生成AI相場の次はフィジカルAIと値上げ力
脱デフレで再評価される日本企業の条件■5日連続最高値、それでも広がる「出遅れ感」
6月19日の東京株式市場で、日経平均株価は前日比196円57銭高の7万1250円06銭と7営業日続伸した。18日に付けた終値ベースの史上最高値7万1053円49銭を上回り、5日連続で最高値を更新した。朝方は米ハイテク株高を受け、AI・半導体関連に買いが先行し、7万2000円に迫る場面もあった。
一方で、相場全体が一枚岩で上昇しているわけではない。買い一巡後は利益確定売りに押され、日経平均は一時500円超下落して7万1000円を下回る場面があった。TOPIXは反落し、東証プライム市場では値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回った。指数は高値圏にあるが、投資家の体感温度にはばらつきがある。「指数は強いのに、自分の持ち株は上がらない」「人気株はすでに高くて買いづらい」という感覚は、むしろ自然である。
ここで必要なのは、上昇した銘柄を後追いすることではない。次に資金が向かう産業構造の変化を読み、まだ評価が追いついていない企業群を探す視点である。日経平均7万円時代の投資戦略は、半導体やAI、防衛、電線、重電といった主力テーマの次に来る「次の主役」を見極める段階に入った。
■画面の中のAIから、現実を動かすAIへ
生成AI相場は、文章作成、画像生成、検索、資料作成など「画面の中のAI」から始まった。だが、次の成長領域は現実世界に広がる。ロボット、工場、自動運転、物流、建設、医療・介護、店舗運営にAIが組み込まれる「物理AI(フィジカルAI)」である。
エヌビディアはロボティクス向け半導体、開発基盤、シミュレーション環境を打ち出し、世界の製造業や自動化企業を巻き込み始めている。日本企業にとっても、この流れは無縁ではない。ロボット、FA、工作機械、電子部品、自動車、精密機器、社会インフラを担う企業は、現実世界のデータと現場を持つ。AI相場はソフトウェアや半導体だけで終わらず、製造とサービスの現場に広がる可能性がある。
日本企業の強みは、現場の改善力、品質管理、長期取引、部品・装置のすり合わせにある。フィジカルAIの時代には、こうした地味に見えた強みが再評価される。AIを「使う側」の企業だけでなく、AIが動く現場を支える企業にも投資機会が生まれる。
■なぜ今、内需株なのか
もう一つの大きな潮流は、脱デフレである。長年の日本経済では、企業はコストが上がっても価格に転嫁しにくく、消費者も「安さ」を重視してきた。しかし、賃上げ、物価上昇、金利上昇が重なり、企業と消費者の行動は変わり始めている。
これから強いのは、単に安く売る企業ではない。顧客が納得して高い価格を払うブランド、サービス、体験価値を持つ企業である。投資家が見るべき指標も変わる。売上高の伸びだけでなく、客数を大きく落とさずに客単価を引き上げているか、既存店売上高が値上げ後も伸びているか、粗利益率を維持・改善できているかが重要になる。
7万円相場で注目すべき「シン・内需株」とは、平成型の低価格競争にとどまる企業ではない。令和型の値上げ力、省力化投資、資本効率改善を備えた企業である。指数上昇に出遅れた内需株の中にも、事業環境の変化によって評価が切り上がる候補は残されている。
■第1の注目領域は「プレミアム消費・外食」
第一の注目領域は、プレミアム消費と外食である。平成の内需株は、低価格、均一価格、大量出店が強みだった。しかし令和の勝ち組は、安さではなく、付加価値で選ばれる企業になる。
外食、食品、専門店、ホテル、レジャー、生活サービスのなかには、値上げしても客離れを起こさず、むしろ体験価値を高めて客単価を伸ばす企業がある。行列ができる外食、ファンが定着する商品、インバウンドと国内需要の両方を取り込むサービスは、7万円相場の中でも出遅れ内需株として見直されやすい。
重要なのは、値上げが単なるコスト転嫁で終わっていないかである。価格を上げても満足度を保ち、来店頻度や購買意欲を維持できる企業は、脱デフレ時代の本命になり得る。
■第2の注目領域は「金利ある世界」の地銀
第二の注目領域は、地域密着型の地方銀行である。ゼロ金利時代の地銀は、成長性に乏しく、低PBR銘柄の代表のように見られてきた。しかし、金利ある世界では景色が変わる。
貸出金利の改善、預貸金利ざやの拡大、事業承継や地域再編への関与、観光・再開発・設備投資向け融資など、収益機会は広がる。地域経済が賃上げ、設備投資、再開発、インバウンドで動き始めれば、地銀は資金供給の担い手として存在感を増す。
さらに、東証が資本コストや株価を意識した経営を求めるなか、低PBRを放置してきた企業には変化が迫られる。増配、自社株買い、政策保有株の縮減、成長投資の明確化を進める地銀は、金利上昇とガバナンス改革の両面から再評価される余地がある。
■第3の注目領域は「省力化・DX・フィジカルAI」
第三の注目領域は、省力化、DX、フィジカルAIである。人手不足は、もはや一時的な景気問題ではない。外食、小売、物流、製造、建設、介護では、賃上げしても人が足りない状況が続く。
そこで企業が投資するのが、予約・決済システム、在庫管理、配送効率化、画像認識、ロボット、センサー、工場自動化である。内需企業を裏側から支えるソフトウェア企業、FA機器メーカー、電子部品メーカー、ロボット関連企業は、フィジカルAI時代の有力テーマになる。
フィジカルAIは、遠い未来の夢物語ではない。人手不足を補い、生産性を高め、店舗や工場の利益率を改善する現実的な投資対象である。生成AI相場の次に、現場を変えるAIが評価される局面は近づいている。
■失敗しないための3つの目利き
ただし、日経平均7万円相場だからといって、内需株なら何でも買えるわけではない。第一に確認すべきは「値上げ力」である。月次や決算で、客数が大きく減らずに客単価が上がっているか、既存店売上高が伸びているかを見る必要がある。
第二に「資本効率改善」の姿勢である。現金をため込むだけでなく、増配、自社株買い、設備投資、人的資本投資をどう組み合わせるかを示す企業ほど、投資家の信頼を得やすい。
第三に「一過性需要への依存度」である。インバウンドは追い風だが、それだけに頼る企業は為替や旅行需要に左右される。国内の賃上げによる消費回復を土台に持つ企業こそ、持続性がある。
■7万円相場で探すべきは、次の主役である
日経平均7万円台は、達成感と過熱感を同時に意識させる水準である。6月19日の市場でも、日経平均は最高値を更新した一方、TOPIXは反落し、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回った。相場は強いが、選別色も強まっている。
だからこそ、投資家は高値に飛び乗るのではなく、まだ評価が追いついていない構造変化を探すべきである。生成AIからフィジカルAIへ、低価格競争からプレミアム化へ、ゼロ金利から金利ある世界へ。この三つの変化が重なる場所に、次の日本株の主役が生まれる可能性がある。
平成の価格評価で放置されたまま、令和の成長条件を備え始めた企業を探すこと。それが、日経平均7万円時代の歩き方である。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 14:00
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