
主力輸出株の軒並みの年初来安値更新と急反発は、この「死んだふり」なのか非常に悩ましいところだ。当初は、先に発表がスタートした米国企業の4−6月期の好決算が、後退傾向を強める景気指標の数々のなかに埋没し、好悪材料の綱引きが株価にはマイナスに作用した。それが今度は、好決算が悪景気指標を吹き飛ばし兼ねない方向にやや風向きが違ってきたのである。「死んだふり」ならサマーラリーがつながることになるが、それは期待のし過ぎで、売り方の買い戻しが一巡するとまたも下値を探る単なるアヤ戻しなのか、大きなイベントの欧州市場のストレステスト(資産査定)を通過した今週が、ヤマ場となりそうだ。
この「死んだふり」は、兜町の専売特許ばかりと思っていたら、最近ではそうでもないらしい。日本の永田町でも現在進行中のようだ。鳩山由紀夫前首相、小沢一郎前民主党幹事長の出処進退である。確か6月に辞任した鳩山由紀夫前首相は、次の総選挙には出馬せず政界からも引退すると表明し、「政治とカネ」疑惑の続く小沢一郎前幹事長にも引導を渡して政界の表舞台から姿を消したはずである。ところが、参議院選挙で民主党が大敗した途端に、鳩山前首相は、次回の総選挙への出馬意向を表明し、小沢前幹事長も、9月予定の民主党代表選挙への立候補などがマスコミで観測報道されている。
「死んだふり」なのか、お得意の「ぶれ」なのか、なおウオッチをしなければならないが、民主党自体が、衆参の「ねじれ国会」を前に八方塞りとなっている間隙を突いていることだけは間違いなさそうだ。政策的にも、予算関連法案が成立するのかしないのか、役人は与党、野党のどちらを向いて政策進講をしたらいいのか迷うところとなる。8月末に迫った来年度予算の概算要求締め切りを前に、毎年恒例の「一丁目一番地」政策のアドバルーンが、いまだにどこの省庁からも一つもあがらないのは、必ずしも政府委員の国会答弁禁止や事業仕分けなどと役人イジメの政策を繰り出してきた結果ばかりでもなさそうだ。即ち、政策の手詰まりである。
勢い残るのは、日銀の金融政策頼みとなる。国債の買い入れだろうと、円高阻止の為替介入だろうと市場にさらに大量の資金を供給、超緩和政策を加速しデフレ脱却を図るほかない。となると、次のテーマ株の一つには金利敏感株が浮上することになる。有利子負債ランキングの上位に位置する銘柄である。
トヨタ自動車(7203)、ホンダ(7267)、日産自動車(7201)の自動車株、東京電力(9501)、NTT(9432)の公益株、三菱商事(8058)、住友商事(8053)、三井物産(8031)の大手商社株、野村ホールディングス(8604)、大和証券グループ本社(8601)の証券株などは、逆張りシナリオも一考余地がありそうだ。
浅妻昭治(あさづま・しょうじ)
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。