株価の最大のベースを形成するのは、もちろん「景気」である。好景気なら株高、不景気なら株安となるのは、洋の内外を問わず株式投資の初歩中の初歩の鉄則である。米国で金融安定化法が成立したにもかかわらず株安が止まらないのも、景気が不況どころか大恐慌以来の経済危機が再来すると懸念されているからだ。日本も、麻生太郎首相が自民党総裁選挙以来、しつこく景気対策、景気対策と連呼するものだから、庶民一般のサイフのヒモは余計に固く締まってしまったような印象が強い。
この「景気」ほどではないが、同じ「気」がつく「天気」も、やはり株価形成のファンダメンタルズの一部を形成することがある。例えば、ファーストリテイリング(9983)やポイント(2685)などのアパレル関連のSPA(製造小売り)株が、ここにきて急に動意付いたのも、9月後半の気温の低下が引き金になっている。実際に10月早々に発表された両社の9月の月次売り上げ実績も、秋冬物が順調な売れ行きとなって前年同月比プラスと伸びて株高が正解だったことを裏付けた。
景気指標は、遅行性があるから、米国を追ってこれからドンドンと景気後退を浮き彫りにする経済統計が出てくるはずである。株式投資の鉄則からは「不景気は株安」で、「不況下の株高」が示現されるまでにはまだまだ株価の下値鍛錬が予想されることになる。となればここは「天気」頼みとするのも、ゲリラ戦的に有効となってくる。
気象庁の寒候期予報では、この冬は暖冬傾向となっているようだが、一回着込んだセーターは、少々、気温が高くなったくらいではなかなか脱がないのは、消費者心理も投資家心理も同じである。ちょっと早いが、寒さ対策がここからの銘柄選別のポイントに浮上することになる。
寒さが募れば「鍋」となるのは、オジサン、オトーサンたちが待ちに待った冬の一大イベントであるからだ。それでなくても食品価格の相次ぐ値上げや食の安全意識の高まり、景気減速などで、「外食」離れ、「内食」傾向が高まっているのである。「鍋」を囲む一家揃っての食卓風景は、気持ちもフトコロも温まらせてくれること請け合いとなる。
アパレル株の次には、「鍋」の具材関連の出番が近付くことになる。ホクト(1379)、雪国まいたけ(1378)の農業株や水産株などが定番の食材関連となり、これが農薬株、肥料株にまで広がれば、もう一大テーマ株ということになる。
浅妻昭治(あさづま・しょうじ)
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。