[小倉正男の経済コラム]の記事一覧
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2017年08月16日

【小倉正男の経済コラム】北朝鮮はグアム島に向けてミサイルを撃つのか?

★クライシスマネジメント 生き残るのが基本
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■クライシスマネジメントでは意地とか見栄は無用

 前回のコラムで、韓国や日本を道連れにすると恫喝して、やるぞ、やるぞと見せながら、するりと逃げるのが北朝鮮のサバイバル(=生き残り)戦略である、と――。

 金正恩朝鮮労働党委員長は、軍司令官からグアム島周辺に向けた4発の弾道ミサイル発射計画について報告を受けた。金正恩委員長は、「アメリカの行動をもう少し見守る」と述べたとしている。

 やめてやるぞ、ということになるのか。あるいは、計画通りに弾道ミサイルを発射するのか。

 金一族の世襲支配という「国体」を護持するのが戦略目標であるなら、ここは危機を回避するのが常道になる。

 北朝鮮がグアム島に向けてミサイルを撃てば、アメリカが黙ってはいない。北朝鮮が韓国や日本に砲撃やミサイル攻撃をしたとしても、北朝鮮はサバイバルの基盤を失う事態になる。

 危機管理(=クライシスマネジメント)からみれば、北朝鮮の負け以外の何ものでもない。
 クライシスマネジメントでは、生き残りが至上命題であり、サバイバルが基本になる。意地だの、見栄だの、というのはクライシスマネジメントでは無用のことになる。

■売り言葉に買い言葉も本来的には無用

 アメリカとしては、北朝鮮に核爆弾とそれにアメリカ本土に届く弾道ミサイルを持たれるとクライシスマネジメントで問題が生じる。

 ただし、アメリカが北朝鮮を叩くなら、「世界がこれまで見たことがない炎と怒りに直面することになる」といった売り言葉や買い言葉を少しは控える必要がある。これも無用ということになる。

 それだけに、挑発的な言葉を吐いているときは、まだ安心なのかもしれない。

 トランプ大統領のディール感覚からして、やるぞ、やるぞと見せて、やるというのも愚かではないか。買う気があるなら買わないそぶりが、ディールというものだ。もっともこのあたりはなんともいえない・・・。

■経済制裁を厳格に実施すれば根底が揺らぐ

 基本中の基本に戻って、北朝鮮への経済制裁――。貿易、金融、海運などあらゆる面から締め上げる。中国もこれに協力する。これを厳格にやるのが案外重要と思われる。

 貿易、金融、海運などが制限されれば、国内の生産力は意味を失うことになる。変な言い方だが、北朝鮮の「資本主義」、あるいは「資本主義力」が機能しなくない。

 これこそがディールであり、飽きずにやることだ。信じてやれば、いずれ効果が出る――。北朝鮮の経済が存外によいのは、経済制裁がきちんと実施されていないことの証明にみえる。
それならば、経済制裁を厳格にやることが締め上げることになる。

 トランプ大統領、金正恩委員長とキャラクターが際立っているが、地道なやり方のほうが効く。「資本主義力」が機能しなくなれば、国家存立の根底が揺らぐ――。急がば廻れ、ということにほかならない。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:04 | 小倉正男の経済コラム
2017年08月12日

【小倉正男の経済コラム】日本の地政学、北朝鮮・サバイバルの手口

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■どこで矛を収めるのか

 これは一体どうなるのか――。アメリカのトランプ大統領が、「北朝鮮がアメリカを脅すなら、世界がこれまで目にしたことがない炎と怒りに直面することになる」と言明した。

 北朝鮮は北朝鮮で、すかさず「グアム島周辺に中距離弾道ミサイル4発を同時に撃ち込む計画を検討している」と表明している。この計画の策定は8月中旬とみられている。

 トランプ大統領は、「炎と怒り」では、厳しさが足りなかったかもしれないとしている。「彼(金正恩・朝鮮労働党委員長)がグアムに対して何かすれば、これまで誰も目にしたことのないようなことが北朝鮮に起こる」。さらに、「いまにわかる」、と。

 言葉の上とはいえ、最大限の激しい応酬となっている。どこかで矛を収めるのかもしれないが、予断はできない状況である。今回は矛を後ろに下げても、いずれにせよこの先はわからない。

■恫喝してするりと逃げるサバイバルの手口

 北朝鮮は金一族による世襲の独裁国家という最悪の「国体」を採っている。この国体護持のためにひたすら核爆弾、ミサイルを持とうとしている。
 アメリカに対しては、北朝鮮の国体護持を認めさせる交渉のテーブルに着かせることが戦略目標にほかならない。

 したがって、北朝鮮は挑発を繰り返して、その結果として戦争になれば、いずれにせよ「負け」である。

 韓国や日本を道連れにすると恫喝して、やるぞ、やるぞと見せながら、するりと逃げる。それが北朝鮮のサバイバル戦略というか、巧妙な手口である。

 こんな危ない綱渡りをやっているのが隣国なのだから、困ったものである。地政学とはそういうもので、引越しが効かないところから始まる。

■企業でいえばコーポレートガバナンスのない状態

 世襲の独裁体制で誰も何もいえない国体、何かいえば粛清させる――。そんな息が詰まるような国体は考えただけでもゾッとする。
 そんな国体を存続させるのが第一の目標というのだから、これは言葉がない。

 日本でいえば、世襲の一族企業組織で、番頭さんなども存在せずというコーポレートガバナンスがないような状態である。まわりは何も言わない人で固めて、どんどん会社はおかしくなっていく。何か思う社員は自然にその組織からいなくなるわけである。

 それでも日本の会社なら、どこかで傾いたり、改革されたり、という新陳代謝がなんとか行われる。時間はかかっても、そうした作用がなければ息が苦しい。

 「国体護持」、なんだかどこかで聞いた言葉だが、北朝鮮はいつまで恫喝外交を繰り返すのか――。

 北朝鮮、中国、韓国、ロシアと困った隣人が多いが、それは日本の地政学として受け止めなければならない。引っ越すわけにもいかないのが地政学にほかならない。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 18:06 | 小倉正男の経済コラム
2017年07月17日

【小倉正男の経済コラム】「忖度」でモメて「付託」が低下〜内閣支持率30%割れの意味〜

■「忖度」「お友達」が支持率30%割れを招く

kk1.jpg 「モリ」(森友学園)、「カケ」(加計学園)といった蕎麦屋のような問題で安倍晋三首相の支持率が大きく低下している。

 中谷元・前防衛相の「あいうえお」発言があったが、えこひいきせず、おごらず、といった問題が現状を引き起こしている。

 株価も日経ダウ2万円内外と一応高水準にある。経済は雇用にみられるように悪いわけではない。しかし、それだけに権力だから、ゆるみやおごりは生じてくる。
 ――廻りや下は「忖度」する。お友達は近付いてくる。上は上で「お友達」を過剰に可愛がったり、かばったりする。「モリ」「カケ」でもそうだし、閣内の防衛大臣などの失言問題でもそれが垣間見られる。

 その結果が支持率30%割れを招いている。「忖度」「お友達」といったものを泣いて斬れない。
 ――有能で可愛がっている士を泣いて斬った諸葛孔明の域にはないといったところか。

■支持率は選挙に準じる重要な指標

 官邸主導――各省庁の幹部人事を内閣人事局が握るといった一元化も様々響いている模様だ。
 各省庁が内部で人事を決めるのではなく、官邸=内閣が人事を決める。官邸=内閣のガバナンスのようなものは強化されるが、省庁内のほうは窮屈になる。

 首相の周りで「忖度」をする――。下なら「忖度」しないと廻りや上にいけない。「忖度」できないほうはそれでは面白くない。確かに、これではいろいろ不満・抵抗が生まれたり、リーク文書が出たりということになる。

 官邸=内閣は選挙を経ており、国民の「付託」を受けているから、官邸=内閣が主導するのは当たり前という理屈になる。

 それだけに安倍首相の支持率は重要な指標になる。支持率は、選挙と同じかそれに準じるもので、その時点の国民の「付託」の度合いを表している。国民に「付託」されていないなら、官邸=内閣主導の正当性が脆弱になる。
 

■受け皿がないというのは不幸

 「忖度」でゴチャゴチャとモメているうちに肝心の国民の「付託」が低下したことになる。安倍晋三首相の支持率低落は、そうした意味合いで受け止める必要がある。

 官邸主導――ともあれ確かに、日本の場合、それが極端な独裁や独善的な支配になっているかどうか。
 主導する側は、「頼むから、目をつぶってくれ」といった独裁程度の認識かもしれない。しかし、主導される側としては、それが理不尽な独裁・支配に映るといったことも少なくない。

 ゆるみやおごりにつながるのだが、いまのところ安倍晋三首相に取って代わる受け皿はない。ポスト安倍を窺う受け皿が、与党にも野党にも見受けられない。
 内閣改造などが支持率回復の安直なきっかけになるとは思っていない。だが、受け皿がないのだから、したがってこのまま死に体にズルズルと沈み込むとも思えない。

 ただし、言えるのは受け皿がないという不幸である。受け皿がないということでただただ継続しているというのも困る。
 もっと困るのは、下手に受け皿を誤ってしまうことだ。また再びみたび経済が死んでいるといった事態をみることになりかねない。

 安倍晋三首相には、あくまで政策で勝負して支持率を回復せよ、といいたいものである。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 18:21 | 小倉正男の経済コラム
2017年07月06日

【小倉正男の経済コラム】安倍晋三首相の窮地、支持回復には政策しかない

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■秋葉での発言で火勢が増す

 安倍晋三首相のJR秋葉原駅前での発言がメディアなどで批判を浴びている。都議会議員選挙の最中に、「こんな人たちに私たちは負けるわけにいかない」と演説したのが発端となっている。

 聴衆の一部が集団でプラカードなどを掲げて、演説を邪魔して、「安倍帰れ」「安倍辞めろ」などと騒然とした。それに安倍晋三首相が応酬したのが、「こんな人たち」発言である。

 こんな発言までメディアに批判されているのだから、やや末期的な感がしないではない。
「秋葉」には、火よけとか鎮火といった意味があるが、火勢が増したわけである。

 森友学園、加計学園問題と続いて、「忖度」「お友達」といったことが言われてきた。そして、「このハゲー!」といった豊田真由子議員などの不祥事連発が止めを刺している。

■付け焼き刃になるのでは・・・

 結局、規制緩和などの政策が生半可というか、中途半端だったことが底流にあるのではないか。

 内閣改造など人事で支持や人気を挽回するというが、それは付け焼き刃になるとみられる。人気のある小泉進次郎議員を大臣に取り立てるというのだが、一時的な効果はあっても長続きするかどうか。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:19 | 小倉正男の経済コラム
2017年06月23日

【小倉正男の経済コラム】ビール安売り規制、ガンバレ河内屋

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■守るべき酒屋さんはどこに存在するのか?

 行政が歪められているのかいないのか、ビール安売り規制が行われている。確かに、新ジャンルをはじめビール類は値上がりしている。

 アメリカが北朝鮮に空母、潜水艦、爆撃機で攻撃すれば、北朝鮮も抵抗するかもしれない。「危機管理」――そんなことでビール、焼酎、水などを買ったのは、つい最近のことである。

 安売り規制ということでまたビール、発泡酒、新ジャンルなどを買い込んだ。そしてまた値上げ後も買っているではないか。このあたりは、行政に見透かされているというしかない。

 大手スーパー、ディスカウンターなどが安売りで大量に販売すると、酒類小売店が対抗できない――。地域の酒類小売店(=酒屋さん)を守るというのが、安売り規制の大義名分ということだ。

 しかし、首都圏などでは、酒屋さんといったお店はほとんどというか、まったくというか存在しないのが実体だ。選挙の票が目当てともいわれるが、はたして・・・。

 昔みたいにビンビールを自転車で宅配してくれる酒屋さんというスタイルはすでになくなっている。そうした酒屋さんは、コンビニなどに酒類販売の免許を売り、リタイヤメントを遂げている。守るべき酒屋さんはどこに存在するのか?
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:52 | 小倉正男の経済コラム
2017年06月12日

【小倉正男の経済コラム】ふるさと納税規制にみる中央集権再強化

■規制が再強化、カルテル経済を再構築

kk1.jpg 地方自治・地方分権といわれてすでにずいぶん月日が過ぎている。しかし、地方自治・地方分権が進んだか、といえばまったくそうではない。
 むしろ、規制が強まり、中央集権が再強化されている感がないではない。

 例えば、大学(=企業)をつくるのに文科省が需要予測までして許認可権を振りかざしている。これではまるで社会主義経済である。
 ビールには安売り規制が行われている。ビール類は競争するな、ということか。これも市場経済に規制の手を入れている。

 日本では、「原則=規制・特例=自由」の経済を当たり前に受け止められているが、かなり異形なシステムである。
 企業には誕生する権利があり、死ぬ=倒産する自由がある。それをお役所=国が管理・統制するのは「社会主義市場経済」の変型ということにならないか。

 お役所=国が企業の新規参入権を規制すれば、これはれっきとしたカルテルであり既存業者の既得権を保護する政策になる。

 中世以来の「座」のシステムであり、ここにお役人が天下りする構造が形成される――。合法的な"賄賂"みたいなものであり、行政はもともとから歪んでいることになりかねない。

■ふるさと納税にまで国が細かい規制

 身近なことでは、ふるさと納税にまで「あーしろ」「こーしろ」と細かい規制が入っている。

 ふるさと納税の返礼は寄付額の3割を上限にしろ、そして返礼品の中身についてもこれは禁止とか、まるで子供扱いで地方自治体に指示を出している。
 これでは本末転倒というか、地方自治・地方分権どころか、中央集権そのものということになる。

 政界・官界、すなわち国は「地方自治・地方分権」と意味もなくお題目を唱えているが、本音は中央集権という姿が浮かび上がってくる。

 ふるさと納税にいたるまで地方自治体に競争するな、とカルテルを要請している。地方が国のこうした細かい規制を緩めるにはあの手この手の陳情などが必要になる。
 政界・官界=国は、ふるさと納税にも規制を入れて、(無意識のうちにも)利権の拡大行為をしていることにならないか。無意識の面があり、これはさらに始末が悪いことになる。

■下(=人々)からみた地方自治・地方分権

 地方自治・地方分権は、上からみれば統治形態だが、下からみれば少し違ってくる。

 どの地方が住みやすいのか、食べ物が旨いのか、生活環境がよいのか、そして税金が安いのか、というのが下からみた地方自治・地方分権である。

 極論すれば、人々がどの地方に住みたいか、人々がどの地方に税金を払いたいのか、というのが地方自治・地方分権になる。ふるさと納税は、その擬似的な形態ということができそうだ。

 地方自治・地方分権とは、地方が人々に選んでもらえるようにほかの地方と競争することにほかならない。
 ふるさと納税は、まがりなりにもその競争が始まったということなのだが、早くも国のストップ(=規制)が行われている。

 人々目線の地方自治・地方分権が論じられるのはいつか。もしかすると、この地には永遠にその時は来ないかもしれないという気がしないではない・・・。

(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:49 | 小倉正男の経済コラム
2017年05月18日

【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領:都合よすぎるFBI長官解任

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■「ロシア疑惑」でクライシスに直面

 北朝鮮をめぐる危機はとりあえず少し遠のいたが、今度はアメリカのトランプ大統領がクライシスに陥っている。大統領選挙時からの芳しいとはいえない「ロシア疑惑」が、トランプ大統領の『致命傷』になりかねない。

 トランプ大統領は、コミーFBI(連邦捜査局)長官を解任した。解任の理由は、「目立ちたがり屋」という曖昧で抽象的なものだった。コミー氏としては、「アンタにだけはそう(目立ちたがり屋)言われたくない」という思いではなかったか。

 その際、トランプ大統領は、コミー長官(当時)に自分が捜査対象ではないことを確認し、コミー長官に捜査対象ではないと言わせたことを明らかにしている。もちろん、これは「ロシア疑惑」についてということである。

 突然、トランプ大統領がコミー長官を解任したのは、FBIの捜査を懸念したためではないか、と思われるのがオチである。ところが、コミー氏の言葉を借りて、自身が捜査対象ではないと身の潔白を語っている。都合がよすぎるわけである。

 さらにトランプ大統領には、コミー長官にフリン大統領補佐官(ロシアとの不透明な関係で辞任)の捜査を止めるように求めたという疑惑が出ている。

 そのうえトランプ大統領は、ロシアのラブロフ外相にIS(イスラム国)がらみの機密情報を漏らしたといわれている。
 この機密情報は、第三国(イスラエル)からの情報であり、大統領の資質が問われかねない振る舞いになる。これも新たに「ロシア疑惑」に加わることになる。

■子供じみた権力乱用

 トランプ大統領は、何度もクライシスを逃れているが、今回はどうだろうか。

 NY株式市場は、トランプ大統領の政権運営、そして先行きの政策実現についての不透明感から一気に気迷いを見せている。為替もドル安(円高)トレンドになっている。

 トランプ大統領にしてみれば、FBIの捜査に介入する、あるいはFBI長官の解任するのは自分の権限内であり、何が悪いのか、ということかもしれない。
 しかし、ほかならぬ自分ないし自分の陣営に対する疑惑であり、捜査主体と推定されるFBIに介入するのは権力乱用というか身勝手すぎることになる。

 要するに絶対権力者の子供じみた乱暴・粗暴――。やや前代未聞だが、これでは「弾劾」による大統領の罷免ということもありえない話ではなくなる。

 トランプ大統領は、「フェイクニュース」という言い方で事実・真実を一方的に判定してきた。しかし、事実・真実を判定するのは大統領ではなく、大統領が判定されるサイドに立たされることになりかねない。

■「トランプ崩れ」のクライシス

 ロシアへのISに関する機密情報漏洩もトランプ大統領は何故それが悪いのだと言うに違いない。

 しかし、これはイスラエルなど機密情報の提供先との信頼関係にヒビが入ることになる。下手をすれば、提供先に深刻な危害・危険を及ぼすことになる。
 ロシアからほかの第三国に情報が流れたらアメリカの信用は地に落ちる。次からは情報は絶対に入ってこなくなる。

 トランプ大統領のディール感覚は、よい面もあるだろうが、見境なく使えば問題が生じる。
 おそらく、トランプ大統領にはこれらにとどまらず、これまでそうだったように問題は次々に出てくるに違いない。「トランプ崩れ」――、そのクライシスに備える必要を内包している。

 単純な話、メディアをこれだけ敵に廻してサバイバルできるだろうか。それこそ前代未聞の大統領であり、なかなか先行き楽観できるようには思えないのだが・・・。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 11:13 | 小倉正男の経済コラム
2017年05月11日

【小倉正男の経済コラム】決算シーズン:バランスシートは作戦と用兵の結実

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■作戦も重要だが、用兵も劣らず大切

 いまや決算の季節である。決算は企業の通信簿であり、結果は厳粛に受け止めるべきものだ。
 株主、社員などステークホールダー(利害関係者)にとっても、経営者にとっても、重要なイベントになる。

 経営の要諦は、経営戦略(作戦)と人事(用兵・人使い)なのだが、その結果がいやおうなく決算に現れる。バランスシート&損益計算書は、作戦と用兵の結実にほかならない。

 その昔、富士通の秋草直之社長(当時)が、自社の業績悪化をメディアに質問されて、「(経営戦略はよかったのだが)業績が悪いのは社員が働かないからだ」と、返答して大きな話題となった。
 この事件が起きたのは不況期の2001年当時のことだったが、ある証券界の大物は、「社長が代わると、株価が上がるケースだな」と呟いたものである。

 「社長はよいが、社員が悪い」は、確かに通用する話ではない。作戦も重要だが、用兵もそれに劣らず大切だということに尽きる・・・。用兵、人使いができないと企業は旨くいかない。

■作戦も用兵も下手ではすべての不幸の始まり

 経営者のなかには、どういうわけか作戦も用兵も下手という人がいないではない。他人の意見を聞いて、それをうまく用いればよいのだが、それもまたできない。
 反対に作戦、用兵ともなんとか上手い人もいる。ただ、これらも運と勘でやっている面がある。いうほど安定性はない。

 前者のケース、――頭が固まっているのか、プライドが邪魔するのか。「人使い」どころか、「自分」を使えない。
 「イエス」としか言えない人で廻りを固めることになる。コーポレートガバナンスでいえば、チェック&バランスがない状態、いわば危険なステージに入っている。

 業績が悪化すれば、社員たちもよいことはない。社内の雰囲気はギスギスして、給料やボーナスは下がる。社員たちもクビを傾げるような命令に従わなければならない。理不尽なハラスメントめいたことも散見されるようになる。
 株主にとっても時価総額が下がる。株主もこのあたりはナーバスだ。よいことはなにひとつない。

■よい経営、よい決算のよい循環を

 社長を終わり、会長や相談役などに退いた経営者と話をすると、「あの時にこうすればよかった」とかという『しくじり』を聞くことがある。
 「今にして思えば、――」。社長の時期にやったこと、やらなかったことを後悔しての話である。

 こちらからすれば、「なんであの時にこうしなったのか」「こうしておけばよかったのに――」ということになる。傍目八目なのだが、傍目から見れば『しくじり』は少なくない。

 「たまたま経営者になったので、そこいらまで考えが至らなかった――」。そんな『しくじり』を聞いたことがある。確かに、たまたま経営者になったというケースはかなり一般的である。ただ、後悔しているだけまだしもよい経営者といえる。

 経営者のなかには、「社員が働かないから」などと強弁するケースもある。
 事実に基づくこともないではないだろうし、あるいはほとんどは事実に基づかないこともあるだろう。なかには苦しまぎれの強弁だったりする。
 なかなかできないのだが、事実を事実として認めることが度量になる。

 ――よい経営を行って、よい業績を残せば、世間からよい経営者としてリスペクトされる。今年の決算では、そうしたよい循環を見たいものである。

(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:36 | 小倉正男の経済コラム
2017年04月11日

【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領の戦法・まるで「秀吉の小田原攻め」

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■米中会談で圧倒的な格の違い

 トランプ大統領のアメリカが、シリアのアサド政府軍が支配する空軍基地を巡航ミサイルで攻撃した。しかも、米中首脳会談の真ッ最中に叩いた。

 アメリカの巡航ミサイルでの攻撃は、アサド政府軍が化学兵器を使用したことを大義名分としている。「いくつもの一線を越えた」――トランプ大統領はそう語っている。

 米中トップ会談でフツーに「二大強国」を演出したいと思っていた習近平(=国家主席)としては、屈辱だったに違いない。面子を潰された思いがあったと思われる。
 ただ、それ以上にあったのは、力で圧倒的な格の違いを見せつけられた思いではないか。

 アメリカがシリアを攻撃したのを喜んだのは、北朝鮮の金正恩(=最高指導者)だったのではないか――。
 アメリカは、やはり東アジアより中東が主戦場だ。北朝鮮には死活的な関心はない。それに北朝鮮、中東の二正面同時作戦は、いくらアメリカでも採れないだろう、と・・・。

 しかし、アメリカは、シリア攻撃ではロシア、そしてシリア・アサド政府にも事前に告げていたフシがある。二正面作戦ではなく、陽動作戦というふうにもみえないでもない。

■「トランプの小田原攻め」

 アメリカは、間髪をおかずにカール・ヴィンソン空母打撃群、さらにミサイル駆逐艦なども朝鮮半島に向けて航行させている。

 力ではまったく格が違う――。隠密の航行ではない。なかばこれみよがしの堂々の航行である。金正恩が頭を下げるのなら許してやろうといったやり方である。

 これではまるで「豊臣秀吉の小田原攻め」のように見える。
 それでも金正恩は強がる可能性が高い。おそらく強がるに違いない。トランプ大統領としては、北朝鮮、いや金正恩はもうすでに"いくつもの一線を越えた"と判断しているのではないか。

 このまま放置すれば、ますます難しいことになりかねない。それなら、いまでしょ、ということになるのか。中国は、そのときの家康の亜流みたいなもので、「トランプの小田原攻め」を黙認するしかない・・・。

■被害者意識ではすまないところにいる現実

 アメリカが、北朝鮮を叩いてもいまは火の粉がアメリカ本土までは飛ばない。しかし、韓国、日本には火の粉が飛ぶ。

 実害をこうむるのはアメリカではなく、韓国であり、日本である――。新聞、系列のテレビなどからそうした意見が出ている。

 日本のリベラリズムは先送り論というところだ。被害者意識をベースにしているわけだが、先送りしても問題は解決しない。先送りしていまにいたっている面がある。
 アメリカに火の粉が飛ぶまでになれば、それこそ解決は困難になる。北朝鮮の金正恩の思う壺というところか。

 北朝鮮は、韓国、日本に火の粉を飛ばすことを盾に瀬戸際外交を続けてきている。結末はまだみえない。そんななかで日本も被害者意識ではすまないところにいる現実が突きつけられている。

(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:09 | 小倉正男の経済コラム
2017年04月06日

【小倉正男の経済コラム】北朝鮮問題・米中首脳会談で緊迫度マックス!

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■トランプ大統領の「我々がやる」という発言

 米中首脳会談が迫っている――。トランプ大統領は、今回は関税や為替操作については協議しない、と語っている。関税、為替操作、貿易不均衡は次回以降に後回しを公言している。

 トランプ大統領は、中国に25〜45%の輸入関税をかけると息巻いていたのだが、今回はそれが吹き飛んでいる。
 協議されるのは北朝鮮にほかならない。今回は安全保障、北朝鮮が100%の協議対象である。

 「もし中国が北朝鮮問題を解決しないなら、我々がやる。言えるのはそれだけだ」
 トランプ大統領は、中国の習近平国家主席に何らかの協力を求めていないではない。だが、協力がなければないでアメリカはやる、と宣言している。

 問答は終わった。一触即発――、いつやるのか、どうやるのか、そこに絞られている。
 ティラーソン国務長官も、「(北朝鮮のミサイル発射に対して)これ以上コメントすることはない」、と。

 アメリカは、北朝鮮については十分に話してきている。もう話している段階は終わっている、としている。
 一方、北朝鮮にも、アメリカに先制攻撃を行うのではないか、という見方が出ている。

■生活者個人もクライシスマネジメント対応が必要か

 これだけの緊張状態はほとんど経験のないことである。
 子供の頃、朝鮮戦争が終わった頃なのか、空をアメリカ軍の巨大な飛行機が編隊で飛んでいたのを見たことがある。
 それを思い出したが、こうした緊張は気持ちのよいものではない。

 緊張を煽るつもりはない――。だが、日本にミサイルが飛んでくるという事態になれば、自衛隊も後方支援だけというわけにもいかないだろう。危機の当事者であり、観客やお客さんではないのだから呑気なことは言っていられなくなる。

 TVワイドショーなどで、そもそも論なのか、トランプが悪いとか、安倍さんの発言がどうなのか、という発言があった。主婦めいた立場なのか、シロウト丸出しの発言もあった。

 しかし、今回はそうした話は聞いていて時間のムダではないか、と。
 いつ何が起こるのか、どうしたらよいのか。危機に直面しているのだから、そもそも論など中身のない「ヒマ話」をしているのはいかがなものか。それこそ次回以降にしてほしい。

 水とか、食料品とか、少し買っておかなければならないのか。生活者個人もクライシスマネジメントを考えなければならない時かもしれない。

(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 16:42 | 小倉正男の経済コラム
2017年04月04日

【小倉正男の経済コラム】『リ・アベノミクス』――再びアベノミクスに戻れ

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■政策停滞のなか危機説が流れる

 アメリカではドナルド・トランプ大統領の政策に停滞が生じている。「税に関する驚くべき発表」、すなわち法人、個人の大幅減税の発表も遅れに遅れている。
 税制について、トランプ大統領周辺にプロフェッショナルが不在なのではないか、といった状況が語られている。

 その代わりに北朝鮮・金正恩への攻撃も排除しないといった緊張が生じている。中国の協力が期待できないとすれば、「我々だけでやる」、と。朝鮮半島危機説が語られている。
 しかし、これこそ簡単にはいかない。トランプ大統領は、減税案すらいまだ発表もできていないのに先制攻撃などできるのか――。そんな疑問がないではないが・・・。

 日本のほうも安倍晋三首相が「森友学園」問題でやや憔悴がみえる。国有地を格安で売却したのがそもそもの問題だが、忖度はあったというのが大方の見方である。長期政権の緩みが思わぬところで出てしまったのか。

 安倍晋三首相は、経済政策ではどちらかといえば市場経済主義、政治ではナショナリズム、右翼的志向である。経済では支持を集め、政治では人気を下げるという循環を繰り返している感がある。ここは再び経済に集中すべきということではないか。

■「失われた時代」に後戻りは悲惨

 ポスト安倍で、1年ごとに首相が代わるでは、「失われた時代」に後戻りになりかねない。雇用はいまや空前の人不足だが、経済が停滞すれば、仕事自体が失われる。賃金も上がらず、ひいては退職金や企業年金などにもマイナスの影響が生まれる――。

 そんな「失われた時代」が再到来すれば、「災難」というしかない。共働きでマンションを買って住宅ローンを払うといった現在のライフスタイルも保持できないといったことが起きかねない。

 「失われた時代」は、株式市場も売り一方の死んだような状態だった。兜町はリストラ一色で人影が消えていたものだ。外資有力企業も東京から事業撤退が相次いだ。
 オフィスビル建設はいまやピークで銀座、日本橋などは新しい高層ビルが続々登場している。しかし、オリンピックを前にして建設ブームも頭を打つことになる。

 我々が経験した「失われた時代」は悲惨そのものだった。「失われた時代」に戻ることだけは避けたいものである。

■「リ・アベノミクス」=ソフィステケートに練られた新政策

 さてアベノミクスだが、これも失われているというか、忘れられている感がある。安倍晋三首相からもアベノミクスという言葉がまったく吐かれなくなっている。
「リ・アベノミクス」、ここはアベノミクスに再び戻るべきである。

 政府がいくら依頼しても、賃上げははかばかしくない。それなら次の手を少し考えるべきではないか。
 「プレミアム・フライデー」、政府は月末の金曜日は午後3時に終業するように民間企業に呼びかけている。これなども中途半端である。お役所はプレミアム・フライデーだが、民間企業の大半はそんなものは導入していない。

 例えば、仮に月末の金曜日を正午から半ドンにする、といった制度が強制されるなら、これは実質的に賃上げになる。労働時間が減り、賃金(月額)が不変なら賃上げに等しいことになる。時間だけではなく、実質的に賃上げとなるならば消費購買力の向上につながる。

 フランスのレオン・ブルム人民戦線内閣(1936〜1937年)が、有給休暇の制定を強行して、消費購買力を高めたのに類似した政策になる。
 「暇ネタ」ではあるが、ソフィステケートに練られた「リ・アベノミクス」政策を提案したいものである。

(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:38 | 小倉正男の経済コラム
2017年03月18日

【小倉正男の経済コラム】残業料率引き上げこそ歴史的な大改革

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■残業時間100時間未満で歴史的な大改革とは?

 「きわめて画期的で、労動基準法70年のなかで歴史的に大改革だ」(菅義偉官房長官)。
 労使の残業時間の上限規制合意で、繁忙期の残業時間を100時間未満にしたことについてのコメントである。

 このような後進国並みの残業規制で「大改革」とは、残念な話である。民進党や連合も結局はこれに合意しているわけだから、傍からみていると野党もほとんど同罪である。
 政府は「プレミアムフライデー」「働き方改革」とかいっているわけだが、労働政策は旧態依然の感がぬぐえない。

 ドイツやフランスは残業料を大変高いものにした。残業させるよりは、もうひとりの従業員を雇用したほうが安い――。残業料が高いことがワークシェアリングをもたらし、雇用を増加させてきた。

 雇用や賃金を重視するアベノミクスに沿う話だが、そうした方向にはいかない。どうやら与野党とも「籠池・森友学園事件」で思考停止といったところか。

 与野党そろってこんなこと、つまりは「芝居」みたいなことをやっていれば、何をやっているのかと見透かされることになりかねない。
 これでは日本にもドナルド・トランプ大統領のようなとんでもないというか、凄い人が飛び出してくる素地を耕しているようなものである。

■金融政策も限界、賃上げも低調

 そのアメリカだがFRB(連邦準備制度理事会)がトランプ大統領の政権下で初めての利上げに踏み切った。しかし、利上げペースの加速化は示されなかったということでドルを売る動きとなっている。

 加速化はないというが、年3回ペースの利上げは行われるとみられている。アメリカの景気はよいということを確認したわけである。

 問題は日本が政策的に手詰まり状態になっていることだ。トランプ大統領の為替に対する強烈な批判があり、日銀は動けない。それに日銀としても、金融緩和策にこれ以上踏み込んでも効果は期待できない状況だ。

 そのうえ賃上げも低調な推移となりそうである。ドル安基調のなかでは、日本の主力産業である自動車産業各社なども賃上げには積極的になれない。
 またまた利益準備金など内部留保優先、つまりは企業におカネを貯めこむことになる。あまり賢い循環とはいえない。

■残業料率引き上げをアベノミクスの新しい目玉にせよ

 それであるなら、残業料率を引き上げたらよいのではないか。繁忙期の残業を100時間未満にするというだけではなく、少しでも残業料率を引き上げる。そうなれば、ワークシェアリング効果が発現するから、雇用も増加する。

 金融政策だけでは限界がある。それだけに「プレミアムフライデー」「働き方改革」といったことが提案されている。しかし、これらは残念ながら掛け声だけの面があり、政策としては実体が乏しく、上滑り過ぎるのではないか。

 民進党、連合など野党勢力は、政府の揚足を取っているだけではなく、少しは日本経済に寄与することを提案すべきである。そうでなければ、ますます国民から見捨てられることになる。

 残業料率が高くなれば、経営サイドもそれこそ働き方、働かせ方を真剣に考えることになる。世界的に劣悪で悪名が高い1時間当たり生産性も改善に向かう契機となる。

 残業料率が引き上げられれば、所得が上がり、消費購買力の向上にもつながる。これこそ歴史的な大改革で、よいことが少なくない。アベノミクスというタームもあまり聞かなくなったが、残業料率引き上げをアベノミクスの新しい目玉にするべきではないか・・・。

(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:54 | 小倉正男の経済コラム
2017年03月08日

【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領とメディア「メディアは人民の敵」か!?

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■トランプ大統領の「メディアはアメリカ人民の敵」

 アメリカのトランプ大統領がメディアに対して「偽ニュースだ」と罵倒する風景は、いまやお馴染みとなった。トランプ大統領は、「偽ニュースのメディアはアメリカ人民の敵だ」とツイートしている。

 「人民の敵」というフレーズが飛び出したのは、ロシア革命のレーニン以来のことだそうだ。

 型破りといえば型破りであり、お互いにリスペクトなしに罵倒し合っている。それはそれでアメリカであり、どんどん罵倒し合っていくことが、ある意味で健全の証しになるように思われる。

 大統領とメディアとの緊張関係は悪いことではない――。チェック&バランスということでは、それが曲がりなりにも機能しているからである。

■頑張れメディア

 昨今の日本の話――。東芝では歴代の経営トップが会計担当者に指令を出して不適切会計が行われたといわれている。経営トップの指示・指令で会計はある程度なんとでもなる面がある。それでも無理に無理を重ねて数字をつくり続ければ、どこかで破綻が生じる。

 以前にカネボウが倒産したときに当時の経営トップが、それまでの歴代社長がやってきたようにしてくれ、と会計担当者に粉飾を命令したという話が残されている。
情けない話だが、そのときの経営トップとしては、それは当然のことと思っていたに違いない。

 それだけに記者たちよ、頑張ってほしい。特に、一般紙はともかく、経済新聞、経済雑誌の記者たちには、辛くても勉強して仕事をしてほしいと思っている。

 「コーポレートガバナンス」がいわれて久しいが、日本ではなかなか定着しない。「コーポレートガバナンス」が実体上ないだけに記者たちには頑張ってほしいのである。

 「コーポレートガバナンス」の要諦は、チェック&バランスにある。しかし、これは東芝にみられるように形だけあるが中身はないケースが大半である。
それだけにメディアは、チェック&バランスということでは重要なポジションにある。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 11:05 | 小倉正男の経済コラム
2017年02月23日

【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領の税制改革は世界経済を引っ張る中身となるのか?

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■NY株価は史上最高値を連続更新

 アメリカは、消費が好調、利上げ再接近ということで、要するに景気がよい。NY株価は、連日、史上最高値を更新している。

 トランプ大統領は、「ポリティカル・コレクトネス」からいうと問題が多い。支持率も低下している。記者会見をやればやったで怒鳴り合いというか、喧嘩腰でメディアを罵倒している。

 しかし、経済ということでは、差し引きで大きなプラスということである。それがマーケットの過去最高値の連続更新をもたらしている。

 ちなみにNY株価の9日連続史上最高値更新は、30年ぶりということである。確かに、史上最高値ならずとも、9日連続高騰というのもそう多くあることではない。

 もっとも、それは「アメリカ・ファースト」で、アメリカだけのことである。このところの日本のマーケットは、いまひとつというか乗り切れていない。

■「アメリカ・ファースト」ではない税制改革になるか

 マーケットだけではなく、日本経済に影響が及ぶのはトランプ大統領の税制改革(減税策)の行方である。2月28日の議会演説でその具体的な中身が明らかになるとみられる。

 目を見張るものになるか、そうではないのか――。トランプ大統領が事前に公言しているように法人、個人の両面で大幅な減税が打ち出される見込みだ。
 これによりアメリカの景気に拍車がかかり、利上げに進めば、ドル円(為替)にも影響が及ぶことになる。

 「アメリカ・ファースト」で視野を狭くすることなく、アメリカが世界経済全体を引っ張るような税制改革が望まれる。
 国境税など保護主義・重商主義めいたものが強く打ち出されるようでは、「アメリカ・ファースト」であり、世界経済全体を引っ張るものにはならない。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:25 | 小倉正男の経済コラム
2017年02月09日

【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領の手口とは?脅かすよりも落しどころが重要

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■どこかの地回りの手口?

 ドナルド・トランプ大統領には、メディアを含めて振り回され過ぎではないか。

 ただ、ドル円の為替相場などもトランプ大統領の思惑通りにドル安円高に推移している。
 ドル安がはたしてアメリカの国益かどうかわからないが、まずはトランプ流のペースで進行しているというところだ。

 トランプ大統領は、ネゴシエートル(商人)感覚で、ハッタリをかましてくる。ディールなのだから、相手を驚かせて威圧して、着地=落しどころは違ってもそれでよいということなのだろう。
 ネゴシエートル(商人)は、交渉しないと商売(ネゴシオ)したという気持ちにならないという存在である。

 マティス国防長官が来日して、「日本の駐留費負担は他国のお手本」などの発言に終始した。
 「カネ(駐留費)を全額払わないのなら、アメリカ軍は撤収する――」。そんなトランプ大統領の発言からすると、マティス国防長官が大変にまっとうにみえる。
 どこかの地回りの手口だが、それをアメリカの大統領にやられたら、たまったものではない。

■合理性がなければ、政策は成功しない

 トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」は、それはそれでよいのだが、保護主義というか、重商主義めいたものは合理性があるのか。

 ドル安にしたら、日本でアメ車が売れるとは思えない。「被害者意識」だけで、マーケットを否定しても、合理性がなければ経済政策としては成功しない。

 私の住んでいる地域でも、クルマに興味があるほうではないが、ドイツ車はよくみかける。しかし、アメ車はみかけない。まずは何故売れないかを考えるべきだ。

 おそらく、トランプ大統領はネゴシエートル(商人)であり、わかっているのではないかと思われる。アメ車であれ、イヴァンカ・ブランドのファッション衣料であれ、ともあれ声高に言ってみる。
 地回りの手口と思えば、是非はともかく、いちいち驚くことはない。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 20:51 | 小倉正男の経済コラム
2017年01月24日

【小倉正男の経済コラム】石原慎太郎元都知事の窮地〜豊洲購入の賠償責任問題〜

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【東京都が卸売市場を所有する必要はあるのか】

■石原慎太郎元都知事の賠償責任

 小池百合子都知事が、豊洲移転問題で、石原慎太郎元都知事の賠償責任について見直すと表明した。

 石原慎太郎元都知事については、「東京都は豊洲の購入資金578億円全額を石原慎太郎氏に請求しろ」という住民訴訟が起こされていた。
 東京都は、石原慎太郎元都知事に賠償責任はないという立場を採ってきたが、それを変更するかどうかを検討するとしている。

 豊洲ではベンゼン、シアンなどの有害物質が検出され、移転のメドはまったく立っていない。豊洲には、水産物などの卸売市場の前提である「安全・安心」があるとはいえない。
 東京都は、いわば豊洲という汚染された土地を購入したわけだが、そのおカネは税金であり、石原慎太郎元都知事としては相当な窮地に立たされている。

 石原慎太郎元都知事からは、説得力のある説明や反論はまったくなされていない。税金を使い放題という調子で貪ってきたわけだが、税金なのだからその使いみちは説明する責任がある。

■所有してガバナンスがない、というのは最悪

 税金といったものは、「親方日の丸」とまったく同じであり、下手に使おうが、無駄に使おうが、東京都が倒産するわけがない。使い方が鷹揚になる素地がある。

 本来でいえば、いまでは東京都が水産物などの卸売市場を所有しているいわれはないのではないか。
 監督権、チェックしたり指導したりといったガバナンスを所有していればよい。所有はしているが、ガバナンスがまるでないのでは税金を食うだけであり、何の意味もないどころか最悪である。

 卸売市場は、民間に売却して任せて、東京都はそれを監督する。民間ならば、豊洲などの「安全・安心」がない土地にポンと578億円を支払うといったことなどなかったのではないか。

 東京都が卸売市場などまで持っているから、いくら税金を集めてもさらに税金が必要になる。「市場長」などといったポストも必要になり、これも税金で賄うことになる。減税などということは間違っても出てこない。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 09:52 | 小倉正男の経済コラム
2017年01月08日

【小倉正男の経済コラム】トランプ氏の「社会主義市場経済」

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■トランプの企業経営への介入は社会主義経済

 アメリカの次期大統領であるトランプ氏のツイッターによる企業経営に対する介入が止まらない。

 フォード,GMにメキシコに工場を移転するなとツイート、メキシコに工場を建設するなら大型の輸入税を課すと脅かしを発信した。
 さらにはトヨタにまでメキシコに工場を建てるのは、「ありえない」と――。トヨタだけではなく、ほかの日本の自動車企業にも余波が直撃しかねない状況になっている。

 減税、例えばトランプ氏が唱える法人税の35%から15%への大型減税などは市場経済を基本にした経済政策になる。
 法人税が低率なのだから、企業はアメリカで安心してビジネス活動を行ってくれ、海外企業もアメリカでビジネスを広く展開してくれ、というメッセージになる。

 しかし、アメリカの工場をメキシコに移転するな、メキシコなどに工場を建設するな――、と民間企業に「命令」、あるいは「恫喝」するのは市場経済とは程遠いことになる。
これははっきり言えば社会主義、一歩譲っても社会主義市場経済にほかならない。

■徳川吉宗の米相場への介入=悲惨な結末

 社会主義経済、あるいは社会主義市場経済がうまくいった例はない。結果は惨めな失敗になりかねない。
市場経済を人為の力で支配・統制するというのは、ほとんど無茶な話であり、「専制君主」のつもりか、という事態になる。

 江戸時代に八代将軍・徳川吉宗が米相場に介入したという事例がある。徳川吉宗に付けられたアダ名は「米将軍」、米相場を上げようとした。しかし、その結末だが米相場は暴落に見舞われた。
市場経済を人為の力で支配・統制しようとしたが、もたらされたのは市場経済からの逆襲であった。

 徳川吉宗としては、家臣たちが家禄をお米でもらっているのだから、米相場を上げればそれは家臣たちの給料がアップすることになる。家臣たちの生活の向上を考えて、「ポピュリズム」政策を採ったわけである。

しかし、新田開発、農業技術の発展などがあるのだから、おのずとお米の生産量は上がり、そしてお米の価格は下がる。「米将軍」であれ、市場経済を支配・統制しようというのはどだい無理であった。

■トランプ氏自体も5〜6度の倒産で市場経済に痛い目に

 トランプ氏自体も倒産は1度や2度ではない。それどころか倒産は5度、6度というのだから、市場や市場経済の逆襲にとことん痛い目にあっている。
 その恩典で、トランプ氏は税金をほとんど払っていないというのである。

 トランプ氏は、市場経済に逆らっても勝てないことは痛いほど知っているはずである。

 不動産という浮き沈みが激しいマーケットで、企業経営者をやってきているのだから、市場経済を体でわかっているに違いない。
 ところが、「アメリカ・ファースト」になると、まったくの別人格になり社会主義、あるいは社会主義市場経済の信奉者になる。

 日本の企業経営者のなかにも市場経済に逆らう人がいるものである。能力は乏しいがやる気は満々といった企業経営者が、市場経済の警鐘や逆襲に遭遇しても、それをしっかり理解しようとしないケースがある。大概うまくいかない。

 それはともあれ、トランプ氏の矛盾に満ちた政策は大変興味深いのだが、市場経済への支配・統制は悲惨な結末になることはほとんど間違いない。微力ながら、それを少しひっそりと指摘しておかなければならない。

(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 08:35 | 小倉正男の経済コラム
2016年12月22日

【小倉正男の経済コラム】トランプ氏を抜きには語れない「新年の世界景気」

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■トランプ氏の大判振る舞い

 新年の世界景気を占うとすれば、アメリカの次期大統領であるトランプ氏の政策を抜きにして語れない。

 トランプ氏の政策は、牽引車が不在だった世界経済に「主役はアメリカだ」、いや「主役は俺だ」と名乗りを上げたようなものだ。
 問題や相矛盾するような点は少なくない。しかし、世界経済の「主役は俺だ」というのは、このところ見られなかった新事態である。

 まずは減税、富裕層を中心とする所得税減税、さらに法人税減税が取り沙汰されている。10年間で6兆ドルの大型減税が打ち上げられている。法人税は35%から15%に大幅な減税が行われる――。

 海外に移転したアメリカ企業を本国に呼び戻す。加えて、外国企業をアメリカに呼び込む。

 さらには10年間で1兆ドルという国内インフラ投資、それに国防への投資などが謳われている。このあたりはケインズ政策めいており、おカネをばら撒いて雇用を増やすということになる。トランプ氏の大判振る舞いというしかない。

■トランプ氏は財政赤字を無視

 オバマ大統領は、「財政の崖」、すなわち巨額の財政赤字に縛られ、何もできなかった。「世界の警察官」を自らあっさりと放棄した。財政赤字の拡大を見過ごせない。臆病なほど何もやらない。オバマ大統領はそんなジレンマを抱えていた。

 トランプ氏は、財政赤字など眼中にないという立場だ。景気がよくなれば、税収が上がるという楽観論である。

 仮に財政赤字が拡大しても、基軸通貨であるドルを持っており、国債増発で乗り切れる。アメリカにデフォルトはない――。
 根拠があるのかどうかはわからないのだが、強気の楽観論である。

 財政が悪いのに大型減税をやり、インフラ投資を行うとすれば、とりあえず財政赤字は大幅に膨らむ。ただし、景気がよくなれば、税収が上がり、財政赤字を減らすことができる。
 その綱引きになるが、はたしてどうなるものやら・・・。

■新しいバブルが勃発する

 リーマンショック時は、「100年に1度」の金融危機と騒がれたものだ。この時も世界はインフラ投資などケインズ政策が必要だといわれた。

 結局、リーマンショック時は、中国が劣悪な国内インフラの近代化に乗り出し、大判振る舞いを行った。いわば、中国は世界経済の「白馬の騎士」となり、GDPで世界2位の経済大国に躍り出た。
 中国のバブルの勃発である。中国のバブルは、世界の景気を一時的に支えたわけである。

 だが、中国はいま高成長が終わり、いわばバブル崩壊状況で、息切れをきたしている。世界経済を支えたり、救ったりできる立場にはない。アメリカも、オバマ大統領には世界経済を引っ張る気概はなかった。

 主役不在の世界経済にトランプ氏が、「俺が主役だ」と名乗りを上げた。世界の景気はアメリカが引っ張る、言葉を換えれば「バブルを起こす」ことも辞さないということになりかねない。長期金利は上がり、新年は金利がさらに上昇するとみられている。

 トランプ氏の政策が、アメリカを偉大な国に復活させるのか。あるいはアメリカはついには偉大な国から滑り落ちることになるのか。どちらに転がるのか――。
 新年はリスクを持ちながらトランプ氏の政策が始動する。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:20 | 小倉正男の経済コラム
2016年11月26日

【小倉正男の経済コラム】トランプ氏のTPP離脱:アメリカどころか世界をブッ壊す?

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■アメリカをブッ壊す

 次期大統領のトランプ氏が、TPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱を明言した。トランプ氏は、多国間貿易協定ではなく、2カ国間貿易協定を結ぶとしている。

 トランプ氏は、大統領選挙中に「2カ国間貿易協定では、最もタフで賢い交渉担当者を任命する」と語っていた。どうやら、そうしたことが現実味を帯びている。

 大統領選挙中とは違うトランプ氏を期待する面がないではなかった。だが、「君子豹変」とはならなかった。
トランプ氏の「孤立主義」「保護主義」は“筋金入り”ということが鮮明になった。

 共和党、民主党とも、これまでは大枠で「自由貿易主義」をアメリカの国益・国是として追及してきた。トランプ氏は、このアメリカの国益・国是を捨てるというのである。

 共和党どころか、アメリカをブッ壊す、ということか――。いや、アメリカどころではないかもしれない。下手をすれば、世界をブッ壊す事態になりかねない。もちろんそうならないことを期待したいのだが。

■「戦後」をブッ壊す

 多国間貿易協定であるTPPにしても、2カ国間貿易協定にしても、アメリカによる「ルール変更」の面がないではない。そうした動き自体がアメリカの衰退を映しているのは間違いない。

 大店の3代目が、お店がうまくいかないので店子の家賃を値上げするのに似ているのではないか。あるいは、傾いたヤクザが上納金をかさ上げするようなものか。ともあれ、「ルール変更」しろというわけである。

 それはともかく多国間貿易協定もそうだが2カ国間貿易協定も、自由貿易主義を基本とするのか、保護主義を基本とするのかで大きく異なる。「ルール変更」は同じだが、ベクトルが異なる。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 20:44 | 小倉正男の経済コラム
2016年11月20日

【小倉正男の経済コラム】トランプ次期大統領の岐路:自由貿易主義か?自国優先の保護主義か?

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■乱世の梟雄か、まっとうな人物か

 アメリカの次期大統領であるドナルド・トランプ氏は世界にどう対応するのか。世界はトランプ氏にどう対応するのか――。
 乱世の梟雄なのか、あるいは案外まっとうな人物なのか。まだ見えない。

 安倍晋三首相とトランプ氏の会談で、トランプ氏が何を語るか。注目はそこに集まったが、それは秘密にされた。

 ただし、唯一手がかりになりそうなのが、会談後の安倍総理の談話である。日米同盟について、安倍首相はこう答えている。

 「同盟は信頼がなければ機能しない。ともに信頼関係を築いていくことができる。そう確信が持てる会談だった」

■自由貿易主義か、自国優先の保護主義か

 結局、トランプ氏がまっとうな人物かそうではないかは、TPP(環太平洋経済連携協定)をどうするかで見えるのではないか。

 自由貿易主義を採るのか、自国優先の保護主義を採るのか――。トランプ氏が、このどちらを採るかで、世界経済は大きく変わる。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 14:47 | 小倉正男の経済コラム