【HORUS Investmentの杉山哲夫代表に聞く】
ニューヨークで為替等ディーラーとしての豊富な経験を持つHORUS Investment(海外投資運用専門会社=本社・香港)の杉山哲夫代表にNYダウ、為替等について東京事務所で聞いた。
――ニューヨークで、為替のプロとしてご活躍の経験から、今回のアメリカの金融の波乱はどのようにご覧になっていますか。
【杉山氏】 正直、アメリカ国債の格付けまで下がることまでは予想していなかった。しかし、為替に携わってきた長い経験から、これまでとは違うという直感が働いて保有していた通貨、株などは7月26日に全て売却しました。
■金融・経済の世界に政治が絡むと経験則は通じない――どのような直感でしたか、是非、お聞かせ下さい。
【杉山氏】 長い経験の中で、私が基本としていることのひとつに、『金融、経済の世界に政治が絡んでくると経験則が通じなくなり読めなくなる』ということです。もちろん、EUの財政危機の問題もあります。しかし、それ以上に、今度のアメリカの債務上限枠拡大をめぐっては、オバマ民主党と共和党が、来年の大統領選挙を控え政治的な駆け引き材料に巻き込まれたことが大きいと思います。これまでの量的緩和による資金が設備投資、住宅投資などに向うのではなく雇用の増加に結びつかないまま「商品」に流れ込み、実体経済と商品相場が遊離していたという問題のあったことは否定できませんが。
――アメリカは来年、大統領選挙です。
【杉山氏】 共和党の候補に誰が出てくるかです。テキサス州のペリー候補が出てくるようだと、来年の大統領選挙ではオバマ大統領は苦しくなるでしょう。
■NYダウより「S&P500」が1100ポイント維持するか注目――NYダウはいかがですか。
【杉山氏】 その前に、アメリカでは、われわれのようなプロはNYダウで話をすることはありません。このことを申し上げておきます。プロ運用者の基本は、「S&P500」です。NYダウは言うまでもなく、わずか30銘柄で構成されています。S&P500は銘柄全体の60〜70%カバーしています。それでも、敢えて、S&P500とNYダウの関係を言うなら、S&P500の1ポイントは大体NYダウ9ドルていどの変動です。
――そのS&P500は、どのような状況ですか。
【杉山氏】 リーマンショックの2009年3月に666ポイントまで下げ2010年4〜5月に1920ポイントまで戻した。しばらく、モミ合い、今年5月の1370ポイントまで上げ調整となっています。週末は1178ポイントですが、今後、1100ポイントを維持できるかどうかが最大の見所です。もし、1100ポイントがキープできないと1000ポイントまで下げる心配があります。そうなると、S&P500とNYダウの関係でいえば、NYダウは900ドル下げることになります。当然、日経平均も9000円割れの心配が強まります。
■米国10年債の金利3.25%で一気に円安へ――円高はどうでしょうか。
【杉山氏】 以前から、今年の年末から円安方向とみていました。ただ、アメリカの金融政策当局が2013年半ばまでは低金利政策を続けると表明したことで、円安に向う「時期」については読み難くなりました。しかし、日本の政権交代もあるので、日本にとって特別、悪い材料はありません。1ドル=75円を大きく上回るような円高にはならないとみています。今後、とくに注意しておくべきは米国10年債の金利です。現在の2%が、もしも3.25%程度へ今より1%ていど高くなれば、円安(ドル高)が鮮明となるとみています。個人投資家の方は米国債金利が3%を超えてくるかどうかを注意してみておくべきです。そうなれば、ドル・キャリーから円・キャリーの動きが強まります。
――ありがとうございました。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 20:05
|
特集