
■課題解決に向けてオールジャパンでの取り組みも活発化
乗用車などガソリンエンジン自動車は電気自動車や燃料電池自動車へのシフトが想定されるため、次世代型の微細藻類由来バイオ燃料の需要ターゲットについては、高高度を長時間飛行するため液体燃料から電気などへの動力源の転換が難しい航空機用ジェット燃料、長距離輸送・稼働の必要性から電気自動車や燃料電池自動車への100%代替化が難しいディーゼルエンジン自動車用燃料とされている。
2008年以降、日米欧の主要航空会社は従来型のバイオ燃料を混合したジェット燃料でのテストフライトを実施し、米国ではヘリコプター用燃料として微細藻類由来バイオ燃料の利用が始まっているようだ。IHI<7013>はジェット燃料向け微細藻類由来バイオ燃料の市場規模を20年に8000億円と試算している。
次世代型の微細藻類由来バイオ燃料の事業化に向けた課題は、燃料に適した微細藻類の選定や改良、微細藻類を効率的に大量培養する方法や油脂の抽出・精製技術の確立、そして低コスト化である。微細藻類にはさまざまな種類があり、株ごとに培養条件や油脂成分が異なるため、それぞれの株に最適の大量培養・油脂抽出・精製工程の技術確立が必要になる。
■ユーグレナ、IHI、デンソー、神鋼環境ソリューションなどが次世代バイオ燃料事業化に先行
国内ではユーグレナ<2931>、IHI<7013>、デンソー<6902>、神鋼環境ソリューション<6299>などが次世代型バイオ燃料の事業化に向けて、それぞれ微細藻類を選定し、大量培養・油脂抽出・精製技術確立の研究開発を進めている。そして課題解決に向けてオールジャパンでの取り組みや体制づくりも活発化している。
12年3月には、産業競争力懇談会(COCN)が政策提言として「微細藻類を利用した燃料の開発」を取りまとめた。航空分野でIATA(国際航空運送協会)が09年〜20年に年平均1.5%の燃費効率改善、20年〜50年に炭素中立的な成長達成、50年までに05年比で50%のCO2排出削減達成を目標としていることもあり、高い油脂生産性を持ち食料との競合を緩和できる次世代型の微細藻類由来バイオ燃料に注目した。開発に向けてオールジャパン体制で取り組むことが必要とするともに、技術開発ロードマップで技術完成目標を20年度末とした。
12年6月には微細藻燃料開発推進協議会が設立された。20年度までに微細藻燃料の一貫生産システムの確立を目標としている。設立時の参画企業は発起人3社のJX日鉱日石エネルギー(JXホールディングス<5020>)、IHI<7013>、デンソー<6902>、および日立プラントテクノロジー(13年4月、日立製作所<6501>に吸収合併)、三菱商事<8058>、出光興産<5019>、ユーグレナ<2931>、ネオ・モルガン研究所、いであ<9768>、ヤンマーの10社である。
そして14年7月には、航空・燃料関連の30以上の企業・団体が参画する次世代航空燃料イニシアチブ(INAF)が、20年までの航空機用バイオ燃料の実用化に向けたロードマップ策定作業を開始することを発表した。原料を家庭用ごみ、藻類、非食用植物の3分野に分けて、それぞれ原料調達ルート、燃料精製プラント、燃料サプライチェーンなどについて協議し、事業モデルや工程表を15年4月までに策定する。オールジャパンで原油に依存しない次世代型バイオ燃料の実用化を目指す方針だ。
INAFの参画企業・団体(50音順)は、IHI<7013>、伊藤忠商事<8001>、宇宙航空研究開発機構、川崎重工業<7012>、グリーンアースインスティテュート、産業技術総合研究所、JFEエンジニアリング(JFEホールディングス<5411>)、シェル日本、住友商事<8053>、石油資源開発<1662>、全日空(ANAホールディングス<9202>)、双日<2768>、千代田化工建設<6366>、東京大学、東洋エンジニアリング<6330>、豊田中央研究所(トヨタ自動車<7203>)、成田国際空港、日揮<1963>、日揮ユニバーサル(日揮<1963>)、日本アジア投資<8518>、日本エネルギー経済研究所、日本貨物航空(日本郵船<9101>)、日本航空<9201>、ネオ・モルガン研究所、野村リサーチ・アンド・アドバイザリー(野村ホールディングス<8604>)、日立造船<7004>、フェニックス・ビジネス、ボーイング社、三井造船<7003>、三井物産戦略研究所(三井物産<8031>)、三菱総合研究所<3636>、三菱重工/三菱日立パワーシステムズ(三菱重工業<7011>、日立製作所<6501>)、そしてユーグレナ<2931>である。
【特集】次世代型の微細藻類由来バイオ燃料関連
■(1)食料競合が小さい非穀物系の次世代型バイオ燃料が求められる
■(2)課題解決に向けてオールジャパンでの取り組みも活発化
■(3)主要関連企業の開発動向
■(4)その他有力銘柄、関連銘柄一覧