
しかし、株式市場は、被災者の皆さんの神経を逆撫でするかのように、暴落後の早期復旧・復興へ足を速めているようである。2000円超も暴落した日経平均株価は、すでに急落幅の3分の2戻しをクリアし、前週末25日には昨年来高値更新銘柄が131銘柄にも達し、主力株の2割弱が、地震前の株価を回復した。日経平均のローソク足は、週足で長大下ヒゲを引いた大陰線のあとに短い陽線が続く陰のはらみ足を示現しており、何かキッカケがあれば上昇転換すると、チャート・セオリーでは示唆しているそうである。
キッカケが何になるかといえば、その最大の材料は、東京電力<9501>(東1)の福島第1原子力発電所の事故動向になることは間違いないだろう。事故の復旧が、順調に収束に向かっているのか、悪化しているのかに、株価は引き続き敏感に反応するからである。収束シナリオ、膠着シナリオ、悪化シナリオなどがさまざまに想定されており、もちろん収束してもらわなくてはならないが、悪化シナリオも頭の隅に置いておかなくてはならない。
ということは、今後の相場展開は、東電の株価の動向が、キーファクターになることになる。同社株は、地震発生、原発事故で3日連続のストップ安と急落して昨年来安値715円まで売られ、そこから2日連続のストップ高を演じるなど値動きの荒い展開が続いた。この急反発は、同原発事故が、原子力損害賠償法上、「異常に巨大な天災地変」に該当し被害者への賠償責任が免責されると伝えられたことや、政権幹部が、電気料金の引き上げなどに言及したことなどがプラス材料視されたことが大きい。今後の株価も、一義的には復旧動向に左右されるが、政治銘柄化する展開も捨て切れない。
巨大地震のあとの余震頻発で気象庁は、警戒感を緩めてはいけないと警告している。株式市場も同様で、大暴落のあとの余震は予断を許さない。平常時対応ではなく緊急時対応をキープしつつ、東電株の一挙手一投足に一喜一憂するのが正しい対処法となりそうだ。
浅妻昭治(あさづま・しょうじ)
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。