
セ・パ両リーグとも年間試合数は144試合。直近での勝率ではソフトバンク6割6分2厘、中日は5割6分1厘と違いはあるものの、両チームとも本拠地が東京ではないという共通項がある。言うまでもなく、ソフトバンクは福岡県福岡市、中日は愛知県名古屋市が本拠地。関東の常勝チームの巨人と西武は、それぞれセ・パで3位に沈んだ。
こうした動きには、いくつかのヒントが含まれているように思われる。とくに、圧倒的な強さを誇ってきた巨人、西武のチーム不振が今年だけではない。ここ数年冴えない。実際、巨人の本拠地球場東京ドーム<9681>(東1)の株価は安値圏に沈んだまま。西武にいたっては母体の西武鉄道は何年か前に上場廃止に追い込まれている。最近は、スポーツニュース以外で、テレビにプロ野球が登場することはほとんどなくなった。むしろ、日本サッカーやアメリカ大リーグの放映が目につく。最近は、巨人のマークのついた帽子をかぶっている子供たちを見ることも少なくなった。
かつての、「巨人―大鵬―卵焼き」の定番は消えてしまったようだ。今や、プロスポーツを目指す若い人は地方のチームに入団するケースが目立ち、腕に自信があればアメリカへ渡る。野球以外にサッカーを選ぶ人も増えている。こんな具合だから、産業界でも東京発の全国均一型を狙ったビジネスモデルは影が薄くなっている。
とくに、ビジネス界では情報の発達で東京と地方の格差が縮まり、固定費負担の大きい東京に居る必要もなくなってきている。実際、投資の世界では、証券取引所の「適時情報閲覧サービス」によって、全国どこにいても平等に情報が入手できる。
今後、こうした傾向は、まだ、しばらくは強まりそうだ。
(1)グローバル化の進展で企業、投資家の目が外に向く。これまで、東京は日本において絶対的存在だったが、これからは世界の中の1つの都市としての位置づけとなる
(2)日本は農業等も含め日本再生のためには、「道州制」の導入など地方活性化が求められ、地方の時代が来る
(3)「デジタル情報」より、「人を介したアナログ情報」が見直されるには、まだしばらく時間がかかる。社会全体が短期での成果を求める風潮が強くなっているからだ。行き着くところまで行かないと中長期的な発想は難しい・・・ことなどがあるだろう。
とくに、現在の株式マーケットでは、「モグラたたき」のごとく、短期売買、それも超短期売買が中心となっている。この背景には、名門企業のJALの破綻や東京電力<9501>(東1)株の暴落などで長期投資に対する不安があることも事実。しかも、さらに来年には、現在の処理時間0.002秒を上回る超高速の売買システムが取引所に構築されるという。まさに「速いもの勝ち」の時代がいっそう強まる。
ただ、思い出されることがある。かつて、「大きいことは良いこと」として、量や規模の拡大を追及した。その結果、1980年代後半の「バブル経済」を作り出し、そして、その崩壊に苦しんだ苦い経験がある。今度もまた、「速い」ことに対する天井がどこかで来るのかもしれない。その反動と反省が来るまでは、世の中に「ゆっくり」主義のリズムが生まれるのは無理なのかもしれない。