
■AI時代の電力制約が新市場を形成
7月10日の東京株式市場は、日経平均株価が前日比813円88銭高の6万8557円73銭と大幅続伸し、TOPIXも15.71ポイント高の4036.08となった。米ハイテク株高を受けてAI・半導体関連が指数を押し上げる一方、物色は電力設備や不動産など周辺分野にも広がった。生成AIの普及とデータセンターの増設は、半導体需要だけでなく、電力供給や送配電網、蓄電設備への投資を促している。
なかでも系統用蓄電所は、太陽光や風力など出力が変動する再生可能エネルギーを電力系統に受け入れ、余剰電力を蓄え、需要が高まる時間帯に放電する役割を担う。AIによる電力需要の増加と再生可能エネルギーの普及が重なるなか、電力の安定供給を支える設備として重要性が高まっている。
■同じ関連株でも収益構造は異なる
ただし、「系統用蓄電所関連」を一括りに評価することはできない。事業モデルは、蓄電所を保有して運用収入を得る企業、用地や電力系統への接続権を確保して開発・売却する企業、蓄電設備を製造・供給する企業、AIや制御技術で運用を最適化する企業に分かれる。
保有・運用型は継続収益を期待できる一方、建設資金や借入金が膨らみやすい。開発・売却型は資本回転を速められるが、利益計上の時期によって業績が変動する。設備供給型では受注残や生産能力、原材料価格が収益を左右する。発表された開発カ所数だけでなく、系統接続の時期、投資額、稼働実績、営業キャッシュフローまで確認する必要がある。
■低PERと成長テーマが交差
ポート<7047>(東証グロース)は、京都府木津川市、長野県下伊那郡、京都府福知山市の3カ所で新たな開発投資を決定した。投資予定額は合計約11億円で、グリーンローンによる銀行借り入れを活用する。これにより、2027年3月期の開発投資は目標の10カ所に達し、稼働済み3カ所を含めて13カ所体制となる。
7月10日終値は2546円、会社予想PERは10.09倍だった。既存事業の利益成長に蓄電所の継続収益が加わる構図は評価材料となるが、開発拡大に伴う借入金、金利負担、投資回収期間は点検が必要だ。
ADワークスグループ<2982>(東証プライム)は、不動産事業で培った用地取得力や権利調整力を蓄電所開発に活用している。10日終値は396円、予想PERは6.29倍、PBRは0.91倍、予想配当利回りは5.05%。低PER、PBR1倍割れ、高配当に成長テーマが加わるが、蓄電所を売却して利益を得るのか、長期保有して運用収益を積み上げるのかで評価軸は変わる。
■接続権と資本効率が選別の軸に
系統用蓄電所では、土地を保有しているだけでは事業化できない。送配電網への接続可能性、接続までの期間、系統増強工事の費用、地域との調整が採算を左右する。変電所に近く、早期接続が可能な用地は、一般の不動産とは異なる希少資産になり得る。
一方、パワーエックス<485A>(東証グロース)のような設備供給企業は、低PER株というより将来の受注と利益成長を織り込む成長株に近い。同じ蓄電所関連でも、保有・開発企業と設備メーカーを同じ物差しで比較することはできない。
新しいバリュー株の条件は、単にPERが低く、成長市場に参入していることではない。用地、接続権、顧客基盤、制御技術など模倣しにくい資産を持ち、それを継続的なキャッシュフローへ転換し、資本コストを上回る収益率を確保できることが重要になる。
2026年後半相場では、AI・半導体そのものだけでなく、AIの拡大によって生じる電力不足や送配電網の制約を、どの企業が利益に変えられるかが焦点となる。開発件数の多さではなく、稼働実績、投資回収、財務規律まで見極めることが、テーマ株と新しいバリュー株を分ける条件となりそうだ。



















































