(犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に残した相場格言を定期的に紹介。)※最新の情報に修正を加えてあります

【嵐の中にこそ割安株を拾う好機がある】
■異常気象時代には文左衛門式投資法は大いに使える
紀伊国屋文左衛門は、嵐を恐れず江戸へミカンを運び、大きな利益を得たと伝えられている。普通なら船を出すことをためらう荒天こそ、品不足と高値を生む好機だったというわけである。株式投資もこれに似ている。相場が平穏な時には多くの投資家が同じ方向を向き、割安な銘柄を見つけることは難しい。しかし、暴落相場という「嵐」が吹き荒れる局面では、優良株まで売り込まれ、本来の価値を下回る価格で買える機会が訪れる。安く買って高く売るという投資の基本に立ち返れば、嵐の中で買いに向かう「文左衛門式投資法」は、現代の株式市場でも十分に有効な考え方といえる。
※紀伊国屋文左衛門(きのくにや・ぶんざえもん)=江戸時代前期に活躍したとされる豪商。紀州、現在の和歌山県周辺の出身と伝えられ、荒天の中でミカンを江戸へ運び、大きな利益を得た逸話で知られる。この話は、危険を恐れず品薄の時期を見極め、商機をつかんだ例として語られる。相場格言では、暴落など人が避ける局面で割安な投資機会を見つける「逆張り」の象徴として使われる。
もっとも、大暴落という大嵐は頻繁に来るものではない。数年に一度あるかどうかという規模の下げを待ち続けるのは簡単ではなく、多くの投資家はその前に焦って買いに出てしまう。相場が少し下げただけで「もう底だ」と判断し、さらに下げて苦しくなることも少なくない。文左衛門式投資法で大切なのは、ただ逆張りをすることではなく、嵐の規模を見極める冷静さである。暴落に見えても一時的な調整にすぎない場合もあれば、市場全体の過剰な悲観によって、本来なら買われるべき企業まで売られる場合もある。その違いを見抜く目が求められる。
■世界経済にも広がる「異常気象型」の相場変動
近年は、気候の世界だけでなく、経済や金融の世界でも「異常気象」のような変動が増えている。新興国経済の減速、地政学リスク、金融政策の転換、為替の急変、資源価格の乱高下など、世界のどこかで発生した小さな嵐が、短時間で市場全体に波及することがある。大型の暴落を待たなくても、中小型の嵐は以前より起こりやすくなっている。そうした局面では、無理に上昇相場を追いかけるよりも、下げを待ち、恐怖が広がった場面で買い場を探す姿勢が有効となる。
ただし、嵐の中に飛び込むには準備がいる。資金を使い切っていれば、いざ好機が来ても買うことができない。普段から余力を残し、注目する企業の業績、財務、成長性を確認しておくことが重要となる。嵐が来てから慌てて銘柄を探すのではなく、晴れている時から「下げたら買いたい銘柄」を見つけておく。そうすれば、市場が大きく揺れた時にも、周囲の不安に流されず、落ち着いて判断できる。
■相場の「気象レーダー」を使い、嵐の兆しを読む
現代の投資家には、気象レーダーのように相場を観測する手段が数多くある。株価指数、出来高、信用取引残高、為替、金利、海外市場、企業業績などを注意深く見ていれば、嵐の兆しをある程度つかむことはできる。もちろん、相場の天気を完全に予測することはできない。それでも、何も見ずに船を出すのと、空模様を確認して出るのとでは、結果に大きな差が出る。異常気象の時代には、常に買い急ぐのではなく、嵐を恐れず、嵐に備え、嵐を好機に変える投資姿勢が一段と重要になる。文左衛門式投資法とは、暴落を恐怖として見るのではなく、準備した投資家だけに訪れる仕入れの好機として捉える考え方である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)


















































