
かつて「振るい落とし」と呼ばれる投資テクニックが、市場を賑わした。数々の仕手株相場で、株価より株券が目的の「本尊」は、「チョウチン」筋が殺到して株価が急騰すると敢えて高値に売り物をぶつけて株価を冷やす。本尊が売りに回ったと驚いたチョウチン筋は、慌てて売り抜けようと売り急ぎ、株価急落に拍車がかかる。本尊は、待ってましたとばかり下値で安く大量に株券を買い占める。株価操縦まがい投資テクニックだが、チョウチン筋は、本尊の手の平のうえで、踊らされ哀れにも振るい落とされてしまうのである。
年末年始の外国人投資家が、この昔懐かしい「振るい落とし」を駆使したのかどうか、はなはだ興味のあるところである。外国人投資家は、昨年11月第4週から2兆8000億円も買い越して日経平均株価を1900円も押し上げたが、10週間ぶりにたった456億円を売り越した途端に、日経平均株価は、900円超も急落してしまった。外国人投資家と真逆の売買動向を繰り返して、11月第4週から1兆8000億円を売り越した個人投資家が、今年1月第3週から買い越しに転じたのを見透かしたかのように、外国人投資家が売り転換してきたからである。
外国人投資家の投資行動については、さまざまなマーケット・コメントが出ている。積極姿勢は、米国株価上昇に伴うリスク許容度の高まりからはじまって、日本株の景気敏感株としての買い、3月期決算会社の好決算先取り、8月高値銘柄の高値期日迎えなどと解説された。一方、売り転換には、米国景気の下ぶれ・二番底懸念、新金融規制法や中国の金融引き締めによるリスクマネーの縮小不安、ギリシャ、ポルトガルなどのソブリンリスク、ユーロ先安観などが要因として観測されている。
確かに足元の市場環境は株価にアゲインストにみえる。しかし「100年に1度の津波」とされたリーマンショックも、わずか1年半弱でカバーするなど、市場の悪材料織り込みのスピードは速く、復元力も強い。「失われた10年」が、「失われた20年」にまで迷走、愚図ついている日本とは段違いである。
外国人投資家の投資行動が、「振るい落とし」なら、ウラのウラをかいて調整中のハイテク株の逆張りが正解となる。しかし安全を期すなら、なお外国人投資家の投資行動にウオッチが必要になる。売りが止まらないなら、残念ながら買い手喪失の相場は調整入りとなる。
となれば「節分天井、彼岸底」の典型チャートとなる。調整後は相場の性格も活躍銘柄も一変するのがアノマリー(経験則)である。調整相場下では次の修復相場のリード株をリサーチするのが正解となる。「彼岸」前後に決算発表が続く1月期決算会社が浮上するエンジンとなる。SUMCO(3436)、ドクターシーラボ(4924)、ピジョン(7956)、東栄住宅(8875)あたりからポートフォリオを再構築するのも一考余地がありそうだ。
浅妻昭治(あさづま・しょうじ)
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。