
無理もない。世の中、不況色一色である。企業倒産だ、雇用調整だ、ボーナス減額だとバッド・ニュースが続き、さらに物騒な事件まで相次ぐようでは、とても消費者のサイフの紐は緩まない。もうとっくにセル・サイドが、「シングルベル」をガンガン鳴らしたくらいでは客を呼び込めないと諦めているに違いない。
株式市場でも、師走相場入りしたのに今年は、「掉尾の一振銘柄」だとか「お年玉銘柄」だとかの下馬評を聞かない。この時期は、年内あともう一回転あるのか二回転できるのか「モチツキ相場」に期待が高まる相場ステージに当たる。競馬、競輪の最終レースよろしく、今年の相場の「ヤラレ」を取り戻すべくオッズを頼りに十万馬券(車券)、百万馬券(車券)狙いに走るのが恒例であった。
無理もない。日経平均株価は、バブル崩壊後の安値水準でなお下ぶれリスクが払拭できず、10年ぶり、20年ぶりの安値銘柄がゴロゴロしている。震源地の米国の株価も、上に行くのか、下に行くのか日替わりメニューで方向感が定まらず信頼性に欠ける。「掉尾の一振」の積もりが「掉尾の三振」と打っちゃられ、「お年玉」が「落とし玉」に一変する危うさが見え見えだ。
頼みのサンタクロースも、麻生太郎サンタは、第2次補正予算を先送りして、またホテルのバー深くもぐり込んでいるようだし、オバマ・サンタは、正式就任は来年1月である。クリスマス・プレゼントは、どこからも届きそうにない。安全第一、「投資から貯蓄へ」と早めの店仕舞いとならざるを得ない。
そんな大逆風下で、唯一確実なクリスマス・プレゼントになりそうなのが急速な気温の冷え込みである。気象庁の3か月予報、1か月予報(関東甲信地方)でも気温は、11月中旬以降から寒気が南下し、12月は平年より寒さが厳しくなると予想している。すでにこの厳冬関連株として、ヒーテック(発熱保温下着)の販売が好調なファーストリテイリング(9983)が先発人気化したが、第2、第3のファーストリテイが出て来ないとも限らない。
候補になるのは、もちろん大型主力株より足の軽い小型株となる。厳冬関連定番銘柄のコートの三陽商会(8011)、石油ストーブのコロナ(5909)、ダイニチ工業(5951)、プロパンガスのカメイ(8037)、岩谷産業(8088)、シナネン(8132)、ミツウロコ(8131)、天然ガスの関東天然瓦斯(1661)、大多喜ガス(9541・東2)などである。足元の業績が、下方修正されている銘柄が多いのが玉にキズだが、これも厳冬特需次第では方向が変わる展開もなくはない。毎日の天候と睨めっこで、ヒット・アンド・アウェーも一考余地がありそうだ。
浅妻昭治(あさづま・しょうじ)
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。