
金融緩和政策を柱としたアベノミクスを手がかりに昨年秋以降、急速に円安が進んだ。しかし、見方を変えれば民主党政権前は1ドル・110〜120円だった円相場は75円台へ円高となっていたことに対する修正と見ることもできる。つまり、現在の93〜94円は、円高修正の局面ということにもなる。
急ピッチでス進んできた円安が、ここに来てスピードが鈍っていることはなぜか。(1)相場波動的に見れば、一応のリバウンドが終了した、(2)国内外からの円安に対する視線が厳しくなっている、ことなどがあるだろう。とくに、先のG20では、日本への名指しの批判はなかったものの、通貨安競争に対する牽制は共同声明として盛られた。円安政策ではなく、デフレ脱却が目的という日本側の言い分が通った形である。
しかし、(1)共同声明として盛られた以上はこれまでのような急ピッチの円安は難しくなった、(2)さらに円安策を採ろうとすれば、日本の言い分であるデフレ脱却が思うように行っていないことをアピールする必要がある、というこれまでとは違う条件が設定されることになったといえる。
昨年秋から株の値上りが20%を超え、円安も20%を超えている。マーケットから見ても、ひと呼吸入れるところだろう。また、別の見方をすれば、「国内景気対応」は一段落し、次は、「外交重視」の順番とも言えるだろう。実際、日米トップ会談、日ロ首脳会談と外交は本格化している。外堀を埋め、次は、中国外交交渉の本格化だろう。内外政策に大きい手を打ったことで、今後は内外事案の詰めを行い、参議院選挙に臨むという流れだろう。
その場合、3月あたりの種々の経済指標を見た上で景気回復がおもわしくないということになれば、もう一度の「円安政策」ということになるだろう。1月の貿易収支は単月としては過去最大の赤字でだった。さらに、2月も赤字が続くようなら、国民だけでなく外に向かっても円安の必要性を訴えることができる。
日経平均は20日に1万1510円と年初来高値を更新したものの、その翌日は急反落した。このことからも上値に対する警戒感は強いものがうかがえる。指標株的存在のトヨタ自動車(7203)は12日につけた高値5050円を抜くことができないでいる。注意深く見れば、先行した銘柄は上値が重くなり、出遅れ銘柄が次々と買われることで日経平均などの指数は強い状態が維持されている。野球で言うなら、3、4番の中軸打者がモタつく中を下位の打者で頑張っている姿である。
今後、理想的な形としては、出遅れ銘柄から、再度、トヨタなど優良株にスイッチできることである。しかし、これが、うまく行くかどうかは不透明である。とくに、例年、3月という月は動き難い月であることを考えるとなお更、難しいといえる。尖閣で交戦とか北からミサイル飛来といった突発的なことがないかぎり大きく下げることは予想し難いものの、「儲け難くなった」という声が増えていることも事実である。こういう時は、『休むも相場』だろう。4月からの新年度に好ダッシュができるよう、今は刃を磨いておくところだろう。