが、問題はその度合いである。「決意」というか「不退転の気持ち」のようなものがなければ、政策もどこかそれが反映されることになる。
■優遇策は「地方移転するチャンスだ」というお得感が乏しい
次期総理候補の有力な一人である石破茂・前幹事長を地方創生担当大臣に充てているのだから本気といえば本気である。
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「地方創生」――安倍晋三総理は、どうやら本気のようだ。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を重点政策として推進するとしている。
東京都を中核とした首都圏にばかり人口が集中し、地方は「自治体消滅」の危機にあるといわれている。
首都圏が繁栄していても、首都圏以外の地方を見渡すと閑散としてシャッターが下りた商店街といった街ばかりでは、地方消滅の「いびつな国」といわれても仕方がない。
安全保障からみても、地震や災害のクライシス・マネジメントからみても、首都圏への一極集中は脆弱性を極大化するのみだ。
「どうやら本気のようだ」としたが、問題はその度合いである。「決意」というか「不退転の気持ち」のようなものがなければ、政策もどこかそれが反映されることになる。
■優遇策は「地方移転するチャンスだ」というお得感が乏しい
次期総理候補の有力な一人である石破茂・前幹事長を地方創生担当大臣に充てているのだから本気といえば本気である。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:11
| 小倉正男の経済コラム
2014年12月13日
【小倉正男の経済羅針盤】原油価格急落=「デフレの時代」に突入か
■1バレル=60ドル台割れに急落した原油価格
原油価格の低迷が止まらない。ついには1バレル=60ドル台(NY原油先物市場)を割り込むといった事態となっている。今年最高値は1バレル=110ドル台(6月)だったわけだからほぼ半値に近い低落となっている。
新年にはさらに下がり、「30ドル原油」、あるいは「40ドル原油」になるという予測も出ている。
「石油ガブ飲み」といわれた中国経済が失速している。ユーロ圏経済も、ギリシャなど南欧諸国の低迷・混迷が続いており、大底からの脱出が遅れている。
しかもOPEC(石油輸出国機構)とアメリカのシェールオイルとの競合関係が激化している。需給面でも供給過剰の傾向が顕著になっている。
■OPECが「骨身を切る戦略」に踏み切る
これまではサウジアラビアなどOPEC諸国は、シェールオイルを無視するというか、ほとんど問題視しないできた。しかし、シェールオイルのシェア拡大に対して、OPECは戦略を一変させた。
OPECは需要低迷に対応する減産は行わないことを決定した。
OPECは、あえて原油価格の低迷を容認することで、シェールオイルの生産・供給拡大にストップをかける方針を打ち出したことになる。
OPECとしては、原油価格低迷という「骨身を切る戦略」を採用し、アメリカのシェールオイルの生産・供給体制に打撃を与えるのが狙いである。
OPECはれっきとしたカルテルの塊だ。そのOPECが皮肉にも、当面はカルテル体制を守るために、あえて競争に挑んだようなものである。
OPECは、中長期では、世界の景気回復動向などを睨み、シェールオイルとの調整を進めて、再び原油価格の高騰を図るのが究極の意向とみられる。ただし、供給過剰が事実として判明している以上、原油価格が再上昇するかどうか、いまや不透明でしかない。
■第1次〜第2次オイルショックはOPECの勝利
第1次オイルショックは、1970年代前半〜70年代央のことだが、原油価格が1バレル=3ドルから5ドルになり、ついには11ドル台に騰がったことで勃発した。
日本では、店頭からトイレットペーパー、洗剤がなくなるような騒ぎとなり、インフレが加速された。まさに「狂乱物価」の時代だった。原材料価格高騰でコストは上昇したが、製品価格へのコスト転嫁が進んだ。
第2次オイルショックは、1970年代末から1980年前半に原油価格が1バレル=18ドルから30ドル台に上昇したことによるものだ。
原材料コストは上昇したが、製品価格には転嫁が進まなかった。企業は、「原材料高・製品安」の苦境に陥った。スタグフレーションが進行し、企業は不況にあえいだ。全体にモノ余りというか、供給過剰の時代に突入していたことによる。
第1次オイルショックの勃発時には原油価格は1バレル=3ドルだったが、それ以前は1バレル=1ドル程度だった。それが30ドル台になった。OPECの圧倒的な勝利だった。
■本格的な「デフレの時代」が到来する
2000年代になると原油価格は100ドル台に上昇した。これは「第3次オイルショック」というべきもので、「石油ガブ飲み」の中国経済が台頭したことが最大の要因だ。中東諸国の政治的な混迷も100ドル台といった原油価格に拍車をかけた。
この超高騰価格は、OPECにはタナボタのお客が出現した恩恵だった。しかしその反面であまりの超高騰価格は、アメリカのシェールオイル開発・供給を促進させた。
これだけの美味しいマーケットに指をくわえて手を出すなというわけにはいかなかった。
原油価格は、どこまで下がるのか。1バレル=30ドル〜40ドルに下がるとすれば、懸念されるのがデフレである。
原材料価格の低下は、コストを低減する。最終製品価格が下がらなければ、利益が生み出される。しかし、世界全体が供給力過剰の状況にあり、原材料コスト低減は、製品価格を押し下げることになる。
企業でいえば、売り上げが下がり、利益が下がることになる――。景気は悪化が避けられない。
今回の原油価格の急低下は、「オイルショック」とまったく正反対、本格的な「デフレの時代」の到来をもたらすということになるのでないか。
(経済ジャーナリスト・評論家、『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数)
原油価格の低迷が止まらない。ついには1バレル=60ドル台(NY原油先物市場)を割り込むといった事態となっている。今年最高値は1バレル=110ドル台(6月)だったわけだからほぼ半値に近い低落となっている。
新年にはさらに下がり、「30ドル原油」、あるいは「40ドル原油」になるという予測も出ている。
「石油ガブ飲み」といわれた中国経済が失速している。ユーロ圏経済も、ギリシャなど南欧諸国の低迷・混迷が続いており、大底からの脱出が遅れている。
しかもOPEC(石油輸出国機構)とアメリカのシェールオイルとの競合関係が激化している。需給面でも供給過剰の傾向が顕著になっている。
■OPECが「骨身を切る戦略」に踏み切る
これまではサウジアラビアなどOPEC諸国は、シェールオイルを無視するというか、ほとんど問題視しないできた。しかし、シェールオイルのシェア拡大に対して、OPECは戦略を一変させた。
OPECは需要低迷に対応する減産は行わないことを決定した。
OPECは、あえて原油価格の低迷を容認することで、シェールオイルの生産・供給拡大にストップをかける方針を打ち出したことになる。
OPECとしては、原油価格低迷という「骨身を切る戦略」を採用し、アメリカのシェールオイルの生産・供給体制に打撃を与えるのが狙いである。
OPECはれっきとしたカルテルの塊だ。そのOPECが皮肉にも、当面はカルテル体制を守るために、あえて競争に挑んだようなものである。
OPECは、中長期では、世界の景気回復動向などを睨み、シェールオイルとの調整を進めて、再び原油価格の高騰を図るのが究極の意向とみられる。ただし、供給過剰が事実として判明している以上、原油価格が再上昇するかどうか、いまや不透明でしかない。
■第1次〜第2次オイルショックはOPECの勝利
第1次オイルショックは、1970年代前半〜70年代央のことだが、原油価格が1バレル=3ドルから5ドルになり、ついには11ドル台に騰がったことで勃発した。
日本では、店頭からトイレットペーパー、洗剤がなくなるような騒ぎとなり、インフレが加速された。まさに「狂乱物価」の時代だった。原材料価格高騰でコストは上昇したが、製品価格へのコスト転嫁が進んだ。
第2次オイルショックは、1970年代末から1980年前半に原油価格が1バレル=18ドルから30ドル台に上昇したことによるものだ。
原材料コストは上昇したが、製品価格には転嫁が進まなかった。企業は、「原材料高・製品安」の苦境に陥った。スタグフレーションが進行し、企業は不況にあえいだ。全体にモノ余りというか、供給過剰の時代に突入していたことによる。
第1次オイルショックの勃発時には原油価格は1バレル=3ドルだったが、それ以前は1バレル=1ドル程度だった。それが30ドル台になった。OPECの圧倒的な勝利だった。
■本格的な「デフレの時代」が到来する
2000年代になると原油価格は100ドル台に上昇した。これは「第3次オイルショック」というべきもので、「石油ガブ飲み」の中国経済が台頭したことが最大の要因だ。中東諸国の政治的な混迷も100ドル台といった原油価格に拍車をかけた。
この超高騰価格は、OPECにはタナボタのお客が出現した恩恵だった。しかしその反面であまりの超高騰価格は、アメリカのシェールオイル開発・供給を促進させた。
これだけの美味しいマーケットに指をくわえて手を出すなというわけにはいかなかった。
原油価格は、どこまで下がるのか。1バレル=30ドル〜40ドルに下がるとすれば、懸念されるのがデフレである。
原材料価格の低下は、コストを低減する。最終製品価格が下がらなければ、利益が生み出される。しかし、世界全体が供給力過剰の状況にあり、原材料コスト低減は、製品価格を押し下げることになる。
企業でいえば、売り上げが下がり、利益が下がることになる――。景気は悪化が避けられない。
今回の原油価格の急低下は、「オイルショック」とまったく正反対、本格的な「デフレの時代」の到来をもたらすということになるのでないか。
(経済ジャーナリスト・評論家、『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 06:00
| 小倉正男の経済コラム
2014年11月02日
【小倉正男の経済羅針盤】崩壊しないから怖い中国のバブル
■「構造調整」を避けて崩壊しないからなお始末が悪い
中国経済、とりわけその「不動産バブル」、「バブル崩壊」については世界のあらゆるメディアが指摘している。
経済成長率が7%台に低下し、不動産市況は低迷し、売買件数も減少――。その度に、「ついに」「いよいよ」とウォッチャー専門筋が、「バブル崩壊」に論及してきた。
しかし、銀行倒産、取り付け騒ぎなど「バブル崩壊」現象は拡大をみせないで現在にいたっている。
中国経済の「バブル」は、崩壊するのも怖いが、崩壊しないからなお始末が悪い・・・。
経済は上がったり、下がったりで「変動」を伴う。しかし、中国はその「変動」を認めようとしない。
いまのユーロ圏経済の「バブル崩壊」では、南欧諸国の財政緊縮化、欧州各国銀行の資産売却、人員整理などコスト削減、資本注入と「構造調整」が続行されている。
ところが、中国は「バブル崩壊」をさせないのだから、「構造調整」もない。
「構造調整」は、一時的には経済の減速、デフレの進行を伴い、失業が急増する――。悲鳴が上がる辛気臭い状況になる。だが、「構造調整」を経ないと「バブル」からの完治は果たせない。
中国の「バブル崩壊」がなく「構造調整」がないのは、およそ恐ろしい現象ということなる。
■銀行は規制されており国有企業に限定して低利融資
中国が抱えるあらゆる問題の根源は、ほとんど「社会主義市場経済」に帰結するのではないか。
政治では共産党独裁を行っている。共産党高級幹部が権力と富を握り、その子弟たちが富の分配を享受する。経済は資本主義が採用され、富をむさぼることは肯定される。
シャドーバンキング、すなわち「影の銀行」なども、その奇態な政治経済体制から廻りまわって生み出されたものにほかならない。
中国の銀行は、「傾斜生産方式」というか、「社会主義」というか、国有企業に限定して融資を行っている。中国の銀行金利は規制されており、預金が3%、貸出は6%――。つまりは、融資も金利も自由化されていない。
国有企業は、共産党高級幹部の子弟達「太子党」の巣窟といわれている。中国の銀行は、規制されており、国有企業を優遇して融資するしかない。
■市場の実勢のニーズがシャドーバンキングを必要とした
ところが、「太子党」や新興成金を含め、お金持ちはもっと高い預金金利を求める。利回り10%超の「理財商品」といった投資信託商品が出回るようになる――。シャドーバンキングとしても、融資には資金集めが必要だから「理財商品」をつくったわけである。
お金持ちが不動産投資を行うにも銀行は貸出をしてくれない。銀行としては貸出金利が6%程度ではリスクが高すぎるから融資できないという面もある。
国有企業以外の地方政府、企業も不動産・建設などへの資金需要はきわめて旺盛だ。銀行の低金利融資は、これらのセクターも受けられない――。15%内外の高い貸出金利でもかまわないから融資してくれ、という需要が発生する。
市場の実勢、市場経済はおカネを求めている。「社会主義市場経済」の規制があるから、「影の銀行」=シャドーバンキングが必要になる。シャドーバンキングは、そうした市場ニーズの実勢から生み出されてきた。
中国経済は、「社会主義市場経済」と「市場経済」に分裂している。
「市場経済」は、闇市、あるいは自由市場のようなもので、よかれ悪しかれ実勢を反映している。「社会主義市場経済」の規制が、シャドーバンキングを急激に膨張させた。
規制すればするほど「市場経済」が膨らむ――。中国は、胎内に膨張した「市場経済」によって、経済のみならず、共産党独裁といった政治体制まで巨大な「変動」に直面する事態をいずれ迎えるのではないか。
(経済ジャーナリスト・評論家、『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数)
中国経済、とりわけその「不動産バブル」、「バブル崩壊」については世界のあらゆるメディアが指摘している。
経済成長率が7%台に低下し、不動産市況は低迷し、売買件数も減少――。その度に、「ついに」「いよいよ」とウォッチャー専門筋が、「バブル崩壊」に論及してきた。
しかし、銀行倒産、取り付け騒ぎなど「バブル崩壊」現象は拡大をみせないで現在にいたっている。
中国経済の「バブル」は、崩壊するのも怖いが、崩壊しないからなお始末が悪い・・・。
経済は上がったり、下がったりで「変動」を伴う。しかし、中国はその「変動」を認めようとしない。
いまのユーロ圏経済の「バブル崩壊」では、南欧諸国の財政緊縮化、欧州各国銀行の資産売却、人員整理などコスト削減、資本注入と「構造調整」が続行されている。
ところが、中国は「バブル崩壊」をさせないのだから、「構造調整」もない。
「構造調整」は、一時的には経済の減速、デフレの進行を伴い、失業が急増する――。悲鳴が上がる辛気臭い状況になる。だが、「構造調整」を経ないと「バブル」からの完治は果たせない。
中国の「バブル崩壊」がなく「構造調整」がないのは、およそ恐ろしい現象ということなる。
■銀行は規制されており国有企業に限定して低利融資
中国が抱えるあらゆる問題の根源は、ほとんど「社会主義市場経済」に帰結するのではないか。
政治では共産党独裁を行っている。共産党高級幹部が権力と富を握り、その子弟たちが富の分配を享受する。経済は資本主義が採用され、富をむさぼることは肯定される。
シャドーバンキング、すなわち「影の銀行」なども、その奇態な政治経済体制から廻りまわって生み出されたものにほかならない。
中国の銀行は、「傾斜生産方式」というか、「社会主義」というか、国有企業に限定して融資を行っている。中国の銀行金利は規制されており、預金が3%、貸出は6%――。つまりは、融資も金利も自由化されていない。
国有企業は、共産党高級幹部の子弟達「太子党」の巣窟といわれている。中国の銀行は、規制されており、国有企業を優遇して融資するしかない。
■市場の実勢のニーズがシャドーバンキングを必要とした
ところが、「太子党」や新興成金を含め、お金持ちはもっと高い預金金利を求める。利回り10%超の「理財商品」といった投資信託商品が出回るようになる――。シャドーバンキングとしても、融資には資金集めが必要だから「理財商品」をつくったわけである。
お金持ちが不動産投資を行うにも銀行は貸出をしてくれない。銀行としては貸出金利が6%程度ではリスクが高すぎるから融資できないという面もある。
国有企業以外の地方政府、企業も不動産・建設などへの資金需要はきわめて旺盛だ。銀行の低金利融資は、これらのセクターも受けられない――。15%内外の高い貸出金利でもかまわないから融資してくれ、という需要が発生する。
市場の実勢、市場経済はおカネを求めている。「社会主義市場経済」の規制があるから、「影の銀行」=シャドーバンキングが必要になる。シャドーバンキングは、そうした市場ニーズの実勢から生み出されてきた。
中国経済は、「社会主義市場経済」と「市場経済」に分裂している。
「市場経済」は、闇市、あるいは自由市場のようなもので、よかれ悪しかれ実勢を反映している。「社会主義市場経済」の規制が、シャドーバンキングを急激に膨張させた。
規制すればするほど「市場経済」が膨らむ――。中国は、胎内に膨張した「市場経済」によって、経済のみならず、共産党独裁といった政治体制まで巨大な「変動」に直面する事態をいずれ迎えるのではないか。
(経済ジャーナリスト・評論家、『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 21:57
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