
最近とんと聞かなくなった相場用語に「男性的な下げ」というのがある。かつては相場の調整局面で、値幅整理優先で急激に調整するのを「男性的な下げ」、値幅よりダラダラと日柄を掛けて調整するのを「女性的な下げ」と言い習わしてきた。この相場用語が存在感を失った事情については詳らかではない。セクハラと非難されそうなのを慮ってのことか、それともこのところ草食系男子が叢生し、肉食系女子が跋扈して男女の区分けが不透明化した社会変化を反映してのことなのか、研究課題ではある。
この相場用語の死語化とともに、暴落時の「狼狽売り」も、「リスク回避売り」と言い換えられているようである。かつては株価の急落に次ぐ急落、投げ売りが投げ売りを呼ぶ相場を前に、大手証券などからは決まって「狼狽売りは慎め」、「安値は絶好の買い場」などとヒステリックにマーケットコメントが連呼され、そのたびごとに底抜けを繰り返す「セリング・クライマックス」の緊迫感が伝わってきた。
■コツン」という音もなしにリバウンド・・・
先輩からは、暴落時に兜町の地場を歩く時には、笑顔をみせるのは厳禁だとアドバイスを受けたことも思い出す。カラ売りをしていると勘繰られるからということだった。それが「リスク回避売り」ではどこか余裕があるようで、暴落時につきものの受け渡し不能だの証券事故だのとかとは無縁のようだと妙な安堵感を覚えさせる。
今回の「1000年に1度」の大災害とそれに重なった原発事故に直撃された相場急落も、2日も3日も連続してストップ安をする銘柄が続出しただけに、まさに「男性的な下げ」に違いない。
しかし相場の急落よりももっとリアリティーがあったのは、日々、テレビ画面で繰り返し放映された大津波の濁流と被災地のがれきの山、さらに水素爆発で崩壊した原子力発電所の原子炉建屋などの映像である。そのリアリティーに圧倒されて、相対的に暴落相場自体も矮小化され、「セリング・クライマックス」の緊迫感も大底を打つ「コツン」という音もなしにリバウンドした。(続きと詳細は「浅妻昭治のマーケットセンサー:メールマガジン」に掲載。果たして注目銘柄は?)
浅妻昭治(あさづま・しょうじ)
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。