あの旧ライブドアの堀江貴文元社長の「ホリエモンの呪い」なのか、「IPO(新規株式公開)神話」が不発である。10月27日以来、IPO銘柄は、7銘柄連続で初値が公開価格を下回るワースト記録を更新中だ。かつては全般相場が調整期入りすると、必ず短期投資資金がIPO市場に大挙流入し、アッという間に2倍、3倍に大化けする銘柄が出て、その余勢で上場直後の「直近IPO」銘柄までが大きく買い直されたのとは様変わりである。上値にシコリはない、内需関連業態銘柄が多いとセールストークされて構築された「IPO神話」が、バブルの夢と消えて久しい。
足元だけが不調ではないからだ。今年のIPO自体が惨憺たるパフーマンスとなっているのである。年間のIPO銘柄は、年内にあと8銘柄の新規上場(11月13日承認現在)を残しているが、これを含めても48銘柄と昨年の121銘柄に比べて6割減となる。しかも、既上場の40銘柄の初値形成状況も、6割の29銘柄が公開価格を割り、全体では「10勝29敗1分け」と大幅負け越しだ。もちろんIPO投資は、「小さく生んで大きく育てる」のが本来の投資セオリーだが、初値後のセカンダリー・マーッケットも、初値形成状況同様に芳しくない。
しかし「陰が極まれば陽となる」のは、古今東西の冷厳たる事実でもある。「夜明け前が一番暗い」のである。ライブドア事件から足掛け3年、「ホリエモンの呪い」がそろそろ解けてもいい頃合である。もう一度、IPO投資の基本に立ち戻ってみるのも、あるいは一法となるかもしれない。IPO銘柄より主力株の方が値動きがいいと乗り替る投資家が増えているが、ストップ高とストップ安を日替わりで繰り返す主力株の方が、よっぽどハイリスクでバブル臭い。
そして、この相場逆流をリードしそうな銘柄が名乗りを上げてきた。今年2月に新規上場されたセブン銀行(8410・JQ)である。国際分散投資をする世界の機関投資家が、ベンチマーク(運用指標)としているモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル・バーラ(MSCIバーラ)の指数構成銘柄に新規に組み入れられることが、この中間期決算開示時を発表した今3月期業績の上方修正に続く追撃材料となり、株価を刺激する公算が大きいからだ。
11月25日大引け後に新規組み入れ開始の予定であり、ここから一段高するようなら、年内残り8銘柄のIPO株や既上場の直近IPO40銘柄に、年末相場でやっと出番が回ってくる展開も想定されることになる。
浅妻昭治(あさづま・しょうじ)
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。
株式評論家/日本インタビュ新聞社 編集部 部長
1942年生まれ、神奈川県川崎市出身。証券専門紙で新聞と雑誌のキャップを務め、マーケット及び企業の話題掘り下げ取材には定評がある。長く、旧通産省の専門紙記者クラブに所属し、クラブの幹事として腕をふるった。現在、日本インタビュ新聞社の編集長として活躍。