【概況・外国為替市場:11月29日〜12月3日の週】■米国の景気動向がポイント
11月29日〜12月3日の週の外国為替市場では、ドル・円相場は1ドル=84円を挟み、概ね83円台半ば〜84円台半ばのレンジで推移した。これまでのドル安・円高トレンドは一服感が鮮明になった。ただし、週末3日のニューヨーク市場では、1ドル=82円50銭台まで円が上昇しており、トレンド転換を確認したとは言えない。また市場では、欧州の財政不安問題の広がりに対する懸念が根強く、ユーロが売られる展開も続いた。
週初の29日の東京市場では、ドル・円相場は1ドル=84円台前半で推移し、9月下旬以来約2カ月ぶりのドル高・円安水準となった。前週末26日の東京市場で1ドル=83円90銭台、ニューヨーク市場で1ドル=84円10銭台まで円が下落した流れを引き継いだ形である。その後もドル=円相場は、日米の金利差や、欧州の財政不安問題の広がりなどを睨みながら、概ね1ドル=83円台半ば〜84円台半ばのレンジで推移した。
一方ではユーロが売られる展開が続いた。EU(欧州連合)は28日、IMF(国際通貨基金)と共同でのアイルランド向け総額850億ユーロの金融支援を正式決定し、2013年以降のユーロ圏の恒久的な金融支援の枠組み「欧州版IMF」を決定した。しかし、その後もポルトガルとスペインへ信用不安が波及するとの懸念が強まり、さらにイタリアの国債利回りも上昇するなど警戒感が高まった。
こうした南欧諸国への財政不安問題の広がりを懸念して、30日の東京市場では1ユーロ=109円台〜110円台で推移し、ニューヨーク市場では一時1ユーロ=108円台まで円が上昇し、約2カ月半ぶりのユーロ安・円高水準となった。また1日には東京市場でも、一時1ユーロ=108円台に円が上昇した。
その後は、ECB(欧州中央銀行)が2日の理事会で市場安定化策の継続を決め、トリシェ総裁が、出口戦略を当面棚上げして国債買い入れも継続する考えを表明したため、財政不安問題に対する警戒感が一時的に和らぎ、ユーロが買い戻された。一旦は落ち着きを取り戻した形だが、円は1ユーロ=110円台で推移し、高止まりの状況が続いている。欧州の財政不安問題が南欧諸国へ広がるのではないかという懸念は根強い。
ドル・円相場については、米国の長期金利と日米の金利差の動向、欧州の財政不安問題の広がりに対する懸念、朝鮮半島情勢の緊迫の状況などを睨みながら、1ドル=84円を挟むレンジでの展開となり、一方的にドル買い・円売り方向に傾く動きは見られない。米国の長期金利は一時約4カ月ぶりに3%台に上昇したが、日本の長期金利も一時1.2%台に上昇するなど、ツレ高の傾向を強めている。また、ヘッジファンドがポジション調整などでドルを買い戻す動きは一巡したとの見方も多い。
なお週末3日のニューヨーク市場では、ドル・円相場で1ドル=82円50銭台まで円が急上昇した。3日発表された11月米雇用統計が、事前の市場予想を大幅に下回る弱い数字となったため、景気の先行き不安が広がった。またFRB(連邦準備理事会)が金融緩和策を継続するとの思惑が強まり、ドルが売られる展開だった。
ドル安・円高トレンドの一服感は強いが、米国の長期金利低下を背景とする基本的な「ドル安」の構図が本格的に転換したとまでは言えない。やはり米国の景気動向がポイントだろう。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 07:30
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