
その後は海外要因、特に為替動向に注意が必要となりそうだ。ただし、ユーロ圏債務危機問題に対する警戒感の後退や米景気回復への期待感などで、地合い改善が意識されているうえに、企業業績に関しても悪材料出尽くし感が広がり始めている。またテクニカル面での短期的な過熱感も解消されてきた。このため為替動向が落ち着いた展開になれば、一旦は日経平均株価9000円台を回復する可能性もあるだろう。
外国為替市場では円の高止まり状況が続いているが、前週末3日の米1月雇用統計で市場予想以上に雇用情勢が改善したことを受けて、一旦は量的緩和策第3弾(QE3)への思惑が後退し、対ドルでの円買い圧力は緩和しそうだ。対ユーロについては、ギリシャ債務交換交渉での波乱や、9日のECB(欧州中央銀行)理事会での政策金利引き下げの思惑に注意が必要だが、ユーロ圏債務危機問題に対する警戒感が和らいでいるため、リスク回避のユーロ売り・円買い圧力も緩和する可能性があるだろう。
また企業業績に関しては、ハイテク関連を中心として主力銘柄の12年3月期業績見通しの下振れが相次いだが、ソニーの決算発表を通過したことで悪材料出尽くし感も広がり始めている。来週後半になると、主要企業の11年4〜12月期決算発表がほぼ一巡するため、トヨタ自動車の決算発表で波乱がなければ、来期(13年3月期)を見据えて、ファンダメンタルズ面を意識した展開にシフトする可能性を考慮しておきたい。
前週(1月30日〜2月3日)の日本株式市場では、週間ベースで日経平均株価が前々週末比9円29銭(0.11%)下落して4週ぶりの下落、TOPIXが同0.44ポイント(0.06%)下落して6週ぶりの下落となった。ギリシャ債務交換交渉の合意が遅れていたこと、ポルトガルの国債利回りが上昇していたこと、外国為替市場で円の高止まりが続いていたこと、主要企業の12年3月期業績見通しの下振れが相次いだこと、そして急ピッチの戻りに対する短期的な過熱感が警戒されたことなど、軟調な展開となっても不思議ではない状況だった。しかし、米国や欧州など海外の株式市場が堅調だったことも支援材料となり、株価指数の下値は限定的で、日経平均株価、TOPIXともに小幅な下落にとどまった。主力大型株への買い戻しの動きが一服感を強める一方で、個別物色で大幅変動する銘柄もあったが、全体としては堅調な展開となった。地合い改善が意識され、日経平均株価8800円台固めとなった1週間だろう。
また前週末3日の米国株式市場は、米1月雇用統計や米1月ISM非製造業景況指数の改善を好感し、主要株価指数は大幅に上昇した。ダウ工業株30種平均株価は前日比156ドル82セント(1.23%)高の1万2862ドル23セントと大幅反発し、リーマン・ショック前の08年5月以来の高値水準に回復した。S&P500株価指数は前日比1.46%高と大幅に3営業日続伸した。ナスダック総合株価指数は前日比1.61%高の2905.66と大幅に4営業日続伸し、00年12月以来の水準に回復した。
ユーロ圏債務危機問題に関する前週の動きを整理すると、ポルトガルの国債利回りが上昇したことでやや警戒感を強まる場面もあったが、主要各国の国債入札が概ね順調な結果となり、利回りも概ね落ち着いた状況となった。ギリシャ債務交換交渉に関しては、合意が近いとの報道が相次ぐ一方で、合意が遅れていることに対する警戒感も指摘されたが、合意に対する期待感が概ね優勢だった。30日のEU首脳会議では、25カ国がユーロ圏諸国の財政規律強化を狙う新財政協定を締結することで合意した。
米国の主要経済指標には強弱感が交錯する状況が続いている。1月27日には、米11年10〜12月期実質GDP速報値が前期比年率プラス2.8%となり、11年7〜9月期の同プラス1.8%に比べて改善したが市場予想を下回った。米1月ミシガン大学消費者信頼感指数確報値は75.0となり、速報値の74.0から上方修正されて、12月確報値の69.9に比べて大幅上昇した。30日には、米12月個人所得が前月比0.5%増加となり、11月の同0.1%増加に比べて改善して市場予想も上回った。しかし米12月個人消費支出は前月比横ばいとなり、11月の同0.1%増加から減速して市場予想も下回った。31日には、米11月S&Pケース・シラー住宅価格指数が前年同月比3.7%下落となり、10月の同3.4%下落に比べて下落幅を広げた。米1月シカゴ購買部協会景気指数は60.2となり、12月の62.2に比べて悪化して市場予想も下回った。米1月消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)は61.1となり、12月改定値の64.8に比べて悪化して市場予想も大幅に下回った。2月1日には、米1月ADP雇用リポートで民間部門雇用者数が前月比17.0万人増加となり、市場予想を下回った。米1月ISM製造業景況指数は54.1となり、市場予想をやや下回ったが12月改定値の53.1に比べて改善した。米12月建設支出は前月比1.5%増加となり、11月改定値の同0.4%増加に比べて改善して市場予想も上回った。2日には、米新規失業保険申請件数が36.7万件となり、前週改定値の37.9万件に比べて1.2万件減少して市場予想も下回った。3日には、米1月雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比24.3万人増加となり、12月改定値の同20.3万人増加に比べて4.0万人増加して市場予想を大幅に上回った。1月の失業率は8.3%となり、12月の8.5%に比べて0.2ポイント低下して市場予想以上に改善した。米1月ISM非製造業景況指数は56.8となり、12月改定値の53.0に比べて上昇して市場予想も上回った。米1月製造業新規受注は前月比1.1%増加となり、12月改定値の同2.2%増加に比べて減速して市場予想を下回った。
なお、2月1日に発表された中国1月PMI(製造業購買担当者景気指数)は50.5となり、12月の50.3に比べて上昇して市場予想も上回った。
外国為替市場では円の高止まり状況が続いた。ドル・円相場は概ね1ドル=76円台で推移した。1月25日の米FOMC(連邦公開市場委員会)声明以降、米国の低金利政策長期化観測を受けてドル売り・円高圧力が強まり、週半ばには1ドル=76円00銭台に円が上昇する場面もあった。ただし2月3日の米1月雇用統計で市場予想以上に雇用情勢が改善したため、ややドル買い・円売りが優勢になった。ユーロ・円相場ではユーロ買い戻しの動きが一巡し、1ユーロ=99円台〜100円台の小幅レンジで方向感に欠ける展開だった。週末3日の海外市場で終盤は1ドル=76円60銭近辺、1ユーロ=100円80銭近辺だった。
ドル・相場に関しては、米1月雇用統計を受けてドル買い・円売りが優勢になったとはいえ、依然として1ドル=76円台である。量的緩和策第3弾(QE3)の思惑が後退して、一旦は円買い圧力がやや緩和されそうだが、米主要経済指標には引き続き強弱感が交錯しているため、一気にドル高・円安方向に傾く可能性も小さいだろう。ユーロ・円相場に関しても、ギリシャ債務交換交渉が合意に向けて進展すれば、ユーロ買い戻し・円売りが優勢になる可能性もあるだろう。ただし、9日のECB(欧州中央銀行)理事会での政策金利引き下げへの思惑で、一旦はユーロ売りにつながる可能性もあるだろう。
テクニカル面で見ると、日経平均株価(3日時点の8831円93銭)の移動平均線に対する乖離率は、25日移動平均線(同8620円55銭)に対しては2.45%、75日移動平均線(同8597円銭)に対しては2.72%となり、短期的な過熱感がやや解消された。200日移動平均線(同9073円20銭)に対してはマイナス2.65%となりマイナス乖離幅を縮小した。
■注目スケジュール
来週の注目スケジュールとしては、国内では、8日の12月と11年経常収支、1月景気ウォッチャー調査、1月企業倒産、9日の12月機械受注、1月マネーストック統計、1月消費動向調査、2月フォーキャスト調査、10日の1月企業物価指数などがあるだろう。その後の注目イベントとしては、13日の11年10〜12月期GDP1次速報値、13日〜14日の日銀金融政策決定会合などが予定されている。
海外では、6日のインドネシア10〜12月期GDP、仏短期債入札、ブラード米セントルイス地連銀総裁の講演、フィッシャー米ダラス地区連銀総裁の講演、7日の豪中銀理事会、仏12月貿易収支、米12月消費者信用残高、米週間チェーンストア売上高、米週間レッドブック大規模小売店売上高、米3年債入札、8日の英中銀金融政策委員会(9日まで)、独12月貿易収支、独5年債入札、米住宅ローン・借り換え申請指数、米10年債入札、ウィリアムズ米サンフランシスコ地区連銀総裁の講演、9日の韓国中銀金融政策決定会合、中国1月CPI・PPI、インドネシア中銀金融政策決定会合、英12月貿易収支、英中銀金融政策委員会(2日目、金利発表)、ECB理事会(金利発表)と記者会見、米12月卸売在庫、米新規失業保険申請件数、米30年債入札、米伊首脳会談、10日の豪中銀金融政策声明、中国1月貿易統計、仏12月経常収支、米12月貿易収支、米1月財政収支、米2月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値などがあるだろう。なお6日に開催予定だったユーロ圏財務相会合については、ユンケル議長が「6日に開催しないが、週内に開催する可能性がある」としている。
その後の注目イベントとしては、13日のギリシャ債務交換の最終案提示期限、オバマ米大統領の2013会計年度予算教書発表、15日のユーロ圏10〜12月期GDP速報値、19日のギリシャ総選挙、20日のユーロ圏財務相会合、21日のEU財務相理事会、25日〜26日のG20財務相・中央銀行総裁会議などが予定されている。