フェローテック<6890>(JQ)
液体なのに磁力に反応する不思議な
「磁性流体」の世界的企業
●半導体製造装置用シール剤など先端分野には不可欠
フェローテック<6890>(JQ)は、磁性流体やサーモモジュール分野で世界的なシェアを誇る。世界的とはシェアが70%程度と高いことだ。用語解説的となるが、若干紹介すると、「磁性流体」は、通常、鉄などの金属固体を磁石に近づけるとくっつくが、液体でありながら磁石にくっつくという不思議な物質である。1960年代のアメリカNASAで、無重力空間での液体燃料を補給するために研究されたことに始まる。
固体の磁性体と同じように磁界に反応し、意図する位置に保持させたり変化させたりできる材料としては唯一の素材。その正体は、直径が10nm程度の磁性超微粒子、水、有機溶剤、界面活性剤などによって成り立っている。
使われる先は、スピーカーへの応用、あるいはコンピューターのHDD(ハードディスクドライブ)内に用いられる導電性防塵シールや半導体製造装置用真空シールなどのシール剤として必要不可欠な製品として存在感を発揮している。同社は、この真空シールなどの輸入販売を目的に設立した会社である。
一方のサーモモジュールは、熱電半導体を用いたヒートポンプの一種。半導体製造工程のウエハクーリングプレート、自動車温調シートなどに使用される。可動部分がなくコンパクトなため温度制御に優れている。小型、軽量で精密な音調ができるため応用範囲は広い。
同社の売り上げは、事業を製品用途の類似性と取引形態により種類別に区別し、「装置関連事業」「電子デバイス事業」「CMS事業」の3部門に区分している。
(1)装置関連事業=主な製品は真空シール、石英製品、シリコン製品など。前期は売り上げ37.0%増の159億7200万円(構成比率49.1%)。同部門の営業利益は7.3%増の20億1400万円(構成比率88.0%)。売り上げ、利益ともこの装置関連が稼ぎ頭。
(2)電子デバイス事業=主な製品はサーモモジュール、磁性流体など。前期は売り上げ55.1%増の52億8700万円(構成比率16.2%)、営業利益では6500万円の黒字に転換した。
(3)CMS事業=他社製品を製造する事業。製品は多岐にわたる。顧客との守秘義務契約のため詳細は発表されていないが、太陽電池用シリコン単結晶引上装置、シリコンウエハ加工、工作機械製造などがある。前期は売り上げ29.1%増の114億5800万円(構成比率35.2%)、営業利益で43.1%増の2億6400万円(構成比率22.8%)。
●中国含むアジアでの営業利益が約半分を占め、中国進出成功組
なお、地域別内訳では、売上高は「日本国内」が213億5400万円、中国中心の「アジア地域」が187億4000万円、「欧米地域」で89億6100万円と、日本とアジアが肩を並べる。営業利益では、アジア地域が11億2300万円と、日本の8億3000万円を抜いて、稼ぎ頭。早くから、中国進出を果たした効果が現れている。
今期については、装置関連事業は真空シール拡販を目的に設立した台湾及び韓国のメンテナンス会社を中心に営業を強化。石英製品は、海外顧客からのOEM製品の増加要請に応じて加工設備の増強を図る。
電子デバイス事業では、自動車温調シート向けに加え、需要が伸長しているCCDカメラ向けサーモモジュールの受注拡大に努める。CMS事業については、不採算受託製品の見直しを行い、太陽電池用シリコン単結晶引上装置及び関連製品での受注拡大を目指す。また、中国工場での操業度と歩留まり向上によりCMS事業の収益向上に努める。
●配当性向低く増配期待強く PERは12.5倍と割安水準
株価は、2003年以降、概ね下値680円、上値1000円の往来で推移している。移動平均線との関係では、昨年12月に25カ月線を上抜いて買い転換、その後は移動平均線の上昇を待つ形でモミ合っている。1000円に乗せてくれば、次のチャートのフシである2004年4月水準の1270円程度も見込めるだろう。仮に、その水準まで買ったとしてもPERは約18倍と、割高感はない。ただ、今期の年10円配当(前期は記念を含め年12円)に対する配当性向が14%と低く、今後、増配の可能性が出てくれば、配当面からも注目度は高まるだろう。
買い目標=900円、 売り目標=1150円
月足チャートは4年におよぶ680〜1000円の大モミ合い相場