

8月31日は言うまでもなく、8月30日衆議院選挙投票日、翌日、民主党が政権を取った日である。昨年末の水準を上回って引けたことは、民主党政権に対する期待が高いことを意味する。一方、8月31日の高値を抜けなかったことは、同時に、民主党政権に対し素直に喜べない一面も内包していることである。
政権への期待は、自民党に欠けていた透明感だろう。企業なら会長室で決まっていたことが、「事業仕分け」に代表されるようにステイクホルダー全員に情報が公開された。結構なことだ。
しかし、『船頭多くして・・・』となっている心配がある。物事の進行が、かえって難しくなっているきらいがある。本来、判断を決めるべき人が躊躇するために判断ができず、「国民を代表して、私が物申す」式の人の登場を許す結果となっている。この点が一番心配な点である。旧政権と変わらない印象になってしまう。
もちろん、国民は自民党時代に直ちに戻りたいと思っているわけではない。しかし、内閣支持率が徐々に落ちていることは心配だ。民主党の得票率42%程度に対し、議席獲得数が70%程度にも達する。20ポイント程度が民主党人気のバブルだったとの指摘もある。この人気の剥がれてきたときは怖い。
■内閣支持率が40%程度まで下げたらどうなるか?
今後、内閣支持率が40%程度まで下がってきたらどうなるか。仮に、今の300を越える議席は出来すぎで、ある程度、落ちることを覚悟するとすれば、「7月に衆参ダブル選挙の可能性もある」との見方もある。
政府は30日、「輝きのある日本へ」を掲げた成長戦略を発表した。『環境・健康・観光』の3分野で100兆円の需要を創造し400万人以上の雇用を創出するという。しかし、立会い時間中の発表であったにもかかわらず、日経平均は反応しなかった。残念ながら、「掲げた目標がころころと変わりすぎる。『私を信じてください』と言われても、はいそうですかというわけにはいかない」(中堅証券)。
しかも、環境・健康・観光は悪くはないが力強さにかけている。日本には風光明媚な自然は多い。しかし、先立つものがなくては自然を愛でることは難しい。自然が綺麗だけでは成り立っていかないのが地方である。
東南アジアを巻き込んだアジア経済圏構想もある。しかし、これも銀座のショーウインドウを東南アジアに持ち込むだけの発想のように思えて仕方ない。今や凛冽しただけで売れる時代ではない。特に、世界で「メイドインジャパン」の神通力は通用しなくなっている。並べたって売れない。やはり、技術、産業の強化を忘れては、単に販売経費が嵩むだけで終ってしまうだろう。
■きれいを維持するには多大な努力とエネルギーが必要
小泉政権時代の競争主義政策で格差が生じたことはある。そこに光を当てることは大切だ。しかし、政権を取るための戦術として、いつまでも使えない。「甘え」と「依存心」が強くなる。結果、「ヤル気」「国際競争力」が失われ、『ドバイショック』は他人事でなくなり、『ジャパンショック』も起こりうる。個人の金融資産で、かなりの国債を買いささえてきた。それも限界に近づきつつあるからだ。
稼ぐことを忘れ、生活支援ばかりを重視した国は危険である。お金は天空から降ってくるものではない。親がいつまでも出してくれるものではない。
今回の『環境・健康・観光のきれい3K』政策は、言葉はきれいだ。美しく、きれいなことを決して否定するものではない。しかし、『きれい3K』を維持しようとすれば、それを凌ぐだけの、さらに大きい努力とエネルギーが必要である。
幸い、上場企業は、「リストラ」で体質が強くなっている。その反動が、中小企業の経営悪化、失業者の増加につながっていることも事実である。しかし、体質を強化し次の飛躍に備えようとしている優良企業にチャンスを与えないと日本は埋没する心配を孕んでいる。2010年のマーケットは、このあたりの政策を読む動きとなるだろう。『きれい3K』には危険性も含んでいる。