
自他ともに「アラブの盟主」を任じているエジプトが動揺すれば、同様の民主化要求が、アフリカの独裁国家諸国に伝播するだけでなく、対イスラエル政策を含め中東地域の地政学リスクを高めると懸念されたためだ。
「ソ連崩壊」以来、一党独裁国家の破綻、軍事的解放、民主化が、必ずしもバラ色の「平和の配当」の恩恵をもたらさなかったことは近代政治の冷厳な事実でもある。かえって権力の空白化が、地域紛争や民族問題の対立を激化させ、政情を不安定化させてきた。対テロ戦争の最前線とされるイラク、アフガニスタンが、いまだに泥沼状態からの出口戦略を描き切れていないことにも明らかである。
ことにエジプトといえば、真っ先に浮かぶのは54年前のあの「スエズ動乱」である。当時のナセル大統領が、スエズ運河の国有化を宣言したことをキッカケに、イスラエルがシナイ半島に侵攻して英仏両国が軍事介入、エジプトが、スエズ運河を通航不能とさせた第2次中東戦争である。このスエズ動乱が、その後の第3次・第4次中東戦争、さらに第1次・第2次石油危機の引き金になったことを想起すれば、時計の針がまるで54年前に逆戻りする既視感さえ覚える。
現に前週末の米国市場では、スエズ運河を通航不能となったタンカーが、喜望峰回りとなってタンカー市況が高騰すると先取りして海運株が急騰したという。となれば、わが東京市場でも取り敢えず海運株でフォローしておくところである。日本郵船<9101>(東1)、商船三井<9104>(東1)、川崎汽船<9107>(東1)、飯野海運<9119>(東1)、共栄タンカー<9130>(東1)が、ターゲット銘柄となる。さらにスエズ運河といえば、運河の浚渫・拡幅工事に実績のある五洋建設<1893>(東1)、株価2ケタ台で石油危機へ向け胎動していた国際石油開発帝石<1605>(東1)まで広げるのが54年前の株式投資の定石であった。
浅妻昭治(あさづま・しょうじ)
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。