NYダウが、リーマン・ショック前の株価水準を回復し、遅ればせながら日経平均株価も、5カ月ぶりに1万円大台を回復した。しかし日米の両市場とも、手放しの強気説に満ち溢れているかといえば、どうもそうでもないらしい。中国の金利引き上げ観測、欧州のソブリンリスク再燃などの懸念材料が、依然として不安定化要因として控え、「ドル・キャリートレード」の巻き戻し一巡後のヘッジファンドの動向なども、予断を許さないと警戒感が去らない。
米国市場では、11月25日の感謝祭通過後にスタートするクリスマス商戦の動向が、株価の先行きを決定するとの見方が、一般的なようだ。この11月25日は、わが東京市場でも重要分岐点になる可能性がある。例のグリーン家電のエコポイント制度のエコポイント数の変更が関連する。家電製品を11月30日までに購入した分にはエコポイントがフルに交付されるが、12月1日以降の購入分は交付ポイントがほぼ半減する仕組みとなっているからである。11月25日の月給日から30日の購入期限まで、まさしくクリスマスセール、年末年始商戦を先取りする購入客の大賑わいが予想されている。
すでに前週末の土日も、家電量販店に購入客が大挙押し掛け、係員からエコポイント制度の説明を聞くだけで30分、1時間の待ち時間はザラとなったようである。しかも量販店に在庫はなく、家電製品が手元に届くのは早くても年末ギリギリという。エコポイント交付申請書類には、家電製品の保証書のコピーを貼付する決まりとなっている。やっと製品が手元に届いて申請書類を提出しても、その時点での予算の消化次第では、エコポイントが満額交付される保証はなく、購入客もリスク覚悟の綱渡りを強要されるわけだ。
今年9月のエコカー購入補助金の申請受付終了騒ぎとウリ二つである。受付終了前に駆け込み需要が発生して自動車販売が急増したが、9月8日に経済産業省が終了を発表した途端に、自動車ディーラーの店頭に閑古鳥が鳴いた風景は、テレビ画面で再三にわたり放映された。株価材料としてもすでに周知のことで、事前予想通りに10月以降の自動車販売は大きく反動減となった。
ただし自動車株の株価は、この自動車販売とは逆の推移となった。受付終了発表で下ぶれたが、ここを安値に反転上昇、前週末までに20−30%上昇したケースも出た。もちろんこの上昇は、補助金制度終了が悪材料出尽くしとして示現されたわけではない。自動車各社が、自らインセンティブ政策を講じて販売減を押し止めたことや円高の後退、さらに内部要因としては売り方の買い戻しなども反騰エンジンとなった。
今回のエコポイント交付点数の変更が、自動車株に替わってエレクトロニクス株の株価に刺激を与えるか試してみる価値はありそうである。それでなくてもこのところ、ソニー(6758)を別格にしてエレクトロニクス株の自動車株への出遅れ感が目立っていた。東芝(6502)、パナソニック(6752)、シャープ(6753)などに「第2の自動車株」を期待してチャレンジしてみるのも一法かもしれない。
浅妻昭治(あさづま・しょうじ)
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。