■2010年のスローガンは、『日本をフリーに』 キリンホールディングス<2503>(東1)・連結子会社「キリンビール」の営業本部マーケティング部商品開発研究所の梶原奈美子さんに聞く。
■1、2月頃には中身を改良した製品を売り出す予定――2009年は、梶原さんにとって、『キリンフリー』の開発からキャンペーンまでを手がけられ、たいへんお忙しい年だったと推察します。同時に『キリンフリー』の大ヒットで充実感の1年だったと思いますが。
【梶原さん】 そうですね。たいへん多忙な1年でした。いろいろと、試行錯誤のうえに開発した商品ですからヒットした喜び、嬉しさはあります。
――09年6月に、インタビューをお願いした時、既に、予想を上回るペースでした。その後の大ヒットぶりを個人の皆さんにご紹介をお願いします。
【梶原さん】 発売は09年4月8日でした。その時は、年間で63万ケース(1ケースは大ビン20本分)と予定し発表しました。しかし、発売と同時に反響がたいへん大きく、発売から約1ヶ月半で予定数を達成。その後も拡大を続け、9月中旬に2回目の修正目標250万ケースを突破したことで、10月6日に350万ケースへ上方修正しました。4月の当初予想に比べ5.5倍です。
――消費不振と言われるなかで、すごいですね。直近、足元ではいかがでしょうか。
【梶原さん】 12月7日の時点で350万ケースの目標も達成しています。12月半ばから、さらに中身を改良した製品を売り出しています。本格的に全国の店頭に並ぶのは1、2月頃になります。
――新製品の場合、通常、改良は1年を過ぎたあたりが多いように思いますが。「キリンフリー」は早い時期での改良の印象です。
【梶原さん】 そうですね。だいたいは1年とか1年半を過ぎてからの改良のケースが多いです。『キリンフリー』は、発売後1年以内ですが、皆さんの反響と期待の大きいことから早くなりました。
――どのような点を改良されましたか。外観は同じようですが。
【梶原さん】 外観は変わりません。グリーンのカラーに金色の文字は『キリンフリー』にぴったりだと思っています。今回は中身について、特に、甘味を改善して、飲みごたえのある爽快感とを出しました。皆さんに、高いご評価をいただけるものと思っています。
■キリンフリーはノンアルコールのスタンダード――「キリンフリー」は最初は350ミリ缶だったと思います。500ミリ缶とビンの投入はいつからですか。
【梶原さん】 9月に500ミリ缶と中ビンを加えました。大型缶、ビンとも、たいへん好調です。それだけ、『キリンフリー』が本格的な需要につながっている現われだと思います。
――他社も参入されたようですが。
【梶原さん】 9月に他社も発売されました。それだけ、マーケットが拡大し認知されてきたことだと思います。他社が発売された直後は、当社の売上はやや落ち加減でした。しかし、今では、「やはりキリンフリーが良い」という声をたくさんいただいています。キリンフリーがノンアルコールのスタンダードになっていると自負しています。昨年6月の時に、お話しましたように、特許3件を持っていますので、技術の差は大きいと思います。
――恐縮です。もう一度、製造面の概要をお願いします。
【梶原さん】 一般的なビールテイスト飲料は、約0.1〜0.5%のアルコールが含まれていました。このため、「飲用後に運転してもよいか不安」、「妊娠中・授乳期に飲んでもよいか不安」といった声がありました。一般的なビールテイスト飲料は、酵母を使用し、ビールの香味を出す一方で、微量のアルコール分を生成していました。当社は約2年の歳月をかけ、ビールの麦汁製造技術と香味調合技術を駆使し、アルコールを生成しない新しい製法を開発。ビールテイスト飲料としては、世界で初めて、『アルコール0.00%』を実現しました。「麦芽感のコントロール」、「酸味の低減」、「香味調整」の3つ分野について特許を出願しています。グループ企業の「キリンビバレッジ」の技術、あるいは「キリンチューハイ氷結」などの技術が生かされています。
――認知度のお話がありました。どのていど、認知されていると。
【梶原さん】 まだまだ、これからだと思います。たとえば、あるテレビのクイズ番組で、「0.00」の数字を提示して、次に来る言葉はなんですか、という質問で、分からない人が多かったですね。これから、拡大する余地は大きいと思います。
■飲酒運転根絶に向けた取り組みも推進――『キリンフリー』の社会的貢献も大きかったと思います。
【梶原さん】 昨年の発売直後、お客さまセンターへ、「運転前に飲んでよいのか」、「妊産婦でも飲めるのか」、「医師からカロリー制限を受けているが飲めるのか」など、問い合わせが殺到しました。現在は、ゴルフ、スポーツでの運転のとき、商談のとき、夫婦で楽しめるなど、いろいろなシーンで、お飲みいただいています。飲用シーンの多い順として挙げれば、(1)車の運転のとき、(2)アルコールを控えたいとき(休肝日)、(3)仕事や家事など、やるべきことが後に控えているとき、(4)周囲がお酒を飲むのに付き合うとき、(5)喉が渇いたとき、となっています。
――特に、車の運転者には楽しみが増えたと思います。発売直後のキャンペーンでは、「海ほたるパーキング」での反応が凄かったようです。今後、高速道路などへの展開はいかがですか。
【梶原さん】 そうですね、東京湾アクアライン「海ほたるパーキングエリア」でのイベントでは大変な反響でした。週末のビールテイスト飲料の販売数としては異例で、通常の約5倍にも達しました。いかに、ドライバーの皆さんが、本格的なビールテイスト飲料を求めていらしたかがうかがえるものでした。既に、「海ほたるサービスエリア」内の一部レストランでの取り扱いが決定しています。今後、全国の高速道路のサービスエリアに広がっていくと思います。このほか、全国の飲食チェーン、ゴルフ場、テーマパーク・遊園地、行楽地、結婚式場などにも飲用シーンは拡大するものと思います。
――「昔、若い頃は、よく飲んだものだ」ということで、老人ホームなども、見込めるとおもいますが(笑)。
【梶原さん】 そうですね。
――締めくくりに、これからのスローガンはいかがでしょうか。
【梶原さん】 2010年のスローガンは、『日本をフリーに』です。運転前、妊娠中などこれまで飲めなかったシーンをはじめ、スポーツやアウトドア、行楽など日常で楽しめる「キリンフリー」の様々な飲用シーンを積極的に提案していきます。これまでの『縛り』を解くという思いを込めて、日本をフリー、にです。また、「ハンドルキーパー運動」など、飲酒運転根絶に向けた取り組みにもいっそう推進して参ります。
――ありがとうございました。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:57
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