
菅副総理兼財務大臣は「平成22年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」について報告し、了承されたと発表した。そして、閣議後の記者会見に応じた菅副総理は、その内容を次の通り説明した。
「平成22年度の国内総生産の成長率は、昨年12月25日に閣議了解したときと同じですが、実質1.4%程度、名目で0.4%程度のプラスに転じると見込まれております。従来マイナスでありましたので、そういう意味では、プラスの程度は少ないですが、しかしプラスに名目が転じたのは、やはり大きな変化だと思っております。政府としては、景気の持ち直しの動きを確かなものにするため、緊急経済対策を着実に実施するとともに、新成長戦略の推進を通じて、成長のフロンティアを拡大し、新たな需要と雇用を創出してまいりたい」
記者から、「プラス成長はいいが、労働者報酬は4年連続マイナスで、国民は回復の実感がわかない状態が続くが」との厳しい質問が発せられた。
「22年度雇用者報酬がマイナス0.7%と発表した。実はこれは私も説明を受けたが、1人1人の実質的な報酬が下がるわけではないということ。つまりは物価が下がっていることも含めて言えば、1人当たりの実質的な報酬が下がるわけではないということ。
説明がなかなかややこしいが、1つはデフレの影響、1つは年代がだんだん交代していく中で、団塊世代がリタイヤすると次の世代は数が少ないから、だんだん給料が高くなって、その世代がリタイヤすると、次の世代が同じ給料になるとしても若干数が少ないといったことが影響するとか、景気回復時はどうしても相対的に賃金の低い人から雇用が増大する等々のことで、こういう数字になるということでして、実質的には物価変動まで考えればプラスの0.2%ということになると説明を受けている。
また労働分配率は、これはGDPが下がったので分配率としては、少し上がってきているというのがごく最近の状況。いずれにしても全体としてはデフレがこういう形で影響しているという理解でいいのかなと」
財務大臣、経済財政担当大臣の弁としては、何か頼りない、心もとない感じがする。経済官僚の説明を聞いて一生懸命理解し、説明しようとする姿勢は見えるが、まだ消化不良で、聞く方に安心感を与えるというより、不安感を抱かせかねない。その点では、前任者の藤井裕久氏は、それなりに言語も意味も明瞭、明快だった。
また、高橋是清の経済思想を随時持ち出すなど、拠って立つところを明らかにしていた。菅さんも「第三の道」などと散文的な言説ではなく、財政家として経済思想・哲学に基づいた、経済運営を行うことを期待したい。
また、記者から、「日本は今年中にGDPで中国に抜かれ、世界第2位の座を奪われるがその感想は」と聞かれ、こう答えた。
「中国やアジアが成長していくということはある意味では喜ばしいことですし、アジアの成長に日本が連動する形で良い影響を受けるような努力が必要だなと。もちろん、世界第2の経済大国という座を中国に明け渡すというのは、高度成長の中で育って今日まで来た私の世代にとっては、率直なところ何か残念な気持ちがするというのが本音です」
この答弁はある意味で「模範回答」ではあるが、凡庸で、物足りなさを感じる。国土と人口が桁違いな国と、単に経済の量的規模を競うのではなく、わが国独自の経済とその向上を、どう図るかという視点と戦略を述べて欲しかった。そこに、「政権交代」下の「政治主導」による、新しい経済財政運営があると思うのだが。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:30
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