■カレーライス物価5年で3割上昇、収益悪化に歯止めかからず
帝国データバンクの調査によると、2024年度(2024年4月〜2025年3月)における「カレー店」の倒産件数は13件に達し、2年連続で過去最多を更新したことが明らかになった。負債1000万円以上の法的整理を対象としたこの統計は、欧風スパイスカレーのブームやデリバリー特需といった追い風があった一方で、経営環境の厳しさを浮き彫りにしている。
特に注目されるのは、コメや肉、野菜といった主要原材料価格の高騰が経営を圧迫している点だ。カレーライス物価は1食あたり365円と過去10年で最高値を更新しており、これは5年間で約3割の上昇に相当する。コメ価格は5年前から1.4倍、肉・野菜は1.3倍に上昇しており、食材費以外にも光熱費や人件費といった運営コストの増加も重くのしかかっている。
■デリバリー特需一服と他業態との競争激化、カレー店淘汰の時代へ
カレー店はテイクアウトやデリバリーとの相性の良さ、単身者からファミリー層まで幅広い人気、短い提供時間、安価な食材調達といった経営上のメリットから、コロナ禍においても比較的堅調な業績を維持してきた業態である。個人での起業から大手外食チェーンの参入、さらにはレトルト通販やキッチンカーなど、多種多様な形態で市場に進出してきた。
しかし、2022年〜23年以降の欧風スパイスカレーブームが一服する一方で、コロナ禍で拡大したデリバリー・テイクアウト特需が落ち着きを見せ、ランチ需要を巡る他業態との競争が再び激化したことで、経営が悪化する店舗が増加した。安定的に安値で入手できていたコメ価格の急上昇は、中小カレー店にとって特に大きな打撃となっている。
足元では、日本のカレーを目当てに来店するインバウンド客の増加や、チェーン店によるフードコート・ロードサイドへの新規出店で客数・客単価の向上を目指す動きもみられる。しかし、カレーに不可欠なスパイス価格は中長期的にも高止まりが予想され、コメや野菜の価格も先行き不透明な状況が続いている。
帝国データバンクは、個人営業の小規模店の廃業や閉鎖を含めると、実際にはさらに多くのカレー店が市場から撤退しているとみており、2025年度に入ってからもすでに2件の倒産が発生している。原材料高騰と競争激化に直面するカレー店の今後の動向には、引き続き厳しい視線が注がれるだろう。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:25
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