
兜町は自民党、民主党のどちら寄りだろうか?30日の衆議院選挙で、自民党が議席を3分の1に減らし、民主党が逆に3倍増の大圧勝となったにもかかわらず、翌31日の株価の反応は高寄りしたあと小幅安で引け、方向感が不透明となっているからだ。政権与党が大敗してこの程度の反応にとどまるのはかつてないことである。
「40年証券不況」時は、時の田中角栄蔵相によって日銀特融が発動されて山一証券の倒産が回避され、自民党寄りであったこことは明らかであった。しかし、バブル経済崩壊後の平成不況下で、同じ山一証券が、自主廃業に追い込まれ、日本版ビッグバンの推進により中小証券が次々にカンバンを下ろす業界再編が激化してみると、さしものの自民党贔屓もかなり流動化したはずである。だから今回の自民党の惨敗でも、条件反射的に売り急ぎ、暴落とならず、民主党のお手並み拝見となったのかもしれない。
その平成不況下で兜町とは立場を異にしたのは、銀行だろう。金融システムの安定化に向けてメガバンクにまで公的資金が注入され、ゼロ金利、量的緩和政策が長期化、預貸サヤの拡大で不良債権の処理を進めて、水面下から水面上に浮上した。この間、貸し渋り、貸し剥がしが社会問題化し、預金者も超低金利のなか、「貯蓄から投資へ」の掛け声に追われて、リスク商品への投資を積極化、結局、世界的な金融危機の荒波に巻き込まれてしまった。
景気回復への政策模索が続くなか、例えばこの預金金利を1%引き上げるだけで、個人金融資産の利息収入が増加して最大の消費拡大策、内需振興策につながる。この際、思い切って金融政策を変更、「出口戦略」を発動することを日程も乗せることも、「政権交代」ならぬ「政策交代」の選択肢になるかもしれない。
こうした観点で、銀行株のなかでも民主党のマニフェスト関連寄りとして注目したいのは、地方銀行である。マニフェストの「地方分権」、「農家の戸別所得補償」などにダブる可能性があるからである。「地方分権」では、地域の中小企業との結び付きが強く、農業関連では、このところ農家の牛、豚などの畜産物や野菜、水産物などを担保とする「動産担保融資」の積極化が目立っているからだ。コシヒカリを担保とした北越銀行(8325)、ブランド豚の「白金豚」を担保とした岩手銀行(8345)、農業ファンドで農業のグローバル化を支援の鹿児島銀行(8390)、肉牛肥育事業を対象とした十八銀行(8396)などが、有力セクターとして浮上する素地もありそうだ。
浅妻昭治(あさづま・しょうじ)
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。